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「『忙しくて勝てない』は言い訳」と言い切る新選手会長、ローリー・マキロイが導く未来

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

メジャー4勝を誇る世界ランキング7位のローリー・マキロイが、2月16日(米国時間)、米PGAツアーの「選手会長」に選出され、欧米ゴルフ界で大きな話題になっている。

マキロイは北アイルランド出身の31歳。欧州ツアーを経て、2010年から米ツアーの正式メンバーになり、これまで通算18勝を挙げてきた活躍ぶりは、ゴルフ界の誰もが知るところだ。

そのマキロイが、米ツアーのプレーヤー・アドバイザリー・カウンシル(PAC)のチェアマン、いわば選手会長に選出された。2022年から2024年まで、3年間の任期を務めることになる。

それは同時に、マキロイが米ツアーのポリシー・ボード・メンバー、つまりツアーの姿勢や方針、決まりといった政策を検討し、決定していく役員会のメンバーに加わることを意味している。

長年、米国人のみで構成されてきた米ツアーのポリシー・ボード・メンバーに米国人以外の外国人選手が加わるのは、驚くなかれ、1969年のボード創設以来、マキロイが初となる。

マキロイが選手会長に選ばれ、米ツアーのポリシー・ボード・メンバーに加わることが決まった背景には、いくつかの理由が考えられる。

1つは、数々の勝利を挙げてきたマキロイの実績や常に論理的にモノゴトを考え、自身の意見を明瞭に発信している彼の姿勢、人柄が他選手たちから評価されたからだ。

そして、米ツアーと欧州ツアーが2020年11月末に戦略的提携を結んだこともあり、両ツアーを知るマキロイは、その意味でも適任と考えられる。

さらに言えば、米国人ではなく外国人が選手会長になってくれれば、外国人選手ならではの事情や困難、支障等々を身を持って理解し、解決へ導いてくれそうだという期待も抱ける。選手たちの多国籍化が年々進んでいる米ツアーにおいて、外国人選手を選手たちのリーダーに据えることには大きな意味がある。

逆に言えば、すでに外国人選手が大勢ひしめいている米ツアーにおいて、これまで50年以上もの間、ポリシー・ボード・メンバーに外国人選手が一度も加わったことがなかったことのほうが大きな驚きであり、マキロイがその第1号となったことは、米ツアーがここでまた1つ、ダイバーシティへ向かって前進したことを示していると言っていい。

米メディアによれば、米ツアー選手や関係者の中には「マキロイをボード・メンバーに選んだことは、ゴルフ界の損失につながる」という声がすでに聞かれているという。選手会長も、ツアーのボード・メンバーも、その任務を果たすためには、それなりの時間と労力を求められる。「そんなことをしていたら、メジャー優勝は遠のくばかりだ」と眉をひそめているという。

しかし、そうした声をマキロイ自身が、ピシャリと跳ねのけ、こう言い切った。

「過去にボード・メンバーになった選手があまりメジャーに勝ってないのは、メジャーで勝つこと自体がとても難しいからであって、ボード・メンバーになるとメジャーに勝てないというのは、明らかにエクスキューズだ。選手会やボード・メンバーのミーティングは年間わずか数回に過ぎず、勝利を阻むほどの時間ではない。欧州ツアーや選手のことを熟知している僕が米ツアーでボード・メンバーを務めれば、きっとお役に立てるはずだし、僕はツアーや選手たちの役に立ちたい」

マキロイが言った通り、ポリシー・ボード・メンバーの任期中にメジャー優勝を果たした選手は、ほんの数人しかいないのだが、しかし前例はある。ラリー・マイズ(1987年)、トム・レーマン(1996年)、デービス・ラブ(1997年)、スチュワート・シンク(2009年)。

いずれも、人望の厚い人格者ばかりであるところが興味深い。そこにマキロイが加わり、選手会長とポリシー・ボード・メンバーとメジャー・チャンピオンをやってのける頼もしい新たなるリーダーの姿が2022年以降に見られるのではないだろうか。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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