震度7で孤立した北海道、台風被害で足止めの関空 自律とボトルネック解消の大切さ

(提供:自衛隊/ロイター/アフロ)

続発する災害

 この80日間、6月18日に起きたマグニチュード(M)6.1の大阪府北部の地震に始まり、7月七夕前後の西日本豪雨、7月末に逆走した台風12号、7月~8月の記録的な猛暑、9月4日に上陸し高潮と猛烈な風をもたらした台風21号、そして、震度7の揺れが襲ったM6.7の北海道胆振東部地震と、大きな自然災害に繰り返し見舞われました。被災された方々の大変さはいかばかりかと思います。改めてこれらの災害について考えてみたいと思います。大阪府北部の地震は軟弱地盤上に家屋が密集した大都市の弱さを、西日本豪雨は広域同時被災の怖さと水害・土砂災害危険度の高い住宅地の危うさを、逆走台風と記録的猛暑は気候変動と地球温暖化の現実を、台風21号は湾岸低地の高潮・強風の怖さや関空孤立の問題を、北海道胆振東部地震は効率重視の電力供給の脆弱性を、我々に突きつけました。

突然襲った震度7の揺れ

 9月6日午前3時8分に、暫定値ですが深さ37kmを震源としたM6.7の地震が発生しました。近くには石狩低地東縁断層帯がありますが、震源の深さを考えるとこの断層そのものが動いたわけではなさそうです。震源に近い厚真町では震度7の揺れを記録し、震度6強の安平町、むかわ町などで大きな被害となりました。札幌市の震度は東区で震度6弱、清田区で震度5強、厚別区で震度5弱でした。また、新千歳空港のある千歳市は震度6弱、工業都市の苫小牧市は震度5強、鉄の町の室蘭市は震度5弱でした。

 残念ながら、過去の地震と同様、今回も震度7の情報が通信途絶により遅滞しました。災害対応上最も重要となる最激震地の震度情報が地震直後に得られないことは、大きな課題です。震度情報の確実な取得を可能とするため、通信手段の抜本的改善が望まれます。

 今回の震源の近くに石狩低地東縁断層帯などの活断層があり、千島海溝沿いでの巨大地震の発生が懸念されていることから、今後の地震発生にも注意が必要だと思われます。ちなみに、地震調査研究推進本部の地震の長期評価によると、石狩低地東縁断層帯の地震発生確率は、主部ではM7.9程度の地震が今後30年以内に発生する確率はほぼ0%、南部はM7.7程度以上の地震が発生する確率は0.2%以下とされています。

 また、千島海溝沖では、根室沖でM8.0~8.5の地震が発生する確率が80%、M8.8程度以上の超巨大地震が発生する確率が7~40%などと評価されています。

火山堆積物が関係した土砂災害、液状化被害が目立つ

 消防庁によれば、9月9日14時45分現在の死者は厚真町の33人を含め37人、厚真町の心肺停止1人、安否確認中2人などとなっています。家屋被害は全壊32棟、半壊18棟、一部破損10棟と報告されていますが、今後、調査と共に住家被害が増えていくと予想されます。被災された方々が少しでも早く元の生活に戻られることを祈るばかりです。

 この地震で顕著だったのは厚真町を中心とした大規模な土砂崩れです。4万年前に支笏カルデラ噴火で噴出した火山堆積物が強い揺れによって崩れました。前日まで降った台風21号による雨の影響もあったと思われます。

 また、札幌市清田区の美しが丘や里塚で激しく液状化しました。この場所は、支笏カルデラ噴火による火砕流堆積物でできて台地で、侵食によって削られた谷を火山灰で埋め盛土した地域で液状化が発生しました。この場所では、1968年十勝沖地震や2003年十勝沖地震でも液状化しました。改めて、住宅地の地盤条件の大切さが分かります。

ブラックアウトによる全道停電

 この地震で最も印象深いのは、ブラックアウトによる全道停電です。電力供給は需要と供給のバランスをとることが基本です。バランスが崩れると周波数が乱れ、発電施設にダメージを与えるため、発電を停止します。北海道電力は780万KW程度の発電設備を有しますが、内訳は火力が約400万、泊原発が約200万、水力が約165万です。現在は、原発は停止中のため、火力が中心でそのうち165万は震源に近い苫東厚真発電所が占めていました。

 苫東厚真発電所は、最新鋭かつ発電コストの低い石炭火力のため、地震当日はこの発電所だけで全道の消費電力の半分強を賄っていました。苫東厚真発電所には3基の石炭火力がありますが、強い揺れで、2基のボイラーに損傷が生じ、1基はタービン付近で出火しました。供給量の半分を占める発電所の停止で周波数変動が生じ、ブラックアウトしました。

 北海道と本州の間は60万KWの送電が可能な北本連系線で結ばれていますが、効率よく送電するため直流送電をしていました。送電には直流から交流に変換する必要があり、電力が必要になります。このため、ブラックアウト時には、送電ができなくなります。

 電力自由化によるコスト重視が大切とは言え、北海道のように孤立した場所で、消費の半分以上を一か所の大規模発電所に頼るのは危機管理上好ましいこととは言えません。

 火力発電を稼働させるには電気が必要になります。そのため、水力発電所から送電し、古い火力発電所を順に稼働させ、電力を回復しつつあります。現在は綱渡りの状況で、場合によっては、東日本大震災のときのように計画停電が必要になるかもしれません。

停電による被害連鎖

 全道停電により、新千歳空港が閉鎖、JRが運航停止、信号のない道路の渋滞など、交通網が完全にマヒし、北海道は孤立しました。役所や災害拠点病院は非常用発電設備で急場をしのぎました。北海道は、日本の農産物の最大の生産地ですが、電気が無ければ搾乳ができず乳製品も作れません。農作物の仕分けや出荷にも電気は不可欠です。道内の工場も軒並み操業停止に追い込まれました。交通網が途絶すれば農産物や工業製品の輸送もできません。その影響は全国各地に及んでいます。

 現代社会は電気が止まると完全にマヒします。改めて、過度なコスト重視の是非を問い直し、社会の基盤をなすライフラインやインフラの安全性について再考したいと思います。

孤立の怖さ

 規模の違いはありますが、台風21号と北海道胆振東部地震の共通点は、孤立の問題です。関西空港は空港連絡橋だけで陸と結ばれており、その連絡橋が漂流したタンカーによって損傷し、8000名もの人が空港島内に孤立して空港機能を失いました。

 一方、北海道は、青函トンネルや北本連系線のみで本州と繋がっており、新千歳空港が閉鎖され、北海道新幹線が止まったため、550万人の北海道民が孤立しました。

 両災害を教訓に、孤立する恐れのある場所は、様々な対策を施しておく必要があります。

見たくないものも見て、ボトルネックの解消を

 関西空港も北海道も、他との接続が1ルートしかなく、ここがボトルネックとなりました。ボトルネックを事前に把握しその解消を図るのが危機管理の基本です。ですが、経済性や効率性が重視される現代社会では、日常を重視し、非日常に目を瞑りがちです。本来はボトルネックを解消するため、接続部分の強化をしたり、迂回ルートなどを考えたり、孤立化しても籠城できる自律性を持つ、などの対策が必要です。国際空港や電力供給のように、機能停止すると計り知れなく影響が波及するものについては尚更です。

孤立した日本列島のボトルネックを探し持続発展を

 日本は孤立した島国です。西日本を広域に襲い甚大な被害を生む南海トラフ地震が心配されています。万一、南海トラフ地震に関連する情報(臨時)が出され、海外のタンカーが西日本の港湾に入港しなくなったらどうなるでしょうか? 74年前、諸外国から孤立した日本を東南海地震が襲いました。その時の記録や記憶が失われつつあります。今、私たちも新たな試み「戦災で埋もれた「昭和東南海地震」の記録と記憶を後世に残したい」を始めました。過去の災害の教訓を活かし、「見たくないことを敢えて見る」態度で、災害病巣を探し、致命的な病巣を早期に切除・治癒することで、社会の健康を保ち長生きさせていきたいものです。