間もなく開幕する全英オープン。果たして誰が勝つ?

スコットランドのファンの視線はタイガー・ウッズに注がれているが、勝つのは誰か?(写真:ロイター/アフロ)

 いよいよ、全英オープンが開幕する。米国ラスベガスのブックメーカーによる優勝予想を眺めると、優勝候補の筆頭はダスティン・ジョンソンでオッズは12倍。次いで、ジャスティン・ローズが14倍、リッキー・ファウラーが16倍と続いている。

【忍耐こそが、カギ?】

 世界ランク1位のジョンソンが筆頭に挙がるのは誰にも頷ける。米ツアーで出場したラスト3試合だけを見ても、メモリアル・トーナメント8位、フェデックス・セントジュード・クラシック優勝、全米オープン3位と、すべてトップ10入りを果たしており、勢いがある。

 とはいえ、過去9回出場した全英オープンでは優勝はなく、2位が1度だけで、あまり好成績は残せていない。だが、飛ばし屋でありながら「一番好きなのはウエッジ」と小技に自信を抱くジョンソンだ。今年の舞台、カーヌスティでは「忍耐がカギになる」と腹を括り、我慢のゴルフに挑もうとしている。

【コースレコード保持者が挙げるカギは?】

 

 優勝候補予想で次に続いているのは、ローリー・マキロイの18倍だが、そのマキロイと並んで英国の27歳、トミー・フリートウッドの名前が挙がっているのが興味深い。

 

 フリートウッドは日本ではまだあまり知られていないかもしれない。欧州ツアーではすでに4勝だが、メンバーになったばかりの米ツアーでは未勝利で、過去4回出場した全英オープンでは27位が最高位と振るってはいない。

 そんなフリートウッドが、なぜ全英覇者のマキロイと並んで優勝候補の上位に上がっているかと言えば、彼はカーヌスティのコースレコード保持者だからだ。

 

 昨年、カーヌスティで開かれた欧州ツアーのダンヒル・リンクス選手権2日目に「63」をマークし、コースレコードを更新したフリートウッドは、試合のないオフの間、どこかで練習しようと思うと「必ずカーヌスティに来る。最も難しいリンクスで日頃から練習していれば、他のコースが易しく感じられるから」と言っていたほどで、今大会の出場選手の中ではカーヌスティを最も熟知していると言えそうだ。

 

 だが、いざ今週のカーヌスティにやってきたフリートウッドは「僕が知っている今までのカーヌスティとは、まったく違う」と驚きの声。

「フェアウエイはびっくりするほど固く速く、ボールはどんどん転がるのみならず、どう跳ね上がって、どこへ入り込むかもわからない。フェアウエイキープはきわめて困難だ」

 カーヌスティの難所は上がり3ホールと言われているが、フリートウッドは「14番、15番もフェアウエイを捉えるのは至難の業だ」と語り、カーヌスティ攻略のカギは「フェアウエイキープ」だと言い切る。

【王者ウッズは、クリエイティビティがカギ】

 2015年以来、3年ぶりに全英オープンに出場するタイガー・ウッズを迎え、スコットランドのゴルファーたちは開幕前からすっかり興奮気味である。

 腰痛と欠場を繰り返していたウッズは、昨春、4度目の腰の手術を受けて完全なる戦線離脱となったが、今年1月に米ツアー復帰を果たすと、瞬く間に優勝争いに3度も絡み、復活優勝は時間の問題と期待されている。

 すでにオッズは25倍まで上がっているが、ウッズ自身は優勝への意気込みを語るより、思い出話のほうが楽しそう。

 カーヌスティは1995年のスコティッシュ・オープンにアマチュア出場した際、初めて足を踏み入れた思い出の場所。「リンクスゴルフと恋に落ちた」と振り返るウッズは、「飛距離より創造性を求められるリンクスのゴルフが大好きになった」と振り返る。

 プロ転向後、カーヌスティが舞台になった全英オープンでは1999年大会が7位タイ、2007年大会が12位タイ。

 今年は前週の土曜日に早々にスコットランド入りし、テニスのウインブルドン女子シングルスのファイナルを観戦後、すぐさまカーヌスティへやってきて、日曜日から練習ラウンドを開始。

 「フェアウエイのほうがグリーンより固く速い」と言ったウッズの言葉は、すぐさま世界へ向けて報じられ、今年のカーヌスティのコースの状態を表わすフレーズとなった。

 「ドライバーはあまり使わない。どんなクラブを選んで戦うのか。クラブ選択の面白いテストになる」と、創造的なゲームの組み立てこそがカギになるとウッズは言う。

 「パターを駆使できるかどうかも大事。グリーンの外から15メートルぐらいをパターで寄せることもある」と語り、パターでカップに入れるのみならず、パターでどれだけ寄せられるかにもクリエイティビティが問われるとウッズは考えている。

【果たして、誰が勝つ?】

 「最難関のリンクス」と呼ばれるカーヌスティでは、毎回、ドラマが起こる。そのドラマはいつも悲劇だった。

 

 1999年大会では、首位を独走していながら10打のリードをついに失い、プレーオフに持ち込まれて敗北したフランス人、ジャン・バンデベルデの悲劇が、あまりにも有名だ。

 2007年大会では、3日間首位を独走していたスペイン人のセルジオ・ガルシアが、最終日に徐々に崩れてパドレイグ・ハリントンとのプレーオフに持ち込まれ、最後の最後に敗れて、「三日天下」の悲劇に終わった。

 異例で異常なほどに干上がっている今年のカーヌスティでは、やっぱり何かドラマが起こりそうな気配。しかし、驚くようなハプニングが起こったとしても、それをいい方向に活かして優勝することができれば、ドラマは悲劇ではなく歴史に残る優勝物語になる。

 カーヌスティ攻略のカギは選手によってさまざま。だが、カーヌスティの全英オープンを最後に制するのは、度胸と忍耐の勝負に打ち克つことのできる人間としての猛者、賢人ではないか。

 カーヌスティの過去の悲劇を思い出せば、そう思わずにはいられない。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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