「ゴルフコース伸長は有害」と結論したゴルフ界注目のレポートとゴルフの未来
ゴルフ界が注目していた「ディスタンス・インサイツ・レポート」が2月4日に発表され、大きな話題になっている。
これは、世界のゴルフの取りまとめ役であるUSGA(全米ゴルフ協会)とR&A(ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース)が発表した、いわば「距離に関する洞察の報告」。
その内容は、飛距離偏重でパワーゲーム化している昨今のゴルフの在り方に警鐘を鳴らしており、近い将来、ルールの見直しもあることを示しているため、早くも戦々恐々としている人々もいる。
【パワーゲーム化】
パーシモンクラブがメタルクラブに変わり、タイガー・ウッズを筆頭とするプロゴルファーたちが軽々と300ヤード級のショットを披露するようになった2000年ごろから、世界のゴルフ界の飛距離偏重が始まった。
飛ぶクラブ、飛ぶボールの開発合戦が激化し、トッププレーヤーの飛距離はさらに著しく伸び、そうした変化に対応するため、ゴルフコースが次々に伸長されていった。
メジャー大会の舞台、米ツアーの舞台、そして一般アマチュアゴルファーがプレーするコースも、次々に「長いコース」と化していき、この20年超、ゴルフはパワーゲームと化してきた。
【向かうべき方向】
だが、「ゴルフコースを伸長し続けることは、ゴルフというゲームにとって有害でしかない」とUSGAのマイク・デービスCEOは指摘。コースを長くするためには、より広い土地が必要となり、芝や池、水、砂、化学肥料など、より多くのモノを使用することになる。地球環境の保護に逆行するそうした動きは、ゴルフの未来を阻害こそすれ、ゴルフの成長と拡大にはつながらないと述べている。
ゴルファーも長いコース、長すぎるコースをプレーすることを余儀なくされてきた。そのせいで必要以上に時間やエネルギーを消費、消耗しており、それがゴルフ人気を低下させ、ゴルフ離れを起こしているとレポートは指摘している。
「我々ゴルフ界は、これから正しい方向へ向かう必要がある」(デービスCEO)
コースを伸ばすのではなく、コースの戦略性をアップし、ゴルファーには飛距離ではなく技や精神面を競うことを目指してもらうのが本来のゴルフ。そのためには、ゴルフコースの距離的設定や用具開発に、何かしらの規制をかけることも検討していくという。
ゴルフコースの「距離」とゴルファーが打ち出す「飛距離」を抑え、パワーゲーム化したゴルフを技を競い合うゴルフへ変えていく。それは、ゴルフを本来の姿へ引き戻すことを意味しているのかもしれないが、各方面から反発、反論が出ることは想像に難くない。
「緊急事態ではないし、危機でもないし、一夜にして起こったことでもない、、、、今から方向転換することは手遅れではない。みんなで変えていこう」(デービスCEO)
USGAやR&Aが描いたゴルフの理想の未来は、果たして実現されるのか。今後の動向から目が離せない。