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majiko、全作詞作曲を自ら手がけたアルバム作品『世界一幸せなひとりぼっち』が解き放つ圧巻の凄み

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
majiko / photo by UNIVERSAL MUSIC JAPAN

●majikoらしい世界観が打ち出され、せつなき感情をキュッと鷲掴みされる感覚が表現された本作

majikoがメジャーデビュー後、2枚目となるフルアルバム『世界一幸せなひとりぼっち』を12月2日にリリースした。本作は、majiko自身が全作詞作曲を手がけた珠玉の11曲が収録されている。

リードチューン「世界一幸せなひとりぼっち」や世界の終わりを妄想した「23:59」、諸行無常を描いた「一応私も泣いた」など“別れ”をテーマにしながらも、majikoらしさ溢れる妖しげなポップソング「神様でもあるまいし」、ポジティヴィティに富んだファンタジックなキラーチューン「グリム」、たどり着いた肯定のナンバー「エンジェルナンバー」など多岐なジャンルに富んだ一枚に仕上がった。ネットシーン発、J-POPフィールドを震撼させたmajikoによる歌のうまさ=ヴォーカリゼーションを堪能できる圧巻のアルバム作品だ。

「フルアルバムで全曲自分で詞曲を書いたのは今回がはじめてでした。自分でも成長を感じとれ、意識も変わりましたね。もっと自信を持っていいんだなっていうか、“わたしだ!”ってやっていいんだっていう。それこそ、欲を全部出しちゃおって思いました。わたしが最初にライブのステージに立った時からギターを弾いてくれている哲ちゃん(木下哲)など、頼れる仲間とずっと一緒に作ってこれたことは精神的にも助かっていますね。」

すべてを解放して生み出すmajikoらしさの決定打となるアルバム作品が本作『世界一幸せなひとりぼっち』だ。本来、majikoにとって2020年は躍進の年となるはずだった。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によってツアーや海外のライブは相次いで中止となり、スケジュールは不安定な状況へと陥った。

「去年、12月に恵比寿リキッドルームでワンマンをやってから早くも1年が経ってしまいました。今年楽しみにしていた中国や台湾でのコンサートも無くなって……。海外に行けなくなっちゃいましたからね。しかも春は自宅待機が続いて……。でも、もともと私は家にいるのが好きだったんですよ。なので、状況はそんなに変わらずともライブが無くなったことで、逆にリスナーの方にどれだけ精神的に助けられていたのかを思い知りました。」

アルバムのタイトルはインパクトある『世界一幸せなひとりぼっち』。majikoらしい世界観が打ち出され、せつなき感情をキュッと鷲掴みされる感覚が表現されている本作。どんなきっかけからこの言葉が生まれたのだろうか。

「亀田誠治さんがプロデュースとアレンジャーを担当してくださったリード曲『世界一幸せなひとりぼっち』は、ふと曲を書いている際に“大事な人との別れ”の歌を書き記しておかないとなって気がついたんです。母が亡くなってもうすぐで6年になるんですけど、そんな気持ちを書きとめておきたいなと。もちろん、いまだに全部は書けないんですけどね。大事な人が亡くなっても、貰った愛や思い出は絶対に消えないということはわかったし、これからも思い続けていきたいという意志を込めました。自分の中で節目というか、ずっと埋まらない溝を曲を通じて少しづつ浄化していければと思ったんです。それがアルバムのひとつのコンセプトになっていますね。」

森でキリンに寄り添うmajikoの姿が神秘的なアルバムのアートワークにも注目だ。ある種、ポリティカル・コレクトネスという、いまの時代の世の中をあらわした表現となっているのかもしれない。

「キリンなんですけど白くて柄がないんです。森の木漏れ日からキリンに模様が生まれているんです。そんな、群れから一匹はぐれてしまったキリンに私が寄り添っているイメージですね。涼しい顔して写っているのですが、現場は真夏で暑くて虫もいっぱいいて大変でした(苦笑)。でも、とっても素敵なアートワークが完成して嬉しかったです。」

2020年。世の中、驚異的なスピードで変化が生まれている。しかし、変わらないものだってある。majikoの楽曲は、そんなあやふやな時代における感情の行き所を思いの強さ、楽曲と重なり合うエネルギーによって羅針盤のように指し示してくれるのだ。

「自分ではまだわからないんですけど、今回のアルバムって統一感あるねって言われて。自分がすべてを書いているからこそ、根本的な核が一緒なのかなと。今年、最近までずっと闇だったんですよ……。でも、光もちょっとはあるなって思えるようになって。今回のアルバムは1曲1曲単体でも聴けると思うんですけど、1曲目を『世界一幸せなひとりぼっち』にしたことで全体通して意味のあるアルバムに変わったんです。漠然とそんな気持ちはあったんですよ。疾走感ある『グリム』もターニングポイントになった曲ですし、ファンキーな『エスカルゴ』や、『一応私も泣いた』、『エンジェルナンバー』も新しい世界観を打ち出せた曲です。ぜひ、サウンドと共に言葉を噛み締めながら全曲じっくりと聴いてもらえたら嬉しいです。」

【全曲解説:アルバム『世界一幸せなひとりぼっち』majiko】

M.1「世界一幸せなひとりぼっち」

作詞・作曲:majiko プロデュース・編曲:亀田誠治

「まずは自分でけっこうアレンジは進めていたんです。途中で、亀田さんにお願いできることになり“この拙いアレンジですがお願いします!”という感じで聴いていただいて。亀田さんはすごいアーティスト想いの方で“ひとりでここまで出来るのはすごい!”と、褒めていただけて。“大事にしたい!”と言っていただけて、そこからものすごくブラッシュアップをしていただけました。“アーティストから生まれたものを僕たちはよりよくするから”と話されていたのが印象的で、感動しましたね。亡くなった私の母との関係性も曲から指摘していただけて。亀田さんのお力で、より一層清らかでクールな世界観となりました。」

M.2「23:59」

作詞・作曲:majiko 編曲:majiko, 木下哲

「アルバムを作っている過程でアッパーな曲が欲しくなったんです。思ったことを素直に書いてみました。早い曲を作るのは得意ではないんですよ。歌うのは好きなんですけどね。でも、ネタが生まれてからは早かったです。歌詞は“世界の終わり”というシチュエーションで。そんな世界観が好きなんです。明日世界が終わるとしたらどうなるだろうなって。私が抱えている悩みや闘争心とか、全部がどうでもよくなるんだろうなって。人類が目指している平等な世界って、一生訪れることがなさそうじゃないですか? はじめて訪れる平等って“死”だと思っていて。それが皮肉なんだけど“世界の終わり”というイメージで。」

M.3「神様でもあるまいし」

作詞・作曲:majiko 編曲:majiko, 木下哲

「スウィングジャズが好きなんです。『パラノイア』からその気はあって『ワンダーランド』を経て、成長してのこの曲ですね。当初はノレるだけの曲にしてみたかったんですけど、アレンジを進めていくうちにサビをもうひとつ作ってみようとなりました。コンポーズ(作曲)を特にがんばった曲です。ピアノの音色ひとつでも作れる曲の幅が変わってくるんですよ。プラグインとかもいろいろ試しました。総じて歌いづらいメロディーを作りがちで、それはどこまでいけるんだろうって挑戦したい気持ちが作曲にはあらわれているかもしれないですね。」

M.4「Once Upon A Time In TOKYO」

作詞・作曲:majiko 編曲:majiko, 木下哲

「アルバムを通して聴いた時に“カッティングの曲が欲しくなるよね”って、哲ちゃん(木下哲)とレコーディング中に話したことがあって。“え、わたし作ったことない”みたいな(笑)。それで出来た曲なんです。アルバムの最後の方に出来た曲なのに、自分なりに完成度がやたら高い作品になったと思っています。歌詞の世界観は男女の歌なんですけど、自分にオカマを宿らせて書いたんですよ。筆が進んで、いいスイッチになりました。サビは、今までは“私”や“君”が多かったんですけど、男女二人のことを第三者目線で歌う曲にしたくって。作っていて超楽しかったです。妄想120%ですね。」

M.5「エスカルゴ」

作詞・作曲:majiko 編曲:majiko, 木下哲

Horn Arrangement:小池隼人, majiko

「私の曲、かっこいいなって(笑)。イントロからAメロからサビまでも絶賛ですね。昨日もエンジニアの方と褒めあっていて。アルバムとして並べて聴くとこの曲の役割、アルバムでの立ち位置が明確にみえてきますよね。『Once Upon A Time In TOKYO』がバチバチな曲なので、ここから次のタームがはじまるというか。熱いことを歌っていますよね。口触りのいい言葉を並べて、言葉遊び、言葉選び。歌っていて気持ちのいい感覚を大事にしています。それこそ2020年の感覚にも当てはまっているなって。どうしても殻にこもらざるえない状況というか。“脱したい”よねえって。時代によって意味が変わってくる曲かもしれない。」

M.6「勝手にしやがれ」

作詞・作曲:majiko 編曲:majiko, 木下哲

「人には渡せない、自分でしか歌えない曲かもしれません。スタッフが気に入ってくれていて。もとはロックな曲だったんですけど、アルバムにあたってゆるくしてみたいねとローファイポップになりました。それこそ、歌詞では女っぽい乙女ツボを刺激したいナンバーで。「春、恋桜。」もそうなんですけど、女性特有の“ふふん”みたいな。なんか女々しさを歌詞にするのが好きで。えっ、生き生きとしているって(苦笑)。ははは、ドキッとする歌詞かもしれませんね。」

M.7「魔女のルール」

作詞・作曲:majiko 編曲:majiko, 木下哲

「この曲は自分よりも年上の女性、私の周りにいた女性の悩みを聞いたり見てきた上で。自分の言葉でまとめて表現した歌詞になりました。音楽って自分だけでない視線や考え方を表現できるので、妄想癖を活かして書いてみました。Bメロで落としてサビでまた戻る展開という、ライブ泣かせな曲ですよね。揺れ動く女心。少女から魔女というか、女から次に進んでいくゆらぎを表現してみたいなと。こういうことを考える女性ってエッチだなって思いますね(笑)。」

M.8「ほしに例えば」

作詞・作曲:majiko 編曲:majiko, 木下哲

「もともとはシンプルなデモ音源だったんです。急遽アルバムに収録出来そうということで、すぐにアレンジしなきゃって。曲自体はけっこう前からあったんです。どんなアレンジにしようかって筋トレしながら考えまして(苦笑)。ザ・コアーズというバンドのとある曲がふと聴こえてきて、こういう世界観いいなって。調べてみたらバイオリンではなくフィドル奏法というのがあるようで取り入れてみました。歌詞はラノベ主人公みたいな感じなんですけど(笑)。落ち着いて聴ける、聴いていて気持ちのいいトラックにしたくて。YouTubeで“フィドルとは?”とか調べたり(笑)。綺麗な美しい曲になったと思いますね。」

M.9「一応私も泣いた」

作詞・作曲:majiko 編曲:majiko, 木下哲

「めっちゃいい曲ですよねえ。だれかが亡くなった時、誰かを失った時。本当に悲しい時って涙が出てこないよねって話していて。今の時代、みんなちゃんと悲しむ時間って取れているのかなと思って。毎日生きるのでせいいっぱいで。悲しみも怒りも全部スルーというか。SNSの投稿を見るように気持ちが効率的に処理されているのかなって。この曲は悲しそうに聴こえるけど、最後にちゃんと悲しめたという締めくくりが大事で。それは私にとって幸せなことなんですね。ちゃんと悲しめる心を持っていて、悲しめる時間、ひとりになれる時間もちゃんと持てたという。ちゃんと次に進めるという前向きな曲なんです。」

M.10「グリム」

作詞・作曲:majiko 編曲:majiko, 木下哲

Steings Arrangement:NAOTO

「超いい曲だよね(笑)。無条件で多幸感いっぱいという。これは私だけの力ではなく哲ちゃんのアレンジが大きくて。アルバムのラストは、この『グリム』なんです。『グリム』で終わった物語を、俯瞰の視点でみて“これでいいんじゃない”って締めくくることができた曲が『エンジェルナンバー』。『世界一幸せなひとりぼっち』に入っている様々な問題提議や極論だったり喜びや悲しみを全部ひっくるめて“あなたはあなたでいて”というメッセージへと帰結するんです。」

M.11「エンジェルナンバー」

作詞・作曲:majiko 編曲:majiko, 木下哲

「第三者目線で書いた曲です。この曲は誰かに向けた応援歌を作りたくて。私でないあなたに向けた曲を作ろうと思ったんです。私はよく同じ数字を見ることが多くて。ふと調べてみたら“エンジェルナンバー”、天使からのメッセージという意味があるそうで。じゃあ、そういう曲にしようと。“天使が見守っているよ”というテーマにして、歌詞で表現してみました。歌詞での“Just be as you are”=“そのままで”という言葉は、歌い触りも良くて。思い入れが強いというか頑張って作った曲ですね。あ、全部頑張っているんですけどね(笑)。不安定な世の中だけど、もっと肩の力を抜いてみてもいいんじゃないかなと。」

majiko『世界一幸せなひとりぼっち』 / photo by UNIVERSAL MUSIC JAPAN
majiko『世界一幸せなひとりぼっち』 / photo by UNIVERSAL MUSIC JAPAN

majikoオフィシャルサイト

https://www.majiko.net

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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