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タイガー・ウッズの司法取引が成立。社会復帰へ着実な前進。

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
フロリダ州パームビーチの裁判所に出廷し、司法取引を完了させたタイガー・ウッズ(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

今年5月29日にDUI(Driving Under the Influence=アルコールまたは薬物の影響下での運転)で逮捕されたタイガー・ウッズ(41歳)が米国(東部)時間の27日、フロリダ州パームビーチの裁判所に出廷。わずか10分ほどで、いわゆる司法取引が成立。ウッズの罪状はDUIから危険運転(Reckless Driving)へ正式にダウングレードされた。

ウッズは4月19日に4度目の腰の手術を受け、そのリハビリ中だった5月末にフロリダ州ジュピターの自宅近くの路上で逮捕され、世界を驚かせた。

その後、優秀な弁護団のサポートにより、司法取引の方向で様々な手続きが進められていた。ウッズの裁判所への出廷日は当初の予定だった7月5日から8月9日へ延期され、結局その日、ウッズ自身は出廷せず、弁護士だけが代理人として裁判所へ出向いて司法取引へ持ちこむための具体的な手続きを取った。

そして、次なる出廷日は10月25日とされ、この日はウッズ本人が必ず裁判所へ出向いた上で司法取引が完了するとされていたが、その日は再び延期され、10月27日の午後1時30分に指定されていた。

【司法取引とは?】

司法取引を行わなかった場合、DUIの罪に対する刑罰は、もちろん程度次第ではあるが、懲役刑もありうる。

それを避けるために、DUIに対しては無罪を主張し、その代わりに薬物服用に対する治療を受けることや多額の寄付などを含む社会貢献をすることを前提として、DUIより軽度の罪とされる危険運転の罪をあらかじめ認め、刑罰を軽くしてもらうというのが司法取引の内容だ。

そして、この日、司法取引が成立したウッズに実際に科せられた危険運転に対する刑罰は、明かされた範囲では、以下のような内容だ。

向こう1年間は飲酒も薬物使用も禁止され、裁判費用と250ドルの罰金の支払いが命じられた。

危険運転はどれほど危険であるかを認識させられる講習の受講や危険運転の被害者たちと直接会って話を聞く場への出席、さらには50時間のコミュニティサービスも義務付けられた。コミュニティサービスは、公園や公民館、シティホールといった公共施設、公共の場の清掃などが多いとされている。

ウッズはDUIによる逮捕がいわゆる「初犯」だったため、こうした司法取引を行なうことが許されたが、向こう1年間の猶予期間中に再びDUIで逮捕された場合は「もはや司法取引は認められず、懲役刑になる」と米メディアは報じている。

【回復は順調。期待は大】

ウッズは今年1月下旬のファーマーズ・インシュアランス・オープンに出場し、その翌週は欧州ツアーのドバイ・デザート・クラシックに出場。だが、初日の夜に背中から腰にかけて痙攣を起こし、2日目を戦わずして途中棄権。そして4月19日に4度目の腰の手術を受けた。

5月末に逮捕・拘置され、釈放されて以後は、しばらくは公けに姿を現わさなかったが、8月始めにロブスターを釣りあげた写真を自らSNSにアップするなどして元気な姿をアピール。

8月末には「医者から小技練習を開始してもいいという許可が出た」ということで、ウッズ自身がチップショットを打つ動画をツイッターで披露。

9月末にはプレジデンツカップの米国選抜チーム副キャプテンとして大会会場に登場。新しい恋人も同伴し、社会復帰への道を着実に歩んでいる。

10月7日にはアイアンショット、10月15日にはドライバーショットの動画を公開。

そして、その翌日の16日には、4月に腰の手術をした執刀医(主治医)を訪ね、「ドクターから素敵な方向をもらった。もう、次へ進んでもいいよと言ってもらえた」。

ウッズのエージェントを務めるマーク・スタインバーグ氏によると、「これからのタイガーは、やるべきことはほぼ何でもやれることになる。もちろん彼はとても慎重にゆっくりと進めていくだろう。それはそれで良いこと。でも、きっと彼はすぐに(試合復帰への)プランを練るだろうね」とのこと。

社会復帰、試合復帰への道も着実に歩みつつある今、司法の面でもなすべきことが明確になり、大きな前進ができた。

あとは、試合でティオフする日を待つだけ。その日は、いつ到来するのだろうか。ファンも米ゴルフ界も、期待を膨らませている。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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