米ツアー2019年シーズンを振り返る~「チェンジ」と「批判」に溢れた1年

昨季は混沌とした1年だったが、それだけにグッドストーリーは美しく輝いた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 米ツアーの2019年シーズンは早くも終了。来週12日からは2019-2020年シーズン開幕戦が始まろうとしている。

2019年シーズンは、「チェンジ」と「批判」に溢れた1年だった。新シーズンが始まる前に、そんな昨季を振り返ってみようと思う。

【チェンジ、チェンジ、チェンジ】

 2019年1月1日からゴルフルールが一新されたことは、世界のゴルフ界における歴史的な出来事だった。今回のルール改正は「難解で複雑なゴルフルールをわかりやすくシンプルにしよう」という意図で行なわれた大改正であり、その背後には、長年の懸案であるスロープレーを是正するという大きな目的もあった。いざ、新ルールが施行されると、当初は選手たちから次々に批判や不満の声が上がった(注:批判の内容は騒動については後述)。

 メジャー4大会を4月から毎月1つずつ開催し、シーズンが8月で終了するという今季の新スケジュールは、米ツアー史上初の超過密日程だった。時間的余裕がない中、ブルックス・ケプカ、ローリー・マキロイのようにシーズン序盤から好調だった選手は好調ぶりを維持したが、ジェイソン・デイ、ジョーダン・スピースなど調子を落とした選手、故障した選手は、立て直すことができぬままシーズンを終える格好になり、好調・不調が大きく分かれた1年になった。

 フェデックスカップのシステムも改良され、シーズンエンドのプレーオフは4試合から3試合へ減ったが、年間王者に贈られるボーナスは10ミリオンから15ミリオンへ一気に増額された。王者のみならず、王者以下の選手たちが手にするボーナスも同時に大幅増額されたわけで、チェンジずくめだった昨季を終えたとき、最終的には「プレーヤー・ファーストのグッド・シーズンだった」と多くの選手がご満悦の様子だった。

【新ルール批判】

 2019年シーズンは、選手たち、あるいはゴルフファンから、様々な批判の声が噴出した1年だった。

 前述の新ルールに対する騒動は、年明け早々から方々で起こった。選手が方向を定めたり、ラインを読んだりする際の「キャディのラインアップ」を新ルールでは禁じているのだが、それが試合の現場では誤解や認識不足による混乱につながり、欧州ツアーでは中国人選手のハオトン・リーが、米ツアーでは米国人選手のデニー・マッカシーが、それぞれ2罰打を科された。

 だが、米国人のジャスティン・トーマスは、このルール違反を問われた際、米ツアーに猛抗議。その結果、トーマスはペナルティに当たらないと結論され、マッカシーへの2罰打も取り消されて、このルールの解釈と適用の仕方が見直されるという珍事になった。

 以後も、選手たちからは「ニー・ドロップの方法がカッコ悪すぎる」など感情的な批判も上がり、リッキー・ファウラーがわざとおどけた仕草でドロップした様子がSNSで広められ、物議を醸した。

 トーマスはゴルフルールを司るUSGA(全米ゴルフ協会)に新ルールに対する抗議を突きつけ、両者の「口論」がSNS上で公開されるなど、ゴルフ界は混沌としてしまった。

 

 こうした一連の騒動は、欧米両ツアーの会長が「ゴルファーの範たる姿勢を見せるべき」という内容のレターを選手たちに送り、徐々に収束していった。

【スロープレー批判、クーチャー批判】

 だが、新ルール問題と入れ替わるように大騒動と化していったのが、ブライソン・デシャンボーやJB・ホームズのスロープレー問題だった。

 

 そして、さまざまな持論を展開するデシャンボーのスロープレー問題はシーズン終盤には世界ナンバー1のブルックス・ケプカとの論争へと発展。シーズンエンドに2人が直接対話し、どちらも「問題ない」と言って見せたが、長年の懸案であるスロープレー問題がそれで解決されたわけではもちろんなく、今後も撲滅に向けて、選手、キャディ、ツアー側、すべての人々の努力と協力が求められる。

 米ツアーきってのナイスガイと呼ばれ、温厚な人柄と優しい笑顔が人気だったマット・クーチャーが、メキシコで優勝した際、現地キャディに「たった5000ドルしか払っていない」という批判が上がったことは、いろんな意味でショッキングな出来事だった。

 批判が広がった末に、クーチャーは現地キャディに追加で謝礼を支払った。「手取り」が約50万円から約500万円になった現地キャディは「ソーシャルメディアはパワフルなツールだ」と喜んでいた。だが、いきなりSNS上で世間に訴えかける前に別の方法は無かったのかと首を傾げる向きもある。

【USGAのコース設定批判】

 全米オープン開催前に、USGAのコース設定に対する激しい批判が選手たちから上がったこともショッキングだった。批判の内容は、USGAが「難しいコース」ではなく「アンフェアなコース」「アンプレアブルなコース」を作っているというもの。ボイコットまで考えている選手がいたという事実は世界のゴルフ界を驚かせた。

 かつて「泣く子も黙るUSGA」と恐れられていた米国ゴルフの総本山に対して、選手たちが真っ向から批判の声を上げる現代を、どう見るかと問われたら、その返答はなかなか難しい。

 いわゆる「権威」に対して意見できる「オープンな空気」「SNSというツール」をポジティブに受け止めることはできる。伝統や風習、前例にとらわれず、改良改善していくことは、モノゴトには必要であり、その一例として眺めれば、いい傾向と言えるのだろう。

 だが、総本山が揺らいでしまったら、山全体、周辺一帯まで揺らいでしまう。山は美しくそびえているからこそ、人々はその頂きを見上げるわけで、崩れかけた山は人々を惹きつけなくなる。

 USGAのコース設定に関しては、全米オープンを連覇したケプカの一言が圧巻だった。

「エクスキューズは聞きたくない。黙ってプレーするのみ。フェアウエイを捉え、グリーンを捉えていれば、何も問題ないはずだ」

 ケプカのこの発言以降、選手たちの批判はトーンダウンしていった。いざ、今年の全米オープンは、ケプカの3連覇こそならなかったが、ゲーリー・ウッドランドの見事な勝利で幕を閉じ、戦いの舞台となったペブルビーチを批判する選手は、ほぼ皆無だった。

 コース設定の改善を成功させたUSGAの面目躍如もなされたハッピーエンドは、今季最高のグッドストーリーだったのではないだろうか。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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