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3日目を終えて3打差首位は勝率100%!? タイガー・ウッズ、復活優勝なるか?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
ウッズ・フィーバーに沸くイーストレイク。大観衆が詰め寄せている(写真/舩越園子)

 いよいよ、タイガー・ウッズが復活優勝に王手をかけた。

 米ツアーのプレーオフ最終戦、ツアー選手権3日目を終えて、ウッズは2位に3打差を付け、通算12アンダーで単独首位に立っている。

初日も2日目も首位タイ、3日目は単独首位、明日の最終日に優勝すれば、2013年のブリヂストン招待以来、5年ぶりの復活優勝と米ツアー通算80勝目を完全優勝で飾ることになる。

コース内には、いろんな“虎”がいっぱい!(写真/舩越園子)
コース内には、いろんな“虎”がいっぱい!(写真/舩越園子)

 

 戦いの舞台、イーストレイクGC(米ジョージア州)に詰め寄せた観衆は連日、「ゴー、タイガー!」と狂喜の声を上げている。猛暑の中、アップダウンのあるコースの中を虎の着ぐるみ姿で闊歩する男性ファンの姿もある。球聖ボビー・ジョーンズゆかりの由緒あるイーストレイクは、今まさにウッズ黄金時代さながらの熱気に包まれている。

【勝つための準備は万端!?】

 昨年4月に生涯4度目の腰の手術を受け、戦線離脱を余儀なくされたウッズは、一時期は「もう2度と戦いの場には戻れないかもしれない」と、引退をにおわせる発言さえしていたが、その後は回復のスピードが上がり、今年1月から米ツアーに復帰した。

 

 瞬く間に調子も試合勘も取り戻し、3月のバルスパー選手権、アーノルド・パーマー招待で続けざまに優勝争いを演じ、その後も7月のクイッケンローンズ・ナショナル、全英オープン、8月の全米プロでも勝利に迫った。

 2013年以来、5年ぶりのプレーオフシリーズでも第3戦のBMW選手権で優勝争いに絡み、今季6度もトップ10入りを果たした。だが、どうしても勝利には手が届かなかった。

 シーズン最終戦のツアー選手権は今季優勝のラストチャンス。最後の最後にウッズが復活優勝を果たすことはできるのか。世界の注目が集まる中、ウッズは静かなる自信を示した。

「3月ごろと今とでは肉体も手にしているクラブも全然違う。ここまで来るために、たくさんのことを通り抜けてきた。勝つための準備は整っている」

 プレーオフ第1戦のノーザントラストで、シャフトとロフトを変えたドライバーに持ち替え、ショットは絶好調になった。だが、パットに苦悩し、スコアが作れなかった。ところが今週は「ストロークゲインド・パッティング」(スコアに対するパットの貢献度の指標)で1位にランクされた。

「これまではショットは良くてもパットに波がありすぎたけど、今週はどちらも安定している」

 自身の言葉通り、復活優勝のための準備は万端だ。

【勝率は100%】

 今年のイーストレイクは「まるで全米オープンのコースのようだ」と選手たちは口を揃えている。深く粘っこいラフ、固く速いグリーンの難しさは想像以上で「パーならグッドスコア」「我慢の勝負」であるところは、まさに全米オープンそっくりである。

 ウッズはツアー選手権では1999年と2007年に勝利を挙げているが、超難関のイーストレイクでプレーするのは今年が5年ぶりだ。

「簡単にボギーを打ってしまうコース。バーディーを獲るのが大変なコース。だからこそ明日の最終日、僕は思い切りコンサバティブなゲームプランで戦うつもりだ」

 それは「浮き足立つことなく」「気負いすぎることなく」、しっかり戦うつもりだという意志表示でもある。

 心配されているのは、そんなウッズの心身の状態がどうなるかという点だ。元王者といえども、5年ぶりの復活優勝を目前にすれば、緊張やプレッシャーで平常心を失うのではないかと囁かれる中、ウッズはそんな米メディアの危惧を吹き飛ばした。

 優勝争いを演じたバルスパー選手権でもA・パーマー招待でも全英オープンでも「アブノーマルな感覚は全然感じなかった。たとえ何年ぶりであっても、普通でいられた。それは、これまで僕が優勝争いの場に十分すぎるほど身を置いてきたがゆえに、僕のマッスルが優勝争いの感覚を覚えているということ。だから、久しぶりの優勝争いの中でも、居心地はとても良かった」

 体が覚えている。五感が覚えている。それが、メジャー14勝、通算79勝の元王者が抱く最大の武器だ。

「とても勝ちたい。3打のリードがあるけど、好調な選手たちがすぐ後ろに控えているから、明日どうなるか、楽しみだ」

 統計によれば、これまでウッズが54ホールを終えた段階で、3打差あるいは3打以上の差を付けて首位に立ったのは23試合。その23試合において、ウッズの勝率は100%だった。

 明日、100%の勝率が保たれるかどうか。体で覚えた勝ち方で、ウッズが復活優勝を遂げてくれるかどうか。

 ウッズも、世界中のファンも、みな明日のサンデーアフタヌーンが「楽しみだ」。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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