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米ツアー再開されたなら「出場者数アップ」「1週間2試合」「仮払い金」という選手救済策がすばらしい

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
米ツアーは3月のプレーヤーズ選手権初日までで止まってしまっているのだが、、、(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 「さすが、米ツアーだ」と感心させられるニュースが耳に入ってきた。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、米ツアーは5月7日~10日のAT&Tバイロン・ネルソンまでの中止を決め、PGAオブ・アメリカはその翌週に予定されていた全米プロの延期を決めている。

 その後、試合再開の見通しは立っておらず、それどころか、今季の全大会が行なわれないことをすでに覚悟している選手や関係者も少なくない。

 そんな中、米ツアーは、今できる最大限の前向きな努力と姿勢を打ち出した。

 次に予定されている招待競技のチャールズ・シュワッブ・チャレンジとメモリアル・トーナメントが「もしも開催できたなら」と前置きした上で、従来の出場者数「120人」を「144人」へ拡大し、「一人でも多くの選手にプレーする機会を与えたい」という。

 さらに、「もしも今季終盤にツアーが再開されたなら」と前置きした上で、「1週間に2試合を開催」し、やはり一人でも多くの選手のプレー機会を創出するつもりだそうだ。

 一層、興味深いと感じさせられたのは、この4月から施行される予定だったペース・オブ・プレーの新ルールを来年まで保留すると決めたことだ。緊急事態ゆえに、与えられるものや授けられるものを最大化する一方で、規制や取り締まりは最小限に抑えるという姿勢には、博愛精神やギブ(give)の精神が溢れており、それは理屈抜きで素晴らしいと私は思う。

 米PGAツアー、とりわけ下部ツアーであるコーン・フェリー・ツアーの選手たちの中には、当面、試合開催はないことをすでに覚悟し、生計を立てるために一時的に別の仕事にすでに就いている選手もいる。

 オンラインでゴルフレッスンを行なっている選手は多いが、ゴルフとは無関係な分野の仕事に就いている選手もいるという。中には、感染拡大によって逼迫している医療関係ビジネスの手伝いを始めた選手もいる。彼らは「試合が無くなったことでダメージを受けているのは選手だけではない。ツアーも、大会も、みんながダメージを受けている」と考え、「自分たちもできるだけのことをしたい」と、たくましさを見せている。

 とはいえ、経済的に苦しい状況に陥っている選手は実際に出ており、今後、ツアーが再開される際、先立つものが無ければ試合に出るに出られない選手もいると思われる。

 そんな選手たちの窮状を救うため、米ツアーは最大10万ドル(約1070万円)の「仮払い金」を必要に応じて提供できるよう、関係各方面との調整を行なっているという。仮払い金はシーズン終了後のフェデックスカップのボーナスから差し引く形を想定しているそうだ。

 米ツアーは「選手たちの今現在、そして今後を救うためのクリエイティブな解決方法だと思う」と胸を張っている。

 感染拡大がいつ収まるか、ツアーがいつ再開できるか、先は見えない昨今だが、だからこそ、ツアーは選手を気遣い、選手もツアーを気遣って、今できることをやっていく。その姿勢は、さすがである。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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