2022年全米女子アマチュア選手権を「11アンド9」で圧勝し、日本勢としては1985年の服部道子に次ぐ37年ぶりの優勝となる快挙を成し遂げた17歳の馬場咲希。

　長身を生かしたスイング、堂々たるプレーぶりと笑顔を絶やさぬ明るい雰囲気があいまって、日本のゴルフファンのみならず、米国や世界のゴルフファンからも惜しみない拍手と賞賛が送られている。

　そんな中、素敵な秘話も伝わってきた。

　昨年の全米女子アマを制した米国のジャンセン・キャッスル選手は、返還する優勝トロフィーの中に、勝者となった馬場選手への祝福メッセージを手書きで記した小さなメモをひっそり、しのばせた。

　トロフィーの上部は取り外しができる蓋のような形状になっている。キャッスル選手はクラブハウス内の控室のような一角で、その蓋を取り、自筆のメモを内緒で入れたのだ。

　そうとは知らず、優勝トロフィーを受け取った馬場は、蓋を開け、このメモを見たときは、きっと驚いたことだろう。

　前年覇者のキャッスル選手からのメッセージは、こんな内容だった。

「素晴らしい優勝、おめでとう。あなたは勝者にふさわしい。これからは旋風が吹き荒れる大変な1年になるだろうけど、そうしたすべての機会をエンジョイしてね。2021年全米女子アマ・チャンピオン、ジャンセン・キャッスルより」

　小さなメモをうれしそうに持って掲げて見せる馬場選手の笑顔の写真が、「内緒よ」という具合に茶目っ気たっぷりに笑うキャッスル選手の写真と並べられ、SNSを駆け巡り、大きな話題になっている。

　全米女子アマチュア選手権という伝統ある大会の優勝者に輝くことは、アマチュアゴルフ界の歴史に名を刻んだということ。

　その快挙を昨年成し遂げたキャッスル選手が、今年のチャンピオンとなった馬場選手を讃えるメッセージを優勝トロフィーを通じて伝えたというこの実話は、礼儀やマナーを重んじるゴルフの世界ならではの素敵なストーリーとして、人々の心を打ち、おそらくはこれから何年もの間、語り継がれていくことだろう。

　チャンピオンからチャンピオンへの祝福の言葉は、馬場選手にとって何よりのサプライズ・プレゼントとなったのではないだろうか。