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平成を小室哲哉作品で振り返る 〜「EZ DO DANCE」、「Feel Like dance」など

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
小室哲哉:写真提供 エイベックス

【特集2】新元号“令和”に改元されて早1ヶ月。今年の上半期は、たくさんのテレビ番組やラジオ、ネットなどで音楽家 小室哲哉が生み出したサウンドが鳴り響きました。

TM NETWORK、trf、安室奈美恵、H jungle with t 、globeなどなど、TKソングとして思い出されるのは、誰もが自分の主題歌となる“時代のテーマソング”です。昭和から平成、そして令和へ。音楽はタイムマシーン。人ぞれぞれの記憶と結びつき、物語を奏でる“鍵となる”存在ということでしょう。

小室哲哉が音楽シーンへ与えた影響は大きいです。TM NETWORK時代に楽曲構成や転調など、アニメソングのあり方を変えた「Get Wild」、「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」のヒット。1974世代のユースカルチャーを変えた映画『ぼくらの七日間戦争』主題歌「SEVEN DAYS WAR」と、その傑作サウンドトラック。

TMファミリーとも言える、バンドのサポートメンバーから派生した、B’z ~ FENCE OF DEFENSE ~ accessを生み出したフックアップ構造にも改めて着目したいです。今や日本を代表するロックバンドとなったB’zのはじまりは、TM NETWORK、そしてTKサウンドから生まれていると言っても過言ではないでしょう。

X JAPANのYOSHIKIと結成したジャンルを超えたプレミアムユニットV2の意義。さらに、自身がアーティストとしてサウンドクリエイターとして作詞作曲編曲を一貫して手がける元祖トラックメーカーとしての活動スタイル。プロモーションやビジュアルまで手がける音楽プロデューサー手腕。楽曲制作においても近年話題のマックス・マーティンの“トラックアンドフック”に先駆け、シンクラビアなどハードディスク・レコーディングにいち早く取り組み、楽曲パーツを組み替え複数作家による分業制作を取り入れた共同制作。

テクノポップ、ユーロビート、ハウス、レイヴ、ジャングル、R&B、ヒップホップ、トランス、EDMなど、海外で流行するダンスミュージックを日本のポップシーンへ独自のセンスで翻訳したオリジナリティ高いヒット曲の提示。

アイドルをアーティスト化するプロデュース方法。EOSシリーズ(YAMAHA)という、売れに売れまくった伝説的シンセサイザーのプロデュース、その影響から誕生した数々のキーボード奏者&次世代トラックメーカーたち。さらに、インターネット黎明期にいち早く手がけたホームページ運営、フリーダウンロード施策など、インターネットの活用の先駆者でもありました。何より、今もなお歌い継がれる数々の名曲たち、などなどTKについて語り始めると伝説的逸話が止まりません。

というわけで、令和でも聴き続けていきたいTKソング。今回は、“K”版に注目していきましょう。そして、小室さんの帰還を待ち続けたいと思います。

小室哲哉作品集『TETSUYA KOMURO ARCHIVES K SELECTION』

TETSUYA KOMURO ARCHIVES K SELECTION:写真提供 エイベックス
TETSUYA KOMURO ARCHIVES K SELECTION:写真提供 エイベックス

01. trf「EZ DO DANCE (7" MIX)」 [1993年6月21日]

エイベックスの歴史を変えた楽曲。ダンスミュージックをJ-POPとして一般化した、BPMが早くて音数が少なく歌える、時代のターニングポイントとなったナンバー。ダンサーやDJがユニット・メンバーの一員であり、見せ場を作るプロデュースワークも発明だった。シンプルにキックありきの、テクノとして削ぎ落としたサウンドワークへのこだわりに注目。

02. H jungle with t 「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント "TWO Million Mix"」 [1995年3月15日]

松ちゃんが著書『遺書』を200万部売っていたので、それを越えようと“2 Million Mix”とネーミング。90年代を代表するヒットに。一世風靡していたダウンタウンという芸人パワーとフジテレビのバックアップ、そこにジャングルという斬新なサウンドを取り込みフォーキーな歌詞にのせて浜ちゃんが歌うプロデュースワークの凄さ。女性目線ゼロなナンバー。

03. hitomi 「CANDY GIRL」 [1995年4月21日]

実はデビュー曲より前に、最初にhitomiのために書かれたナンバー。社会現象になりつつあった渋谷を、渋谷で遊んでいる女の子を象徴する曲をイメージ。最高位15位と、チャートTOP10入りこそしていないが、ロングヒットし誰もが知る楽曲に。“CANDY GIRL”のタイトルは、hitomiのダイアリーの中に書かれた言葉だった。耳に残るイントロも秀逸だ。

04. 翠玲 「恋をするたびに傷つきやすく・・・」 [1995年7月19日]

秋元康原作のアニメ『ナースエンジェルりりかSOS』主題歌。中国と日本のハーフで大陸感覚を持っていたシンガー。小室がアジアをマーケットとして意識しはじめた時代に、ディスコ的なガールズ・グループB.C.G.からEUROGROOVEのフィーチャリングに大抜擢。ワールドワイドなユニット、EUROGROOVE「RESCUE ME〜奪回愛恋〜」にも注目してほしい。

05. globe 「Feel Like dance」 [1995年8月9日]

trfを超えるプロジェクトを目指して制作。イントロ〜Aメロ〜Bメロ、考えぬいた展開の多いジェットコースター・ソング。小室が持つヒットの方程式、すべてを当てはめたという。小室ソロ・パートがあったのは、未知数だったKEIKOとMARCの負担を減らすためのイメージの分散でもあった。10代だけでなく、大人が聴いても楽しめるユニットを目指した。

06. 倖田來未 & BoA 「the meaning of peace」 [2001年12月19日]

アメリカ同時多発テロ事件を受けて小室哲哉と松浦勝人が立ち上げたチャリティープロジェクト『songnation』からの選曲。倖田來未とBoAのデュエットによる軽快なビートが耳に優しいポップチューン。歌声と呼応するかのようなループを繰り返す、魔法めいた祈りのようなシンセリフが印象的だ。テーマは、世界の平和と子供たちのためのチャリティーCD。

07. 伴都美子 「again」 [2002年1月23日]

アメリカ同時多発テロ事件を受けて小室哲哉と松浦勝人が立ち上げたチャリティープロジェクト『songnation』からの選曲。Do As Infinityのボーカリスト伴都美子による、力強いメッセージを感じさせる歌声がTM NETWORKを彷彿とさせるミドルでふんわりと展開する優しげなビートと絡み合う。テーマは、世界の平和と子供たちのためのチャリティーCD。

08. 持田香織 「in case of me」 [2002年1月23日]

アメリカ同時多発テロ事件を受けて小室哲哉と松浦勝人が立ち上げたチャリティープロジェクト『songnation』からの選曲。Every Little Thingのボーカリスト持田香織による、中期globeを彷彿とさせる疾走感溢れる光を感じさせるトランス風に展開していくポジティビティ強いアッパーチューン。テーマは、世界の平和と子供たちのためのチャリティーCD。

09. HΛLNA 「DO OVER AGAIN」 [2002年1月23日]

アメリカ同時多発テロ事件を受けて小室哲哉と松浦勝人が立ち上げたチャリティープロジェクト『songnation』からの選曲。HΛLのボーカリストHΛLNAによる、クラシックをリファレンスとしたかのような荘厳な雰囲気を淡く優しく伝えるまばゆい光を感じる永遠と運命を描いたポップ・バラード。テーマは、世界の平和と子供たちのためのチャリティーCD。

10. AAA 「逢いたい理由」 [2010年5月5日]

AAAの24枚目のシングル。小室もお気に入りだというナンバー。本作以降、曲提供では編曲から離れ作曲数が増えていく。歌あたまからのはじまり、切なさでいっぱいのAメロ、畳み掛ける日高光啓によるラップ。サビでの解放感でいっぱいのインパクト強い攻めまくりの、狙いに狙った快楽ポイント高いポップチューン。結果、チャートでの反響も上々だった。

11. 北乃きい 「花束」 [2010年8月11日]

女優として、アーティストとして成長を続ける北乃きいとのコラボレーション。フォーキーに、少し懐かしさを感じる唱歌テイストの歌メロに絡み合う、デジタル・ポップとアナログの融合サウンドが耳に優しい。AAA、森進一に続く復帰第3作目となる、疲れた心を癒してくれる応援ソング。後半コーラスパートでの盛り上がり展開は小室サウンドの真骨頂だ。

12. 浜崎あゆみ 「crossroad」 [2010年9月22日]

シングル「a song is born」から約9年ぶりに小室が作曲を担当。ストリングスが熱量を煽る、内に秘める想いと向かい合う情熱的なナンバー。“大人になること”をテーマに自問自答するロックバラード。カップリングではTM NETWORKの「SEVEN DAYS WAR」をカバー。国立代々木競技場第一体育館で、7日間連続でライブを行ったことにもかけられている。

13. 小室哲哉 「Vienna feat.Miu Sakamoto & KREVA」 [2011年5月4日]

タイトルViennaとはオーストリアの首都ウィーンのこと。TKテーマソングとも言えるナンバー。坂本美雨が華麗なコーラスを歌い、小室が自らを象徴するキーワード‘I’m just a music storyteller”とメロディアスに語りかけ、KREVAが“シンセサイザーはタイムマシーン”と畳み掛けるように印象的なフレーズをラップする、アイキャッチ感の強いナンバー。

14. X21 「約束の丘」 [2016年3月30日]

オスカープロモーション主催『全日本国民的美少女コンテスト』ファイナリストで構成された女性アイドル。“目指せ!『国民的ソング』宣言”という声明文がWEBにアップされ発表された小室提供曲。畳み掛けるような心情の発露、心がスカッと弾けるシンセリフと絡み合うメッセージの強さ。歌詞、曲、アレンジを小室自ら手がけた、情報量の多いナンバー。

15. Tetsuya Komuro × Tsunku♂ feat. May J. 「Have Dreams!」 [2016年4月15日]

May J.がMCを担当するNHKワールドTV『J-MELO』平成28年度オープニング曲としてタイアップ。全世界で流れるチャンネルということもあり、様々な国のリスナーに伝わるメロディーをこだわったという。作詞はつんく♂。どの国で聞いても、自分の国の音が聴こえてくるようなイメージ。ゴスペル風だが、デモ音源ではよりゴスペル風だったという。

16. BiSH 「earth」 [2016年5月4日]

楽器を待たないパンクバンド、BiSH。小室が楽曲提供し、小室を敬愛する松隈ケンタが編曲&プロデュースを手がけている。結果、BiSHらしい疾走感に溢れるTK初のハードコアなパンクチューンとなった。所属事務所WACK 、BiSH名物マネージャー渡辺淳之介がTKファンでありエイベックス好きであったことが、無茶なプロジェクトの実現に起因している。

17. Def Will 「Lovely Day」 [2016年7月2日]

小室哲哉、最後のトータル・プロデュースとなった5人組ガールズ・グループ。プロローグ・シングルとなった指針を示すかのような「Lovely Day」は、第23回 東京ガールズコレクション2016 AUTUMN/WINTER テーマソングに起用。タイで制作された明るくキャッチーなガールポップ・ソング。ラップパートは、Zeebra監修というレジェンド共作が実現。

18. 大森靖子 「POSITIVE STRESS」 [2016年10月26日]

楽曲提供のきっかけは大森がTKファンだったことから。ライブハウスでglobeなどTKソングを中心にカバーバンドをしていたことも。富士山麓と渋谷でロケが行われたMVは、TK作品を多く手がけたクリエイター、武藤眞志によるもの。小室は“大森靖子を大切に扱っていかないと日本の音楽業界はめいっぱい遅れをとるだろう。”とコメントしている。

19. PANDORA feat. Beverly 「Be The One」 [2018年1月24日]

TK最後の参加ユニット。『仮面ライダービルド』主題歌。初のお披露目はフェス『Ultra Japan 2017』だった。サプライズでBeverlyが登場して「Be The One」フル・ヴァージョンを歌唱した感動。1984年からシンセサイザーを駆使したエレクトリック・ダンス・ミュージックを最前線でやり続けてきた先駆者、真骨頂となるダンサブルなポップ・チューンだ。

20. TETSUYA KOMURO feat. Beverly 「Guardian」 [2018年6月27日]

現時点でのTKラスト・ナンバー。フルオーケストラによる壮大な旋律を彩る世界観の大きなバラード。本作は、スマートフォン向けMMORPG『ガーディアンズ』の主題歌。小室はゲームのBGM となる28曲の楽曲提供も担当。小室が歩んできた70年代から現在へのヒストリー、音楽家としてたどり着いた境地の重さを感じる美しき集大成となった楽曲だ。

※小室哲哉作品集『TETSUYA KOMURO ARCHIVES K SELECTION』は、iTunesやApple Music、Spotify、LINE MUSIC、YouTube Musicなど、各種ストリーミングサービスで配信中。

次回予告:小室哲哉作品集『TETSUYA KOMURO ARCHIVES EX』版について語ります。

小室哲哉オフィシャルサイト

https://avex.jp/tk/

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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