「アラブの国」へ行くと決めたミケルソン、行かないと決めたタイガー・ウッズ、それぞれの道

出場を決めたミケルソン、出場を辞退したウッズ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 アメリカの国民的スター選手であるフィル・ミケルソンが年明けの1月末から開催される米ツアーのウエイスト・マネジメント・フェニックス・オープンを欠場し、同週に開催される欧州ツアーのサウジ・インターナショナルに出場すると発表した途端、米内外から批判が続出している。

 一方で、ゴルフ界の王者、タイガー・ウッズは、同大会から高額のアピアランスフィーをかざしての出場オファーを受けながら、2年連続で辞退していたことがわかり、大きな波紋が広がりつつある。

 サウジ・インターナショナルは今年(2019年)1月に創設された欧州ツアーの新規大会。だが、前年に起こったジャーナリスト殺害事件や現地の情勢を考慮して、出場を見送った選手が多かった。とはいえ、出場した米ツアー選手もおり、第1回大会を制したのは米国人のダスティン・ジョンソンだった。

 ミケルソンは第1回大会には出場していなかったが、来年の第2回大会には出場する意志を表明したところ、内外から批判の声が続出している。批判の内容は、政治的、人権的な観点からの声ももちろんあるが、これまでミケルソンが大会の「顔」を務めてきた米ツアーのフェニックス・オープンを欠場してアラブの国の大会へ出ることを批判する声も多い。

 ミケルソン自身は「来年はまだ50歳。今後、フェニックス・オープンでプレーするチャンスはたくさんある。長年、出場チャンスを辞してきたアラブの国でプレーしてみたい。新しい場所でプレーして、ゴルフの成長を助けたい」と語っている。

 そんな中、ESPN・ドットコムのボブ・ハリッグ記者が、ウッズが同大会からの出場オファーを前回も今回も断っていたことを明かし、米ゴルフ界が騒然となっている。同記者によれば、サウジ・インターナショナルがウッズに提示したアピアランスフィーの金額は3ミリオン(約3億2700万円)とのこと。

 ウッズは批判の的になっているミケルソンを擁護する言葉を口にしたという。

「現地の政治的背景については僕も認識はしている。でも、ゴルフは往々にして、いろんな問題を解決する手助けになる。それに(ミケルソン以外にも)たくさんのトッププレーヤーが(サウジ・インターナショナルに)出るんだよね」

 その通り、来年の第2回大会には、ディフェンディング・チャンピオンのDJをはじめ、世界ナンバー1のブルックス・ケプカや今年の全英オープン覇者のシェーン・ローリー、マスターズ覇者のパトリック・リード、ヘンリック・ステンソン、トニー・フィナウがすでに出場を予定している。第1回大会で悪態を付き、失格になったセルジオ・ガルシアは、今回はアピアランス・フィーを貰わずに自主的に出場することを決めている。

 ミケルソンが高額のアピアランスフィーをもらって出場することは想像に難くない。が、ウッズが言っている通り、他の米ツアー選手たちも同様にアピアランスフィーを受け取って出場するわけだし、それが規定違反ではない以上、ミケルソンだけが批判されるのは少々アンフェアである。

 もしかしたら批判の声は、アリゾナ州立大学を卒業し、スコッツデールを「故郷」と呼び、これまで30回も出場してきたミケルソンに、これからもずっとフェニックス・オープンに「出てほしい」「見放さないでほしい」という祈りや希望の裏返しなのかもしれない。

 だが、1週間で60万人超の大観衆が詰め寄せるフェニックス・オープンにミケルソンはすでに十分貢献してきたと私は思う。ミケルソンにも意志があり、彼ならではの人生がある。「アメリカのためのミケルソン」「アリゾナのためのミケルソン」という重責から、そろそろ解放してあげてもいいのではないか。

 私は今、そう感じている。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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