マスターズ2連覇はこのままでは危うい!? ジョーダン・スピースが無駄に奏でる狂騒曲

世界ナンバー1のスピースだが、試合会場では苦渋の表情が続く(写真/舩越園子)

【王者の過敏反応!?】

世界ナンバー1プレーヤー、ジョーダン・スピースの周辺が、このごろ妙に喧(かまびす)しい。

それは、ディフェンディングチャンピオンとして迎える4月のマスターズが近づいてきたからではあるが、人々の間ではスピースの2年連続優勝への期待より不安のほうが膨らみつつある。

スピース本人も、その気配を心のどこかで感じているのかもしれない。SNS上で広がるスピースへの野次に思わずスピース自身がSNS上で反撃に出た。

しかし、スピースの過敏なリアクションは、彼の余裕のなさ、危機感の表われと見て取られ、米メディアはSNS上のやり取りに多大なる興味を示して拡散。

揚句の果てには、ライバルであるはずのローリー・マキロイが見かねてSNS上でスピースを擁護するという展開になった。

何をやっているのだろうか?ゴルフ界を担うべき世界一の王者も彼の周囲も、今、この時期に、こんな狂騒曲を奏でている場合ではないはずだ。

スピースを擁護したマキロイ。野次への対応は慣れているかも(写真/舩越園子)
スピースを擁護したマキロイ。野次への対応は慣れているかも(写真/舩越園子)

【スピースが反撃、マキロイが擁護】

そもそも、スピースが今年もマスターズに勝ちそうな勢いを見せていたら、こんな狂騒曲が起こらなかったことだけは確かだ。が、残念ながら、肝心の彼のゴルフは下降気味ゆえ、野次や誹謗中傷の付け入る隙ができてしまった。

暦が2016年に変わってからのスピースは、ヒュンダイ・トーナメント・オブ・チャンピオンズで優勝したところまでは良かった。

だが、以後は、ぺブルビーチ・ナショナルプロアマが21位、ノーザントラスト・オープンは初日に79を叩いて予選落ち、先週のキャデラック選手権は17位タイに終わり、世界一の名にそぐわない成績ばかりが続いている。

今週、フロリダ州で開催されているバルスパー選手権は、スピースが昨年大会で優勝を遂げ、その翌月にマスターズ制覇、そして年間5勝へ、米ツアー総合優勝へという快進撃の始まりになった大会だ。

今年もバルスパー選手権からスタートダッシュがかかると期待されていた矢先、初日は強風に苦しんだという面もあるにはあったが、フェアウエイもグリーンも5割前後しか捉えられず、5オーバー、76と大きく出遅れた。2日目は3つ伸ばして予選落ちの危機からは逃れたが、週末に大挽回しない限り、今大会の2連覇にはほど遠い。

そんなスピースへの期待の裏返しなのだろうか。それとも「スピースが叩けば、人々が彼を叩く」という単純反応なのだろうか。SNS上では、手厳しいというより口汚い、スピース叩きが始まった。

「パットが入らなければ、ただの人」

「ウエッジゲームはゴミ同然」

「ジョーダンはタイガーじゃない」

「ジョーダンはスランプだ」

「ジョーダンは、もう終わりだ」

放っておけばいいものだが、若さゆえか、焦りゆえか、これを見たスピースは黙って受け流すことができず、「真実からは、ほど遠い話」「ちゃんと調べてから言えよ」などと怒り心頭の様子で反撃。

もちろん、本人が反撃すれば、火に油だ。見かねたマキロイは「ジョーダン・スピースは22歳ですでにメジャー2冠。そう、彼はタイガーじゃないし、スランプじゃないし、終わりじゃない!」と、スピース擁護のツイートを発信した。

増える一方の「お仕事」はどんどん上達。笑顔も見せているが、、(写真/舩越園子)
増える一方の「お仕事」はどんどん上達。笑顔も見せているが、、(写真/舩越園子)

【狂騒曲を奏でている場合ではない】

マキロイが指摘した通り、スピースは「まだ22歳」の若さだ。心技体が不安定になることもあるだろう。気持ちにもゴルフにも、波があっても不思議はない。

昨季のシーズンエンドのプレーオフ4戦のときも、スピースは出だしのバークレーズとドイツ銀行選手権で2週連続予選落ちを喫した。

あのときも「突然のスランプ」と言われたり、猛ダッシュして王座に上り詰めたがために「早くもバーンアウト」等々、いろんな憶測が広まり、誹謗中傷も流れた。

だが、すぐさまプレーオフ3戦目のBMW選手権で調子を上げて13位に食い込み、続く最終戦のツアー選手権では見事に勝利を飾って年間王者へ。成績の波が大きいのは若さの短所だが、すぐさま克服できるパワーは若さの長所でもあると見られていた。

しかし今は、低迷期間がすでに2か月以上続いているため、来たるマスターズを来月に控え、ファンや周囲に不安や焦りが広がり、スピース自身も苛立って見える。

そんな中、世界ナンバー1のスターゆえの「お仕事」は増える一方で、あちらこちらのメディアでの露出は多く、昨今の試合会場で見せる苦渋の表情とは180度異なる笑顔を輝かせている。

あるときは、昨年のマスターズ制覇のための最大のヒントを提供してくれたのは開幕前の水曜日にともに練習ラウンドしたタイガー・ウッズだったという話を、インタビューで滔々と語るスピースの姿を見た。

そうかと思えば、「あの舞台に自分が立つと思うと、信じられない想いに駆られる」とプロのナレーターのようなトーンでスピースが語るリオ五輪のTV中継の告知宣伝が流れる。

しかし、昨年のマスターズの秘話を明かしても、今夏の五輪への意気込みを語っても、やっぱり今のゴルフが上向かなければ、口さがない人々を黙らせることはできないだろう。

SNS上の反撃は、むなしい逆効果になるのがオチ。やっぱりプロゴルファーは“口撃”ではなくゴルフで反撃すべき。

かつて、赤貧に喘ぎながら、黙々とプロゴルファーを目指して歯を食いしばった学生時代を思い出し、初心に戻れば、集中力もゴルフの調子も戻ってくるかもしれない。

下馬評では、今年のマスターズ優勝候補はスピースではなく、ノーザントラストを制したマスターズ2勝のバッバ・ワトソン、あるいは先週と先々週、フロリダシリーズで2週連続優勝を挙げたマスターズ1勝のアダム・スコットと言われている。

プロゴルファーにも感情はある。喜怒哀楽は止められないし、止まらない。けれど、マスターズ連覇を目指す世界ナンバー1よ、アナタは今、SNSに踊らされ、くだらない狂騒曲を奏でている場合ではない。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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