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「すべてはマネー」ゴルフ界をかき乱すG・ノーマン、2年間は「お試し期間」、本格始動は2024年から?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:Action Images/アフロ)

 世界中のゴルフ界をかき乱しつつ、新ツアー創設に向けてアグレシッブな動きを見せているグレッグ・ノーマンは、「すべてのゴルファーに戦う場と機会を授けたい」を大義名分として唱えている。

 だが、彼の言葉を聞けば聞くほど、「世の中、すべてはマネーだ」と言っているように感じられてならない。

【TV放映権も金次第】

 ノーマンは今年6月から年間8試合の「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ」を開始しようとしているが、その成否を左右する大きなカギとなりそうなのはTV放映権の契約だ。

 すでにPGAツアー(米ツアー)やDPワールドツアー(欧州ツアー)、USGAやR&Aといった主要なゴルフ団体と緊密な関係を構築している大手TV局は、やすやすとノーマン側と契約を結ぶことはできないはず。それでも、ノーマンと旧知の仲とも言える米フォックス・スポーツとの契約は成立するかもしれないと見られていたが、「数週間前に交渉は白紙に戻った」と米メディアは伝えた。

 そんな中、米スポーツ・ビジネス・ジャーナル誌は「コンテンツ制作のリーディング・テクノロジー・パートナーと言われる米国のNEPグループが、近いうちにノーマン側と放映権契約を結ぶ」と報じ、TV業界とゴルフ業界の双方を驚かせている。

 というのも、NEPグループは現在、PGAツアーの大会やメジャー大会の中継を行なっているCBS、NBC、ESPNといった米国のTV局と、すでに深い関係を築いており、その関係は「現在進行中」だからだ。

 NEPグループがPGAツアーなどとの現在の関係を維持したまま、ノーマン側とも契約を結ぶことは、一般的な商慣習に照らせば「考えられないことだ」と業界関係者は口を揃える。

 だが、「マネー至上主義」のノーマンは、大金をちらつかせることで、考えられないことを現実化しようとしている様子だ。

【トップ・アマ獲得も金次第】

 将来性溢れる世界のトップ・アマチュアを「青田買い」的に獲得することも、ノーマンの大きな狙いの1つだ。

 すでに世界の名だたるトップアマたちに声をかけ、「2年間の出場資格をあげるよ」「こっちへおいで」「夢のような大金が手に入るよ」と呼びかけていることが、米スポーツ・イラストレイテッド誌によって報じられている。

 オファーの内容には驚かされるばかりだ。出場するだけで12万ドル(約1560万円)が保証され、優勝賞金4ミリオン(400万ドル=5億2000万円)やチーム戦の賞金を「競い合うことができる」と謡っている。(注:「受け取れる」とは明記されていない)

 昨年改訂されたアマチュア規定に則り、米欧など世界の主要な既存のプロゴルフツアーでは、アマチュアは「試合出場はできるが、(10万円以上の)賞金を受け取ることはできない」とされており、この点をノーマンがどう理解・認識した上で、「大金を競い合うことができる」と謡っているのか、詳細や彼の真意は現状ではわかっていない。

 さらに、ノーマンは、こうも言っている。「アマチュアがアマチュアのままでプレーするか、プロとしてプレーするかは自由」「大学ゴルフへの参加を続けたいアマチュアに対しては、NCAA規定に違反しないよう十分に考慮する」。

 ノーマンが「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ」への2年間の出場資格をオファーしているのは、今季のアジアツアーでプロたちを抑え込み、優勝した15歳のアマチュア、ラチャノン・チャンタナヌワットをはじめ、全米アマチュア覇者のジェームス・ピオット、そしてアジア・パシフィック・アマチュアを制覇した日本の中島啓太など5~6名前後と見られている。果たして、彼らは、どんな結論を出すのか。

 「このオファーは、彼らアマチュアがこれまで経験したことがない新しい世界を拓くための絶好のチャンスになるはずだ」と自信満々に声を張り上げているノーマンは、将来も才能もあるトップ・アマチュアらを必ずやビッグマネーで引き寄せることができると信じて疑わない様子だ。

【2年間はお試し期間、本格始動は2024年?】

 ノーマンは、プロもアマも含め、「今は誰一人、我がツアーの正式メンバーにはならない」と明かした。その意味は、2022年と2023年は彼のツアーの「お試し期間」だからだそうだ。

 創始年となる今年は年間8試合を開催し、2023年は年間10試合へ増やす予定。そして「2024年から、私たちの本格的なリーグが立ち上がる」。そうなって初めて、正式メンバーという概念とシステムがスタートするのだとノーマンは語っている。

トップアマにオファーしている出場資格を「2年間」と限定しているのも、そのためだと思われる。

「賞金総額25ミリオンが手に入る試合を、私たちは年間8試合、10試合、いや本格始動となれば、それ以上の試合数を開催するのだ。夢のような一獲千金のチャンスを、私たちはゴルファーに存分に授けてあげようとしているんだ」

 「感謝されて当然だろ?」「世の中、すべてはマネーだ」「マネーこそが、ゴルファーのすべてなんだ」――ノーマンの言葉は、そう言っているように感じられてならない。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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