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ゴルフ界の総本山USGAの新CEOが決定。新たなリーダー、マイク・ワン氏に寄せられる2つの大きな期待

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

米ゴルフ界、そして世界のゴルフ界を率いていく新たなリーダーが決まった。米LPGAコミッショナーとして、米女子ゴルフ界を11年間、牽引してきたマイク・ワン氏が、2021年の夏からはUSGA(全米ゴルフ協会)の新CEOに就任する。

十数年前、米女子ゴルフの人気は低迷し、米LPGAの未来は文字通りの「風前の灯火」だった。2010年にワン氏が会長に就任した当時の米LPGAは年間24試合しかなく、賞金総額は41.4ミリオン(約42億円)だった。しかし、それから11年間という歳月を経て、年間試合数は34試合まで拡大。賞金総額は76.45ミリオン(約78億円)へと大幅にアップした。言うまでもなく、ワン会長の手腕によるものだった。

そのワン会長が今年1月に突然、米LPGA会長を辞任する意向を示し、米ゴルフ界を驚かせた。だが、それは前向きな辞意であることがすぐにわかり、米ゴルフ界はむしろ新たな期待を膨らませていた。

「もしもLPGAの未来が不確実だったら、私は決して、このツアーから離れようとは思わなかった」

すでに米LPGAが安泰であると言い切ったワン会長は、「私はいつもドキドキ、ワクワクしていたい」。その意味は、2021年いっぱいで引退することがすでに決まっているUSGAのマイク・デービスCEOの後継者になるということではないか。そんな見方が米ゴルフ関係者の間では強まっていた。

大方の予想通り、2月17日(米国時間)、USGAは次期CEOとしてワン氏を指名し、受諾されたことを発表。米国ゴルフと世界のゴルフの総本山を率いるUSGAの新CEOに決定したワン氏には、すでに大きな期待が寄せられている。

その1つは、これまで米女子ツアーを率いてきたワン氏が、女子ゴルフの存在意義をとても重視していることだ。「男子の全米オープンと全米女子オープンは同じ重みだ」と言い切り、ゴルフ界の未来の担い手を育てていく上ではジュニア界のボーイズ部門もガールズ部門も同等に拡充していく必要性を強調している。

そんなワン氏の姿勢は、ジェンダー・イークオリティという概念や認識が、これからのゴルフ界に一層浸透し、根差していくことが期待される。

そして、もう1つ。ワン氏のキャリアの出発点は1987年、プロクター&ギャンブルから始まり、ブランド・マネージャーとなって製品のブランディングに携わった。その後、1990年代の半ばごろからは、ウイルソン・スポーティング・グッズ・カンパニー、そしてテーラーメイド・ゴルフ・カンパニーにも携わり、2000年代にはホッケー関連のビジネスやホッケーの普及にも尽力した。

「私は元々、マーケティングに携わる人間だ」と自負するワン氏は、「研究開発を箱の中に閉じ込めようとは思わない」。

それは、飛びすぎるドライバーやボールに対する規制の必要性が取り沙汰されている昨今において、一方的に用具規制をしようとは思わないという考え方だと受け取れる。つまり、用具開発に心血を注いでいるメーカーや研究者たちにとって、ワン新CEOは救世主となるのではないかと期待されている。

もちろん、蓋を開けてみるまでは、わからないのだが、ともあれ、コロナ禍の中で揺れる米ゴルフ界、世界のゴルフ界の心強い舵取り役の誕生に、祝福ムードが溢れていることは事実だ。

マイク・ワン新CEOが導き出す新たなゴルフ界はどんな世界になるのか。私たちゴルファーも「ワクワク、ドキドキ」しながら見守ろうではありませんか。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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