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タイガー・ウッズが復帰戦をドタキャン。 戦線復帰は当面延期。

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
ライダーカップでは元気に副キャプテンを務めたウッズだが、ツアー復帰は延期になった(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

米ツアーの新シーズン開幕戦となる今週のセイフウエイ・オープン(カリフォルニア州ナパ、10月13~16日)で14ヶ月ぶりの復帰戦を迎える予定だったタイガー・ウッズが開幕3日前の10日(米国時間)に棄権した。

米ゴルフ界、世界のゴルフ界が大きな期待を寄せていたウッズの復帰は直前になって延期され、その失望感は多大である。

とりわけ、昨年のほぼ2倍に当たる2万8000枚の入場チケットをすでに完売している大会関係者は大きな衝撃を受けている。

【すべては白紙】

ウッズの直前の棄権の第一報は、米ツアー発ではなく、米ゴルフチャンネルでアナリストを務めるティム・ロサフォルテ氏によって伝えられ、瞬く間に米国の各種ウエブサイトが追随する形で報じた。

ほぼ1か月前の9月7日にウッズが開幕戦で復帰する意志をHP上で明かしたときは、どのメディアも「ブレイキングニュース」と銘打って臨時ニュース扱いで報じたが、この日の棄権のニュースもやはり「ブレイキングニュース」扱い。

ウッズに関しては、出場の意志も棄権の意志もビッグニュース扱いになるのは、言うまでもなく、それだけ各方面への影響力が多大だからである。

ウッズ復帰が伝えられてからというもの、会場周辺のホテルは、わずか3時間で一気に予約が埋まり、空室だった部屋の値段はいきなり2倍前後へ跳ね上がった。 

水曜日に予定されているプロアマ戦ではバスケットボールのNBAのスター選手らと一緒に回ることが決まっていた。

ウッズの好敵手でもあるフィル・ミケルソンは、自身も同大会にエントリーし、米ツアー側に「僕とタイガーを予選2日間、同組にしてほしい。一緒に大会を盛り上げたい」と申し出て、その願いは聞き入れられると見られていた。

すべては、今大会では白紙となった。

【まだ準備不足】

ウッズは昨年8月のウインダム選手権を最後に試合から遠ざかり、2度の腰の手術を受けて、リハビリに専念してきた。

昨季は試合には1つも出ることができなかったが、年間で数回、公けの場で球を打つ姿を見せたことはあった。

4月にジュニア大会の練習場ではビッグドライブを連発し、腰の順調な回復をアピールした。が、その後、自身が大会ホストを務めるクイッケンローンズ・ナショナルのメディアデイでは、短い池越えのパー3で池が越えられず、ショットの不調ぶりはひどいものだった。

セイフウエイ・オープンにエントリーしたことは、苦悩していたショットが回復した証だと見られていた。だが、2週前のライダーカップに副キャプテンとして参加した際、他選手たちから球を打ってみせてほしいと言われたウッズは、それを断り、ショットの回復度を見せることはついになかった。

今回の棄権は、そのライダーカップなどに尽力したこともあって、復帰戦への十分な準備ができなかったようだ。今大会後に出場を予定していたトルコ航空オープンも結局、棄権することになった。

「心の底から考え、迷ったが、米ツアーとトルコでプレーする準備は、まだ整っていない」

午後になってウッズは自身のHPで苦渋の決断について、そう綴った。

米メディアの中には、早々にウッズのこのドタキャンを手厳しく分析した記事を発信した。「大会前週の金曜日にエントリーしておいて、その3日後の月曜日には棄権。これはウッズがもう2度と優勝戦線には戻れないことを示唆している」と、朝令暮改ぶりを自信喪失の反映と指摘しているものもある。

こうした批判や分析も、ウッズの復帰に対する期待があまりにも大きかったことの裏返しなのかもしれない。ともあれ、体があってのゴルフである。まずはウッズの腰とゴルフ、そして心のすべてが戦える状態になることを祈りながら待つしかない。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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