「開かずの扉」を開き、日本のゴルフをもっと身近なスポーツとして広めていくための手作りイベント

子どもはスナッグゴルフで、大人は練習場で指導後、チーム対抗戦を楽しんだ

 日本中がラグビーのワールドカップで沸き返っていた9月下旬のある土曜日の朝のこと。埼玉県内の武蔵丘短期大学(ムサタン)のキャンパスで、子供も大人もシニアも初心者も、和気あいあいムードで「ゴルフ」を楽しみ、笑顔いっぱいの4時間超を過ごした。

6歳からシニアまで41名が参加した
6歳からシニアまで41名が参加した

 「ムサタンゴルフフェスティバル」と名付けられたこのイベントは、子ども、親、祖父母の3世代でゴルフの楽しさに触れてもらい、異なる世代間の理解や絆を深め、子どもたちの心と未来を拓くことを目指しており、今回は第1回の旗揚げ大会だった。そして、参加した41名全員が満面の笑顔をたたえながら帰路に就いた。

 草の根レベルの手作りイベントだったが、されど意義あるイベントだったのではないか。そう確信できるだけの反応や反響が、今、参加者から次々に寄せられているからこそ、手前味噌にはなるが、ここでお伝えしたいと思い、筆を執った。

【「敷居」や「壁」を取っ払うために】

 アメリカにおけるゴルフの存在は概して身近なものだ。ゴルファーはもちろんのこと、ゴルフをまったくやらないノンゴルファーの人々も、自宅近くのパブリックコースへ「毎日、散歩に行く」「犬の散歩に行く」「休みの日はゴルフ場のレストランでランチを楽しむ」等々、何かしらの形で「ゴルフ」に親しんでいる。

 子どもたちだけで練習をしたり、コースを回ったりして自由に遊ぶこと、しばしば。そんなふうに、アメリカにおけるゴルフは「楽しくて身近なスポーツ」という位置づけにある。

 だが、日本に目をやると、その状況はかなり異なっている。「ゴルフって、いいな」「ゴルフをやってみようかな」と思ったとしても、家族や周囲にゴルフをやる人が誰もいないという環境にあると、「練習場でさえ怖くて行けない」「初心者が行ったら怒られそうで尻込みしちゃう」という声を何度も耳にしている。

「お金持ちのスポーツというイメージが強くて、敷居が高い」「ルールや決まりなどを知らないとバカにされそうで、敷居が高い」と感じ、「だから敬遠してしまう」という声も何度も聞いた。

 40歳代のある女性は「子どものころから近所のゴルフ場の前を通るたびに、この門の扉の向こう側には、どんな世界が広がっているのかなと思っていたけど、ついに扉を開くチャンスがないまま、こうして大人になってしまった。扉の向こう側の世界を見てみたいといつも思っていたけど、その術が無かった」と、残念そうに明かしてくれた。

初開催した「ムサタンゴルフフェスティバル」の参加者募集チラシ
初開催した「ムサタンゴルフフェスティバル」の参加者募集チラシ

 本当はゴルフをしてみたい、ゴルフに触れてみたい、ゴルフを見てみたい。そう思っている人々が実は大勢いるはずなのに、そうした潜在ゴルファーが、実際のゴルフの世界に足を踏み入れることができないでいる。

 「敷居」や「壁」、「開かずの扉」があるのだとすれば、それらを取っ払う必要がある。ともあれ「ゴルフは楽しい」と感じてもらえれば、ゴルフを愛する人は増えていくのではないか。

 そんな想いを私が客員教授を務めている武蔵丘短期大学の川合武司学長に伝えたのが2019年の春だった。以後、学内スタッフ一同、試行錯誤を重ね、大勢の人々の理解と協力を得て、この秋、9月28日に実現したのが「ムサタンゴルフフェスティバル」だった。

【予想を上回る参加と協賛、支援】

 あらゆる年齢、年代で楽しめるのがゴルフ。その良さを味わってもらい、家族の絆も深めてもらおうということで、子ども、親、シニアの3世代の参加を募ったところ、初回にも関わらず、6歳の初心者からゴルフ熟練シニアまで、予想を大幅に上回る41名の参加が得られた。

子どもの覚えは本当に早い。あっという間にスナッグゴルフでコツを覚えていった
子どもの覚えは本当に早い。あっという間にスナッグゴルフでコツを覚えていった

 子どもたちにはゴルフ簡易版のスナッグゴルフを用いて、同大学の江原義智専任講師(プロゴルファー)、長島洋介専任講師(関東ゴルフ連盟ジュニア育成委員会強化部会参与)が握り方や打ち方を芝生の上でわかりやすく指導。大人たちには同大学キャンパス内のゴルフ練習場で、ゴルフ指導歴50年の川合学長が丁寧に指導した。学内に広々とした800平米の芝生の中庭のみならず、200平米のゴルフ練習場がある。そんな稀有な環境があったからこそ、実現可能な内容だった。

大人の初心者も30分以内で本物のクラブで本物のボールが打てるようになり、大喜びだった
大人の初心者も30分以内で本物のクラブで本物のボールが打てるようになり、大喜びだった

 生まれて初めてクラブを握った子どもたちも、初心者のママたちも、あっという間にポンポンとボールを打ち始め、歓喜の声を上げていた。

 小1時間のレッスン後は、大人と子どもでチームを作り、チップ&パットの対抗戦を行なった。30ヤード前後をパー4とする仮想4ホールを回り、3ホールは全員がスナッグゴルフ、1ホールだけは本物のクラブとボールでプレーするという方式を取った。どのホールでも、カップインできたら親子でハイタッチをしてもらった。

スナッグゴルフは子どもだけではなく大人も十分に楽しめる
スナッグゴルフは子どもだけではなく大人も十分に楽しめる

 一般的にスナッグゴルフは子ども向けだと思われがちだが、初心者の大人も十分に楽しめ、スイングの基本動作を覚える上でとても役に立つ。そして、安全安心に遊べるからこそ、心底、楽しむことができた。だからこそ、ゴルフを敬遠していた人々の気持ちの垣根が自然に取り払われたのだと思う。

 スコアカードにスコアを付けることも経験した参加者たちは、少々のスリルも味わいながら、みな笑顔を輝かせていた。

 

子どもが大好きなメニュー。栄養専攻の学生たちがボランティアで調理し、食堂に並べていた
子どもが大好きなメニュー。栄養専攻の学生たちがボランティアで調理し、食堂に並べていた

 対抗戦終了後は学内の食堂へ。同大学の健康栄養専攻の学生たちが調理したピザやパスタ、唐揚げやフライドポテトのランチを楽しんでもらいつつ、私、舩越園子が「ゴルフは笑顔で楽しんでほしい」と呼びかけるプチ講演を行なった。

私(舩越園子)も10分ほどのプチ講演で「ゴルフを楽しんでほしい」と呼びかけたと
私(舩越園子)も10分ほどのプチ講演で「ゴルフを楽しんでほしい」と呼びかけたと

 たくさんの協賛や協力が得られたおかげで、表彰式では参加者全員に賞品を持ち帰ってもらうことができた。さらには、このイベントを広く発信してもらえるよう呼びかけたところ、報道関係者や見学・応援のための来場も多数得られ、さまざまな形でご支援をいただいた。

【草の根レベルの積み重ね】

 主催者である私たち大学側にとって一番うれしかったことは、イベント終了後の参加者たちの反応だ。

 帰りがけに、参加した子どもたち数人が近寄ってきて、こう言った。

「楽しかった人?」「はーい!」、「また来たい人?」「はーい!」
「楽しかった人?」「はーい!」、「また来たい人?」「はーい!」

「2回目は、いつやるの?」

「もっとゴルフやりたい!」

「まだ帰りたくない、、、、」

 興奮冷めやらぬ様子で再び芝の上へ繰り出し、クラブとボールで戯れる子どもたちの姿が、イベント終了後も2時間ほど見られた。

「一度は帰宅したけど、子どもたちが『もっと打ちたい』と言い出し、思い切って、初めて、近所のゴルフ練習場へ行きました」

 そんな嬉しい報告も、後日、ある参加者からいただいた。

「ウチの子がジュニア用のゴルフクラブを買ってほしいと言い出しました。どうしたらいいですか?」

 そんな相談も寄せられていることは、何よりの喜びである。

 第1回ムサタンゴルフフェスティバルは、手探りで企画・開催した手作りのゴルフイベントだったが、わずか4時間超の催しを通じて、「ゴルフが楽しい」と感じた子どもや大人が、少なくとも1人、いや2人以上、確実に増えた。

 「高い」と感じていた敷居をまたぎ、壁を取り払い、「開かずの扉」を開くことができた。そこに意義はあったのだと感じている。

 

 渋野日向子ブームのごとくゴルフ観戦者を急増させるようなビッグ・ムーブメントではないが、草の根レベルのスモール・イベントを積み重ねることで、日本のゴルフが人々にとってもっともっと身近で楽しい存在になってくれたら嬉しいではないか。

「2回目は、、、近いうちに、またやるからね」

 私も笑顔で、子どもたちに、そう答えた。

*写真はすべて関係者が撮影。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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