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TikTokで人生変わった令和世代 vol.1 〜りりあ。、ひらめ、もさを。〜

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
TikTok(写真:ロイター/アフロ)

●人気曲を紐解くことで“人と生活”がみえてくる

2020年を振り返るとTikTok発のヒット曲がとても印象的な1年となった。かつて、CDセールスを主戦場とした音楽マーケットは大手事務所や芸能界によってプロデュースされたアーティストが多かった。しかし、時代の変化なのだろう、TikTokといった新たなプラットフォームの出現により、自然発生的に拡がりをみせるインディペンデントな出自となる次世代音楽クリエイターの活躍が目立った1年となった。

コロナ禍の影響もあったかもしれない。今年前半は政府による外出自粛要請(=STAY HOME)を余儀なくされる生活によって、持て余した時間を創作活動に割いたクリエイターは多かった。

世の中で流行っているポップミュージックとは時代を移す鏡であり、人気曲を紐解くことで“人と生活”がみえてくる。三密を避け、人が気軽に出会えなくなり、マスクで表情がわかりにくくなる等、人との”距離を感じる時代”へと変化した2020年。そんな時、ぽっかり空いた心のスキマを埋めてくれたのが人に寄り添うラブソングだったのかもしれない。暖かみのある歌声やストレートかつキャッチーなメロディーを持つ楽曲が時代に求められている。

●二次創作物がバズりやすい構造を持つTikTok

TikTokが持つレコメンデーションのシステムが時代にハマったという側面にも着目したい。TikTokは、TikTokerとも呼ばれるようになった人気クリエイターが動画内で楽曲を使用したり、カバーしたりすることでミーム化、いわゆる二次創作物がバズりやすい構造を持つ。しかも、カバーされた楽曲のタイトルが表示され、かつそのオリジナル楽曲を軸にカバーされた楽曲をTikTokというプラットフォームで一覧表示できることから連鎖が起こりやすい。カバーといっても“カップル動画”、“ダンス動画”、“弾き語りカバー”などたくさんの種類の動画投稿がある。表現の自由度も高く音楽のみならず、千差万別のおもしろさなのだ。

TikTokが一大ブームを起こした理由。それは、ユーザーが求める令和時代のエンタテインメントの“心地良いテンポ感”と一致したためだ。こうして、新たな表現者に日の当たる場が生まれた。そんなTikTokの登場によって人生が変わった要注目アーティストに「あなたにとってTikTokとは?」と、聞いてみた。

●あなたにとってTikTokとは? 〜りりあ。、ひらめ、もさを。〜

トイズファクトリーの新レーベル・VIAよりメジャーデビューが発表されたばかりの次世代シンガー・りりあ。による「浮気されたけどまだ好きって曲。」の登場は衝撃的だった。顔出しをしないで、淡い明かりの下で弾き語りされる魔法めいた歌声の魅力。浮気をテーマに諦めきれない恋心を歌った、せつなさでいっぱいのラブソングだ。TikTokでバズり、YouTubeで拡散され、サブスクリプションサービスで配信がスタート。LINE MUSICのリアルタイムチャートで現象が可視化されるというTikTokヒットの法則を定着させた。

りりあ。(写真: 石丸敦章)
りりあ。(写真: 石丸敦章)

「TikTokは私にとって家みたいなものなので、それがなくなったらなんにもできない。TikTokがなくなったら音楽もやめちゃうかもしれないって思ってます。」(りりあ。)

“ポケットからきゅんです!”というキャッチーなフレーズと、親しみやすい楽曲の世界観。真似のしやすい指ハートを使ったポーズが中高生を中心に受けているのが、ひらめによる「ポケットからきゅんです!」だ。楽曲に登場する“きゅんです”は、ティーン世代を中心に圧倒的知名度を誇り、年に一度のTikTokクリエイターの祭典「TikTok CREATOR'S LAB. 2020 -REFLECTIONS-」における『TikTok流行語2020大賞』でも話題となり、あらためて評価されたナンバーだ。

ひらめ(写真: 石丸敦章)
ひらめ(写真: 石丸敦章)

「無かったら困りますね。TikTokは日常にあるものです。」(ひらめ)

もさを。は、年齢も出身も非公開。しかしながら、肩の力が抜けたほんわか暖かみのある優しい歌声が、距離を感じる時代に“距離感が近い”と人気の秘訣だ。注目ポイントは歌詞。人気曲「ぎゅっと。」では女子目線で歌われるなか、“私”と“あたし”を使い分けることで、“私”が自分の気持ちで“あたし”が彼に対する気持ちを代弁している。ちょっとした漢字の使い分け方、言葉の使い分け方へのこだわりがグッとくるのだ。

もさを 。(写真: もさを)
もさを 。(写真: もさを)

「僕の作る曲がこういうものだよって、周りに広めることができたので、作って良かったです。TikTokはたくさんの方が一つの場所に集い、笑いや時には感動を与える場所だと思っています。もっとより多くの方に僕の歌を届けられるよう、良い曲を作っていきたいです。これからは、聴き手一人ひとりが違う想いで聴くと思うので、感性のまま赴くまま僕の歌を感じて楽しんで欲しいです。」(もさを。)

vol.2はこちら

『TikTokで人生変わった令和世代 vol.2 〜Tani Yuuki、うじたまい、まつり、sui〜』

https://news.yahoo.co.jp/byline/fukuryu/20201216-00212772/

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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