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ゴルフルールも近代化の時代。 ゴルフ界が打って出た興味深い“チェンジ”

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
メキシコ選手権の会見でルール変更に好意的な反応だったジョンソン(写真/舩越園子)

ゴルフの試合の途中で選手がルール委員を呼び、神妙な表情で処置を仰いだり、スコアカード提出後に罰打が科され、「過小申告で失格になった」なんて出来事が過去には多々起こってきたが、2019年以降はゴルフのルールが簡単になり、そうした“事件”がなくなるかもしれない。

【ルールの大幅変更の提言】

ゴルフルールをつかさどるUSGA(全米ゴルフ協会)とR&A(ロイヤル&エイシャント・ゴルフクラブ・オブ・セント・アンドリュース)は3月1日(米国時間)、ゴルフルール変更の提言を世界へ向けて発表した。

その目的は、複雑で難解なルールをシンプル化すること、そして時代の流れや変化に即して近代化すること。現行の34項目を24項目へ減らし、プレーヤーが判断に迷いがちなことを、できる限りノーペナルティにしようとしている点が今回の提言の大きな特徴だ。

たとえば、昨年の全米オープン最終日に優勝争いの真っ只中だったダスティン・ジョンソンがルール上の“事件”に巻き込まれた。

5番グリーン上でボールが不可抗力で「動いたのか」、それともジョンソン自身が「動かしたのか」の判断が分かれ、ホールアウト後まで持ち越された裁定によってジョンソンには1罰打が科された。だが、新ルールでは、このケースはノーペナルティになる。

グリーン上でアテンドされていないピンフラッグにボールを当ててしまった場合も新ルールではノーペナルティ。

パットのライン上に凸凹などがあるときは、それがスパイクマークか、ボールマークか、動物によって作られたものなのかの判断に迷うことなく、すべて直してOKになる。

ハザード内でルースインペディメントを動かしても、誤って地面や水面にクラブが触れてしまっても、ノーペナルティ。

これらの新ルールには、すべて「リラックス」という言葉が付された形で提言されている。

さらには、ドロップ処置を行う際に必要になるニアレストポイント(プレー可能な最も近い地点)と決めるときなども、「プレーヤーの判断を尊重する」と記されており、これはプロの試合で選手たちがルール委員を毎回呼んで進行が遅くなっている事態を改善することが期待されているようだ。

スロープレーを減らし、「ペース・オブ・プレー」を改善することはゴルフ界の全世界的な課題だが、新ルールもその点を大いに考慮し、ボール探しは現行の5分から3分へ短縮される。

そして、今年の全英アマチュアのストローク予選で試験的に実施することがすでに決まっている「レディゴルフ」を新ルール下ではストロークプレーで取り入れることになる。

「レディゴルフ」とは、これまで「ホールから遠い人から先に打つ」とされてきた打順を「準備できた人から先に打つ」にするというもの。

こうしたチェンジは、現行ルールでゴルフをしてきた人々にとっては、「えっ?」と驚くほどの大幅変更で、「ゴルフを根幹から変えることにもなりかねない」という意見も出るだろう。

【世界ナンバー1選手は好意的】

選手たちの反応もさまざまなものが出てくると予想されるが、前述の“事件”に巻き込まれた当人であり、現在の世界ナンバー1でもあるダスティン・ジョンソンは、まずは好意的なリアクションを示した。

「いくつかのルールを変えることは、いいことだと思う。少なくとも去年の僕のような経験をしなくて済むのは、いいこと。いくつかのルールが複雑なのも確かだからね」

R&Aのエグゼクティブ・ディレクター、デビッド・リックマン氏は「全ゴルファーにとって、ルールをわかりやすくすることが目的。そして、ルールは近代ゴルフにふさわしいものへ変化し続けることが重要だ」と言いながらも、「ゴルフの長年の価値や特徴を損なわないよう注意しなければならない」と、ゴルファーの反応や感情にも目を向けている。

また米PGAツアーも「USGAとR&Aのゴルフルール近代化の提言をサポートし、ツアーメンバーからのフィードバックを楽しみにしている」と好意的な声明を出した。

この日、発表された新ルールの提言は今年8月31日までは一般ゴルファーを含め、世界中からのフィードバックをオンラインで募り、それらを元に再検討した上で2018年半ばに正式発表され、2019年1月1日から実施される予定。それまでの間は、現行ルールが適用される。

果たして、これらの変更がルールのシンプル化、ゴルフの近代化、スロープレー撲滅につながるのかどうか。

ゴルフ界が大きく打って出た興味深い“チェンジ”だ。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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