来季日程を発表した米PGAツアーの「明」と「暗」。タイガー・ウッズの大会は存続できるのか?
【来季は2試合増。賞金総額ほぼ400億円】
米PGAツアーは今週、プレーオフ最終戦のツアー選手権を迎えている。プロゴルフ界で「今季」と呼ばれている「2016-2017年シーズン」は今大会で終了し、10月からは「来季」となる「2017-2018年シーズン」がすぐに開幕する。
最終戦のツアー選手権の開幕直前に米ツアー会長が会見に臨み、来季の展望を語るのは毎年恒例の行事。今日19日、ジェイ・モナハン会長はジョージア州アトランタのイーストレイクGCで米メディアと向き合い、来季日程などを発表した。
今季は年間47試合が開催されたが、来季は韓国で初開催されるCJカップ、ドミニカ共和国で初開催されるコラレス・プンタカナ・リゾート&クラブ選手権の2試合が増え、合計49試合となる。
年間の賞金総額は史上最高の3億6300万ドルを上回る見込みだという。日本円に換算すると、400億円近い巨額となる。
世界ナンバー1のダスティン・ジョンソンを筆頭に、今年の全英オープン覇者、ジョーダン・スピースや全米プロ覇者、ジャスティン・トーマス、大人気のリッキー・ファウラーなど、米国人選手の活躍が目覚ましい米ゴルフの現状が米ツアーの懐をさらに膨らませ、試合数も賞金総額も右肩上がりを続行中。
その意味で、米ツアーは前途洋々と言えそうではある。
【タイガー・ウッズの大会は存続の危機?】
だが、そんな米PGAツアーにも「明」があれば「暗」もある。
タイガー・ウッズがデビューした1996年以降、ウッズとともに急成長を遂げてきた米ツアーだが、ウッズの不調や故障、長期欠場がテレビ中継の視聴率や大会における集客率を低下させている。そして、今年5月の逮捕劇の影響は、表向きには言及されずとも、やはり免れないと思われる。
2007年に創設され、米国の独立記念日に合わせ、少数精鋭のエリート選手ばかりが集う米ツアー選手たちの憧れの大会とまで言われてきた「タイガー・ウッズの大会」が、現時点ではスポンサー不在で、来季開催が確定できない状況にある。
2007年の第1回大会から2013年まではAT&Tナショナル、2014年からはクイッケン・ローンズ・ナショナルと大会名が改められ、名門コングレッショナルなど、いずれもワシントンDCエリアのコースで開催されてきた。
ウッズの亡き父アールが、かつて米特殊部隊グリーンベレー所属だったため、ウッズは愛国心とミリタリーへの尊敬と感謝を込めて、ワシントンDCエリアを自身の大会場所に選んだ。
2009年の第3回大会では、ウッズ自身が優勝し、表彰式では大会ホストとチャンピオンの1人2役を声色を変えながらやってのけ、2012年には大会2勝目を挙げるなど、過去の大会は大いなる盛り上がりを見せたものだった。
だが、故障続きのウッズは2015年も2016年も出場できず、今年は4度目の手術とDUIによる逮捕後で、ついに姿も見せずじまいになった。
スポンサー企業のクイッケン・ローンズとは、そもそも2014年からの4年契約ゆえ、今年7月の大会で契約は満了。そして現時点では2018年以降の契約延長に頷いてはいない。
【ウッズ絡みは、垂涎の的ではなくなった?】
要するに、「ウッズの大会」の来季以降のスポンサーは不在の状態。米ツアーが発表した「来季49試合」という数字は、この大会が存続するという前提での数字である。
「ウッズの大会」を主催運営してきたタイガー・ウッズ財団によれば、今後も開催地をワシントンDCエリアに限定するか、それとも別地域に移すかによって、状況は変わるだろうとのこと。
クイッケン・ローンズの本社はミシガン州デトロイトにある。そのエリアで大会を開くとなれば、同社の契約延長はありうるのかもしれない。
ウッズの代理人を務めるマーク・スタインバーグ氏は「この大会は私たちにとって最優先の大会だ。勘違いしてほしくないのだが、まだ大会消滅というわけではない。スポンサー候補はいくつかあり、日々、話し合いを続けている」と、米メディアに語った。
とはいえ、タイガー・ウッズの名を冠するモノやコトが企業や団体、人々の垂涎の的だった時代が過ぎ去ったことを、大会スポンサー不在の現状が実証してしまっていると言わざるを得ない。
華やかだったあの「ウッズの大会」は、果たして来季以降も存続できるのかどうか。祈るような気持ちで動向を見守ることになりそうだ。