今年のメジャー大会を振り返る~後編

全米オープンも全英オープンも庶民の夢を現実にしたようなストーリーだった(写真:青木紘二/アフロスポーツ)

 今年のメジャー4大会を振り返る、今回は後編。全米オープンと全英オープンをあらためて振り返ってみよう。

【全米オープン】

 35歳の米国人、ゲーリー・ウッドランドがツアー生活11年目にして全米オープンを制覇し、メジャーチャンピオンに輝いたことは、まさにアメリカの庶民の夢が現実になったストーリーだった。

 アメリカのどこにでもいるスポーツ少年が、大好きだったバスケットボールで挫折し、大学生にしてゴルフへ転向。ジュニアゴルフ出身のヤングエリートたちとは天と地ほども差があるレイト・スタートとなったが、両親や友人、先輩プレーヤーであるジャスティン・ローズとの素敵な出会いや励ましに支えられ、地道な努力を積み、ついに掴み取ったメジャー・タイトルだった。

 2017年には男女の双子の誕生を心待ちにしていたが、生まれてきたのは男の子だけだった。その悲しい出来事を明かしたとき、ウッドランドの涙は止まらなかった。

 深い悲しみを味わった一方で、ダウン症の女子大生エイミーさんと出会い、彼女との素敵な交流が始まった。

「エイミーの前向きな生き方に勇気づけられた」

 優勝会見でそう語ったウッドランドの笑顔は、大勢の人々に幸せな気持ちをもたらした。

 

 英才教育ではなくても、異なるスポーツからの転向でも、エリートゴルファーではなくても、メジャーを制覇できたこと。アメリカのごくフツウのスポーツ少年が、人生で出会った善人たちに導かれ、栄冠を掴んだこと。

 

 そのストーリーは、まさに庶民の夢がリアルになった現代版おとぎ話。だからこそ、人々に夢と希望をもたらした。

【全英オープン】

 シェーン・ローリーが全英オープンを制したことは、アイルランドの人々にとっての現代版おとぎ話のようなストーリーだった。

 アイルランドのフツウの少年だったローリーは、幼いころから近所の友だちとゲーム感覚でゴルフの腕を競い合っていた。

「僕らは地元のゴルフ場でピッチ&パット競争に明け暮れながら夏休みを過ごした」

 22歳でプロになり、欧州ツアーにデビューし、世界の舞台で活躍し始めたローリーは、2016年の全米オープンでメジャー初優勝に迫った。だが、最終日に崩れて2位に甘んじ、2018年には米ツアーのシード権を喪失。

 自信を失って欧州ツアーに戻ったローリーを励まし、支えてくれたのは、家族やコーチ、相棒キャディ、そしてツアー仲間だった

「僕は友に恵まれている。僕は人に恵まれている。それはとても幸運なこと。だから、このトロフィーはみんなのものだ」

 68年ぶりに北アイルランドで開催された全英オープンでアイルランド出身のローリーがチャンピオンに輝き、彼の勝利を北アイルランドの人々が心から祝福したひとときは、政治的、民族的、宗教的に複雑な状況にある彼の地の人々に幸福感をもたらした。

 母国のパブで大勢の仲間たちと勝利の美酒に酔いしれたローリーの姿。それは、まさにアイルランド庶民の夢が現実になったことを物語る光景だった。

~~~~~~

 マスターズを制覇したタイガー・ウッズは世界を牽引するスーパースター。全米プロを制したブルックス・ケプカは世界ナンバー1に君臨する現代の王者。

 全米オープン覇者、ゲーリー・ウッドランドは米国庶民から生まれたヒーローであり、全英オープン覇者、シェーン・ローリーはアイル

ランド庶民の希望の星。

 そう考えると、今年の4人のチャンピオンの顔ぶれは、実にバランスが取れており、世界を沸かせた彼らのさらなる活躍を祈るばかりだ。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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