米ツアー復帰の石川遼が最優先するものがこんなにも変わったワケ

「もがいていると言うより、、、、」穏やかに心境を語った石川遼(写真/舩越園子)

米ツアーの昨季序盤に腰を痛め、戦線離脱を余儀なくされた石川遼。公傷制度が適用され、今季はすでに再挑戦を開始している。

今週のキャリアビルダー・チャレンジで今季4戦目、そして2017年の自身初戦を迎えているのだが、初日を34位で発進した石川には、1年前までは見られなかったものが、はっきりと見て取れる。

【4時間前からウォーミングアップ】

「体が資本でやってますから」

石川が高らかに、そう言った。

アスリートは体が資本。それは当たり前のことではあるが、かつての石川が「心技体」の中で何を最優先していたかと言えば、それは明らかに「技」だった。

スコアや順位よりスイングの感触、出来栄え、満足度。練習の成果がどこまで現れたか。練習場でできたことがコース上でどこまでできたか。石川が饒舌に語っていたことの9割方は、そんな「技」に関するあれこれだった。

しかし、今週の石川は何より先に「体」に関することを気にかけている。その姿は、よくよく考えてみれば、彼が米ツアー挑戦を始めた2009年以来、初めて眺めたものだった。

カリフォルニア州ラキンタのラキンタCCで迎えたキャリアビルダー・チャレンジの初日は朝から冷たい雨が降っていたが、石川は悪天候に煩わせられることはなかったと言い切った。

「ちゃんとトレーニングをやっていると実感しているから、不安はないし、安心できる」

以前よりスイング練習にかける時間を減らし、そのぶん体のケアにかける時間を増やしたそうだ。

「スタートの4時間前からホテルでウォーミングアップを始めます。自分だけでやるトレーニングは、以前は10分20分だったけど今は1時間ぐらいに延ばしました」

ラウンド前のみならず、ラウンド後のケアも入念に行なう。

「自分の体を知る。自己治癒力を高める。体温を高く保つためには、どうするべきか。マッサージでほぐすだけでは筋肉は強くならないですから」

戦線離脱した昨年2月以前の石川の口から、体のケアに関するこうしたフレーズを聞いたことは、ほとんどなかった。

「1年前は(そういうことの大切さを)わかっていたつもりだったけど、体が出している信号に気付けなかった。それがすごく悔しい」

そう、以前の石川が悔しがっていたのは、いつも「技」のこと、あるいは「心」のことで、「体」のことではなかった。

体こそが資本――そう言い切る今の石川は、明らかに以前とは異なっている。

どこまでやるべきか。その計算を立ててから技を磨き、今季を戦う(写真/舩越園子)
どこまでやるべきか。その計算を立ててから技を磨き、今季を戦う(写真/舩越園子)

【もがかない。計算する。そして技を磨く】

最優先は「体」。

だが、公傷制度に助けられ、「出直し中」「再挑戦中」の石川は、昨季出場した6試合と今季20試合で、昨季の125位(ポイントあるいは賞金、いずれかのランキング)以内に入るという条件をクリアしなければならない厳しい状況下にある。

焦っているのではないか。不安なのではないか。そんなふうに彼の「心」の状態が気になる。

だが、今の心情をストレートに尋ねてみたら、石川は想像以上にさらりと答えた。

「このPGAツアーでこれまで3年、4年やってきて、最初の年には見えなかったものが見えるようになった。最初は予選カットのラインもわからなかったし、自分がこの人よりうまいのかどうかもわからなかった。

でも今は優勝のラインもわかっている。まだそこにいないだけ。これなら予選を通るか、通らないか、そのギャップも埋まっている。トップと自分の何が違うのか。それを考えられる。

もがいているというより、計算が立つ。そこに近づけるんじゃないか。そう思って技術の向上に取り組んでいる」

なるほど。今の石川は「体」→「心」→「技」。故障に悩まされ、戦線離脱を余儀なくされ、悔しさや情けなさの中から、やっとの想いでカンバックした彼だからこその新しいプライオリティは、とても興味深い。

体が資本。まず健全な心身ありき。その先に技の開花を願う新生・石川遼は、以前より一回り、大きくなったように感じられる。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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