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6月の早期再開を目指す米ツアー、しかし肝心の選手たちの反応は!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
「隣人」のファウラーとトーマス。禁止令の下、ゴルフには飢えていたのだが、、、(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 米国では、すでに北東部の3州以外を除くほぼ全域でゴルフが徐々に解禁となり、厳しい都市封鎖や外出禁止令でゴルフから完全に遠ざかっていたゴルファーたちが続々と緑の芝の上へ繰り出している。

 その状況は、米ツアー選手も例外ではない。同じフロリダ州ジュピターの住人どうしで親友でもあるジャスティン・トーマスとリッキー・ファウラーは、ホームコースのメダリストGCで仲良しゴルフを楽しみ、その様子をSNS上で発信していた。

 2人とも、ドライバーはパーシモン、ボールはバラタというクラシカルなスタイル。「うーん、いい音だなあ」。もはや耳にすることがなくなっていた昔懐かしい打球音に聞き惚れていたトーマスは、2017年の全英オープンのときと同様のカーディガン&ネクタイ姿というクラシカルな装い。いずれも、ゴルフ禁止令がようやく解除されたことに対する彼らなりの畏怖の念の表明だったのだろう。

 ゴルフを禁じられたゴルファーたちは、再びゴルフができる日を今か今かと待ち続けてきた。だからこそ解禁になった途端、水を得た魚のようにゴルフクラブを振っている。

 そして、世界のトッププレーヤーたちが集う米ツアーのジェイ・モナハン会長は6月11日から無観客での再開予定をすでに発表しており、ゴルフファンはその日を楽しみに待っているのだろうと思う。

 しかし、どうやら肝心の選手たちは、モナハン会長の積極姿勢とはやや異なり、むしろ慎重な姿勢を示している様子である。

【おおむね、慎重派?】

 米ゴルフダイジェスト誌が米ツアー選手35名を対象に行なったアンケート調査によれば、半数以上の51.4%が「毎試合、(現場で)安全が確認、確保できない限り、ツアーには戻りたくない」と考えていることがわかった。

 ゴルフをしたい気持ちは山々だが、感染リスクに対する不安や恐怖を抱いたままではツアーでは戦えない――そんなジレンマを感じながらも、多くの選手が試合会場における検査の絶対的な必要性を指摘し、慎重な姿勢を見せている。

 父親が小児科医であるチャールズ・ハウエルは「米ツアーと医療の専門家たちによる然るべき検査プランが整備されて初めて僕はツアーに戻る。プロゴルフツアーはトラベル、ホテル、レストラン、ジムなど、いろいろなものが絡んでくる特性がある。最大限、それらの安全性が守られない限り、ツアーに戻ることはできない」と言い切っている。

 毎週、あるいは毎日でも試合会場で検査を行なう必要性については、そもそもモナハン会長自身が強調している最重要事項だ。

 米ツアー内外では「検査キットを100万セット用意する」「PCR検査に代わる簡易検査を検討している」等々、諸説が浮上しているが、オンサイトで行なう検査の方法や頻度、対象などは、いまだに検討段階で、確定はできていない。

 それなのに、6月11日からの再開日程がすでに発表されていることは、モナハン会長や米ツアーがやや先走りしているように感じられなくもない。今回のアンケート調査結果は、そんなツアー側の駆け足に対して、選手たちが「待った」をかけたという感もある。

【極論もあるけれど、、、】

 とはいえ、それでも37%は毎試合の検査は必ずしも必要ないと答え、「米ツアーが検討し、実施する安全性確保のための方法を信頼し、ツアーに戻る」と答えていた。

 米国の医療専門家たちのレポートに基づき、USGA(全米ゴルフ協会)がまとめた「安全にゴルフを行なうための指針」に従って、すでに一般アマチュア・ゴルファーは「ピンフラッグを抜かない、触らない」「バンカーレーキは撤去。砂は足でならす」などを実践しているが、超高額賞金がかかる米ツアーの大会で同じことを行なうことは、いろんな意味で難しい。

 先日、テキサス州内で開催されたチャリティ・ゴルフ大会では、スコアを記録するために各組に付いて回るスコア係がレーキを持って歩いたそうだが、米ツアーの大会では、レーキをどうするか、ピンフラッグやカップをどうするか。検査の問題以外にも、解決すべき課題は山積している。

 選手会の理事を務めるチャーリー・ホフマンの考え方が興味深い。

「僕自身は心身ともに準備万端。今すぐにでもツアーに戻ってプレーできると感じている。でも、もしも他の誰かが『大丈夫』『安全』と感じていないとしたら、その状態でツアーを再開するのはフェアではない。選手の誰もが『大丈夫だ』『戦える』と感じる状態にならない限り、再開すべきではない」

 ホフマンは、自分自身は「OK」と感じていても、全体論としては慎重な姿勢を見せている。

 ちなみに「検査も何も特別なことは必要ない。すぐにでもツアーを再開してほしい」という最も積極的な姿勢を見せた選手は35名中3名。逆に「ワクチンや治療法が見い出されるまで、ツアーに戻りたくない」という最も慎重な姿勢を見せたのは、1名だったそうだ。

 ホフマン理論なら、この1名がいる限り、米ツアー再開の幕は上がらない。だが、モナハン会長は、検査キット確保と6月の早期再開を目指して精力的に動いている。

 果たして、どんな再開の仕方になるのだろうか。いろんな意味で、米ゴルフ界に大きな注目が集まっている。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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