「優勝者が祝福のキスを拒否された!?」騒動に感じさせられるユーモアとアイロニー

21歳の新人にして見事、初優勝。だが「祝福のキスを拒否」と取り沙汰される羽目に。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

米ツアーのAT&Tバイロン・ネルソン(5月17日~20日)終了後、米ゴルフ界で大きな注目を集めてしまった”変な話”が、実はある。

2位に3打差を付け、大会を制したのは21歳の米国人、今季ルーキーのアーロン・ワイズ。ウイニングパットを沈め、拳を握り締めて初優勝の喜びと達成感を噛み締め、18番グリーンに駆け寄ってきた美しい彼女と喜びのハグ。

しかし、そのワイズが「キスしようとしたら彼女からキスを拒否された」という、ある意味、とても私的で、外野には無関係で、言い方を変えれば、どうでもいい話。

私は現場でその瞬間を目撃したが、「あれっ?今、キスしなかったなあ」と思っただけで、別段、気に留めてはいなかった。だが、その夜から、その出来事は米ゴルフ界の話題を独占するほどに発展。米国の主要なメディアが続々と取り上げる”ビッグニュース”になった。

キスの話がそうやって取り上げられるその現象は、いかにもアメリカらしいと苦笑しつつ、コトの成り行きを眺めていたら、”事件”から3日が経過した23日(米国時間)、ワイズ本人が米メディアにコトの真相を語る事態へ。

若いカップルの私的な話ではあるが、ここまで大きな話題になった以上、今後、たとえば彼がメジャー優勝を果たしたときに「初優勝したあのときは、、、」という話が出てこないとも限らない。

だから、この”変な話”を、あえて日本のみなさんにもお伝えしておこうと思う。

【コトの経緯】

激しい雨に見舞われて、スタートが4時間も遅れた最終日の夕暮れどき。今年から同大会の新たな戦いの舞台となった米テキサス州ダラス郊外のトリニティ・フォレストの18番グリーン上で、ワイズはウイニングパットをしっかり沈め、今季新人ながら堂々の初優勝を達成した。

ガッツポーズを取り、その場で米テレビ中継のレポーターからマイクを向けられ、これまた新人とは思えないほど立派な優勝スピーチを堂々と披露。

そして、スコアリングのテント方向へ歩き出したワイズめがけて、若い美女が一目散に駆け寄ってきた。

ワイズは目を見開きながら両腕を広げ、彼女を抱き締めた。2人とも夢中で何か言葉を交わし合っているのが見て取れた。

そして、米ツアーの優勝者たちがみなそうするように、喜びのキスをしようとワイズが彼女に顔を近づけると、どうしたことか、彼女は顔をそむけ、祝福のキスは無し、、、、。その一部始終が米国のテレビ中継のカメラによって、すべて写し出されていた。

その場面を見ていた人々の一部がSNS上で「優勝者が彼女からキスを拒否された」と発信したことが発端となり、その話は瞬く間に拡散されていき、翌日には、ちょっとした騒動と化した。火曜日になっても騒ぎは静まるどころか、追加報道で一層広まっていった。

【コトの真相】

 そんな事態を収拾すべく、ワイズがコトの真相を米メディアに語った。

「いろいろ言われているけど、これは本当に何でもない話なんです。

 

 そもそも僕は、彼女があの場に来ていることを知らなかった。彼女は日曜日の朝の便で駆けつけてくれていたそうで、僕は彼女が駆け寄ってきた姿を見て、とても驚き、興奮状態になった。そして彼女も僕の優勝をとても喜び、とても興奮していた。

 だから、あのときは2人とも、あまりにも興奮していたので、叫ぶように何かを口走っていて、彼女は僕がキスしようとしたことにも気づかず、しゃべり続けていた」

 ただ、それだけのことで、ワイズと彼女は、その後も今も「これまで通り」、いや「今まで以上」の仲良しなんだとか。

「こんなことが、こんなに大きな話題になるなんて、面白いね」

そう言って笑ったワイズの言葉を受け、すぐさま続報を出した米メディアの記事の中には、こんな下りもあった。

『ワイズは優勝者が優勝直後に取るべき手順に、もっと慣れたほうがいい。才能溢れる新人だが、まだまだ学ぶべきことがたくさんある』

ユーモアとアイロニーがいい塩梅に込められたこんな記事が出るところも、いかにもアメリカらしいと苦笑させられた。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

有料ニュースの定期購読

舩越園子のゴルフここだけの話サンプル記事
月額550円(初月無料)
週2回程度
米国ゴルフ取材歴20年超の在米ゴルフジャーナリストならではの見方や意見、解説や感想、既存のメディアでは書かないことがら、書けないことがら、記事化には満たない事象の小さな芽も含めて、舩越園子がランダムに発信するブログ的、随筆風コラム。ときにはゴルフ界にとどまらず、アメリカの何かについて発信することもある柔軟性とエクスクルーシブ性に富む新形態の発信です。

Facebookコメント

表示

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。

  1. 1
    U-23日本代表の惨敗がA代表に及ぼす影響とは 深刻な事態に直面した森保体制の今後 元川悦子1/17(金) 10:00
  2. 2
    はじめの一歩の誕生秘話「ボクシング漫画はずっとやりたくなくて」作者が語る驚きの経緯 木村悠1/17(金) 6:00
  3. 3
    アルゼンチン人コーチが語る「U23アジア選手権を振り返って」 林壮一1/17(金) 0:01
  4. 4
    カープV戦士から韓国で悲劇のエースに 故・福士元投手を描いた映像作品を美大生が公開 室井昌也1/17(金) 11:28
  5. 5
    必見! パリ・サンジェルマンが脅威の「ファンタスティック4」を生かすトゥヘルの新戦術で独走態勢 中山淳1/17(金) 11:30
  6. 6
    トヨタ・ヤリスWRCを社長が自らドライブし、観衆が大興奮!トヨタが切り拓く新しい道。 辻野ヒロシ1/17(金) 16:40
  7. 7
    ローマの「呪い」に襲われたザニオーロ、20歳の至宝を勇気づけた主将のクロワッサン 中村大晃1/17(金) 7:34
  8. 8
    日本代表の強化指針「ジャパンズウェイ」は誰が発案し、なぜ復活したのか? 宇都宮徹壱1/16(木) 9:06
  9. 9
    課題は選手でなくチームのプロ化 ラグビー界がサバイバルするための道 大島和人1/16(木) 11:35
  10. 10
    橋岡大樹、小川航基、田中碧、齊藤未月……東京五輪の切符をつかむのは誰? 清水英斗1/16(木) 17:46