”平成”を小室哲哉作品で振り返る ~ 「survival dAnce」「DEPARTURES」など

小室哲哉:写真提供 エイベックス

新元号“令和”の発表。施行される2019年5月1日へ向けて、平成リバイバル・モードはより加速しています。平成の音楽シーンといえば小室哲哉の存在は欠かせません。TKヒッツの名の下に、誰もの心に残る音楽文化を築きあげ、たくさんの歴史的名曲を生み出してきました。

音楽家、小室哲哉は文化を作りました。

自身のユニットTM NETWORKやglobe、H Jungle With t、PANDORAでの活躍。時代の鏡となるアイドルへの楽曲提供。1998 FIFAワールドカップでジャン・ミッシェル・ジャールと共に100万人と向き合ったエッフェル塔前でのプレイ。そしてプロデューサーとしてマジックを起こし続けてきた篠原涼子、trf、hitomi、安室奈美恵、華原朋美、dos、鈴木あみ、AAA、Def Willなど、音楽だけでなく、時代を代表するライフスタイルを数々の作品を通じて提案し続けてきたのです。

TKソングとして思い出されるのは、誰もが自分の主題歌となる“時代のテーマソング”です。音楽はタイムマシーン。人ぞれぞれの記憶と結びつき、物語を奏でる“鍵となる”存在ということでしょう。

その間、音楽シーンはレコード~カセットテープ~CD~MD~ダウンロード配信~ストリーミングと、昭和から平成にかけて、テクノロジーの進化とともに受け皿となるフォーマットが変化してきました。

思い出せばかつて、音楽を収集したり聴くことは多くの障壁がありました。レア盤がプレミア化するなど、たくさんの音楽を聴く=お金のかかる教養、セレブリティな嗜みだったのです。

しかし、現在では誰もがスマホという音楽プレイヤーをパーソナルに持つ時代。SpotifyやApple Music、LINE MUSIC、YouTube MUSICなど、音楽ストリーミング・サービスによって膨大なアーカイヴ楽曲が解放された2019年。その障壁は定額制音楽サービスの到来によって確実にターニングポイントを迎えました。しかし、膨大な音楽に触れられる環境であるがゆえに、音楽を聴くモチベーション、そして羅針盤となる指標があらたに求められる時代となりました。

筆者は1976年生まれ。音楽文化が一般的に大ブームとなった90年代シングルCD全盛期を思い出します。

音楽雑誌やテレビ番組で好きになったCDを購入やレンタルしたり、カセットやMDへダビングして友人と共有したり、中古屋さんでCDやレコードの宝探し、レンタル落ちの中古品を購入してみたり……。あの頃ゲットしたお宝曲はもちろん、お小遣いが足らなくて買えなかったアノ曲……。今こそ聴きたい、大人になったからこそ楽しめるナンバーなど、たくさんの発見がストリーミング時代をきっかけに復権しているのです。

かつて、紙媒体がメインであった音楽メディアでは音楽を実際に聞くことはできませんでした。ゆえに、評論やレビュー、インタビューなどテキストによる解説文化が発達したのです。現在、リアルなショップへ行かずとも音楽を聞きながらレビューや評論などを楽しめる時代がやってきました。いやぁ、ほんとに今小中学生だったら音楽好きはどれほど楽しいことか……。そんなことをしみじみと思います。

そこで、平成ラストへのカウントダウンの口火が切られた今こそ、作詞・作曲・編曲、ミックスなどの音楽制作はもちろん、トラックメーカー文化を生み出し、かつ自らプレイヤーでもあり、時にはアートワーク、ミュージックビデオなどのヴィジュアルやブランディング、宣伝プランをもコントロールしてきた驚異のプロデュース・ワーク。歴史上類をみない90年代音楽最盛期を牽引し、CD総売上枚数1億7千万枚以上を記録するなど、平成を代表する時代の寵児であり、前人未到の音楽家人生を歩んできた小室哲哉の足跡を、2019年4月10日に配信がスタートした『TETSUYA KOMURO ARCHIVES T SELECTION』とともに振り返ってみたいと思います。

今回は、まず“T”版に注目していきましょう。

小室哲哉作品集『TETSUYA KOMURO ARCHIVES T SELECTION』

TETSUYA KOMURO ARCHIVES T SELECTION:写真提供 エイベックス
TETSUYA KOMURO ARCHIVES T SELECTION:写真提供 エイベックス

01. trf「survival dAnce ~no no cry more~」 [1994年5月25日]

1994年TMN終了後、初作品。歌詞のわかりやすさ、歌いやすさ、盛り上がりやすさに注力。ヒットチャートをターゲットに最大公約数に刺さった最強ポップ・ナンバー。イントロのフックでどれだけ多くの人の心を捉えられるかにこだわったという。内田有紀主演ドラマ『17才-at seventeen-』主題歌となり、目指していたトレンド参入への成功。TKブーム前夜。

02. globe「DEPARTURES -RADIO EDIT」 [1996年1月1日]

globe最大のヒット曲。雪の中を走る新幹線という、CM映像からインスパイアされて作ったロック・テイストなバラード。ペンタトニックを用いた独特なオリエンタル感、ディティールを描いた歌詞が場面展開で機能的に作用。1行ごと、キャッチコピーのように鮮烈な歌詞を分散型に羅列することで、人によって自分ごとになる共感フレーズを与えることを意識。

03. H Jungle With t「FRIENDSHIP」 [1996年4月24日]

H Jungle With t、3枚目となった現時点でのラスト・シングル。日本テレビ系ドラマ『竜馬におまかせ!』主題歌。クイーン「ウィ・ウィル・ロック・ユー」風のイントロでの遊び心。歌詞のテーマは“普遍的な友情”。吉田拓郎を敬愛する、小室による切ないメロディー展開がフォーク・テイストを感じさせる。TDが前2作はロンドンだったが、本作はLAで実施。

04. hitomi「In the future」 [1996年5月22日]

TKらしい未来志向なポップ・チューン。20歳になったばかりのhitomiによる、ノートにメモしていた言葉を活用した、渋谷にいそうな女の子のテイストを作品化。20年以上を経て、小室最後のプロデュースによるガールズ・グループ、Def Willがアルバムでカバー。その普遍性ある世界観の描き方、今でも通用するフレッシュでポップな表現に驚かされる。   

05. 大賀埜々「Close to the night -Straight Run」 [1996年9月18日] ※初配信

『TBC the SUPERLADY CONTEST』グランプリを受賞、TKプロデュースでデビュー。詞曲は小室と盟友である木根尚登との合作で制作。芸名は小室が姓名判断で付けたという。パーカッションが醸し出すアナログ感、アコースティック・ギターによる切ないフレーズ、シーケンスによるドラマティックな雰囲気がクセになる中毒性高いポップチューン。

06. taeco「deep GRIND -STRAIGHT RUN」 [1997年4月16日] ※初配信

Ram Jam Worldなど渋谷系を感じさせる、ドラムンベース調の難解かつシンプルな構成が独創的なオトナのポップチューン。MARCによる歌詞がTKファミリーにおいて驚くほどにセクシー。ヴォーカルは、dosセンターであり、元アイドルとして活動していた西野妙子。本人写真を起用せず、アート・テイストなイラストによるアートワークも印象的だった。

07. AN-J「笑顔が見える場所~I WANNA GO~」 [1999年5月19日] ※初配信

ヴィジョンファクトリー所属の本格派3人組R&Bガールズ・グループ。アン・ヴォーグやエターナルを意識したグループの世界観が明快でクール。本作は、華原朋美が1997年にリリースした「I WANNA GO」を、大人風味マシマシでカバー。アレンジ含め、聴き比べるのも楽しい。TBS系ドラマ『週末婚』主題歌に起用されたことで、知っている人も多い。

08. BALANCe「GET INTO YOU SUDDENLY Straight Run-」 [2000年10月12日] ※初配信

3人組ガールズ・グループを、プロデューサー・ユニットtatsumaki名義でDJ DRAGONとプロデュース。クラシック・テイストとR&Bとの融合。メロディーの神々しさなど、こだわりの1曲だった。2014年、ソロ・アルバム『TETSUYA KOMURO EDM TOKYO』ではEDM風にセルフカバー。沖縄で開催された『Rendez-vous in Space 2001』にも参加していた。

09. 浜崎あゆみ & KEIKO「a song is born」 [2001年12月12日]

9.11、アメリカ同時多発テロを受けてエイベックス松浦勝人と立ち上げたチャリティ・プロジェクト『songnation』から生まれた曲。世界貿易センタービルで、小室の親戚が働いていたこともあり、他人事ではなかったという。歌詞は、浜崎あゆみが世界平和について書いた。あゆがglobeをリスペクトしてくれていたことから生まれたというKEIKOとの共演。

10. a-nation's party「THX A LOT (Album Version)」 [2011年5月4日]

エイベックス松浦勝人と小室の共同プロデュースで制作された『a-nation』公式テーマソング。TRF、hitomi、Every Little Thing、浜崎あゆみ、Do As Infinity、倖田來未、大塚 愛、鈴木亜美、AAA、GIRL NEXT DOOR、ICONIQという11組のアーティストが参加。作詞は小室みつ子。穏やかな雰囲気で感謝を歌うナンバー。『a-nation'10』でライブでも披露された。

11. AAA「Charge & Go!」 [2011年11月16日]

AAA 30枚目のシングル曲。バラード・テイストではじまり、途中、アッパーなEDMテイストにテンポアップ。SKY-HIとして活躍する日高光啓によるラップパートにも注目。ライブで先行披露されたナンバーであり、ファンのリクエストによってCD化&ミュージックビデオ化が決まった。タイトルでリンクする通り『ウイダーinゼリー』キャンペーン・ソング。

12. TM NETWORK「I am」 [2012年4月25日]

TM 30周年へ向けて、武道館公演に合わせてリリースした再起動曲。アートワークは宇宙船をイメージ。テーマは“人間らしくあること”。MVでは宇宙人である3人が“潜伏者”として地球で生活する様が描かれている。ギターは元リンプ・ビズキットのマイク・スミス。“大国のトップがシャウトしたってほとんど世界はほほえまないから”のフレーズが刺さる。

13. 浜崎あゆみ「You & Me」 [2012年8月8日]

ベスト・アルバム『A SUMMER BEST』と、14枚目のオリジナル・アルバム『LOVE again』に収録された軽快なEDMビートが心地いいサマーポップ・チューン。“あの夏の想い出は 今もまだ鮮やかなまま いつだって思い出すなら あなたと2人がいい”という切ない歌詞が胸に響く夏の定番曲。アウトロ45秒で、ピアノバラード状態になる瞬間が愛おしい。

14. SUPER☆GiRLS「Celebration」[2013年2月20日]

イントロから加速する切なさの波は“TKらしさ”でいっぱいだ。アルバムに先駆け無料配布された作品の“Song by iDOL Street All Members”ヴァージョン。当時、アイドル提供曲はアレンジを編曲家に委ねることが多かったが、小室がアレンジを担当した「Celebration-超絶バージョン-」が、アルバム『Celebration』のボーナストラックへ収録されている。

15. 小室哲哉「The Generation feat. Zeebra, DABO, SIMON」 [2013年3月6日]

収録ソロ・アルバム『DEBF3』は英語詞中心だったが、本作は日本語ラップがメイン。サビでの優しさ溢れるシンセポップなパートと、“Generation”を問うZeebra、DABO、SIMONによる攻撃的なラップとの対比に注目。アレンジ含め、完成度の高いファン以外にも届けたいナンバー。英国出身の音楽プロデューサー、ニック・ウッドがプロデュースで参加。

16. 小室哲哉 vs ヒャダイン「22世紀への架け橋」 [2013年12月4日]

『トヨタ WISH presents 白黒歌合戦』をきっかけに結成したユニット。イントロからtrf最初期のナンバー「LET'S 5 DANCE」のサンプル・ヴォイスを起用するなどマニアックな展開。小室が開発に携わったEOS B700でシンセサイザーに目覚めたヒャダインとの師弟コラボ。“TKらしさ”でいっぱいの、宝箱をひっくり返したかのようなメロディアスな展開。

17. 小室哲哉「EDM TOKYO 2014 feat. KOJI TAMAKI」 [2014年4月2日]

アヴァンギャルドなオリジナルEDMチューン決定版。TKが攻めている。シンセリフで成り立つEDM構成に負けない、日本を代表するシンガー、玉置浩二によるヴォーカルの力強さを武器に。“花が咲く様に、鳥が羽ばたく様に...”という歌詞から伝わる、人間にできるのは笑って涙を流す事だという熱い想い。1958年生まれ、同じ歳の表現者による奇跡の融合。

18. DIVA「DISCOVERY」 [2014年10月8日]

AKB48グループ初の小室プロデュース作品。ユニット・コンセプトは、AKB48初ダンス&ヴォーカル・ユニット。懐かしさという俯瞰視点によるJ-POPを意識した“TKらしさ”を求められた楽曲制作。キャッチコピーは“愛は大きな可能性を発見させてくれる。”。カップリングでは「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~」のカバーも収録。

19. 小室哲哉 feat. 神田沙也加 (TRUSTRICK) & tofubeats「#RUN」 [2015年12月23日]

年末フェス『COUNTDOWN JAPAN』対談取材ではじめて出会ったというtofubeats。さらに神田沙也加をヴォーカルに迎えた3人組ユニットの結成。職業作家として創作イメージを膨らましたポップチューン。本作でも普遍性をテーマに、古くならない言葉の選び方を意識して歌詞を書かれている。アレンジをtofubeatsが手がけていることにも注目したい。

20. Dream5「futuristic」 [2016年2月24日]

“Carry on”という、小室が大事にしているフレーズからスタートする、未来志向のポップチューン。Dream5の3枚目のミニアルバムにしてラスト・アルバムとなった『COLORS』収録曲。カバー曲を除いては、Dream5で最初で最後のTKプロデュースによる提供楽曲となった。間奏での浮遊感あるコーラスワークと絡み合うシンセ・フレーズが気持ちいい。

※iTunesやApple Music、Spotify、LINE MUSIC、YouTube MUSICなど、各ストリーミングサービスで配信中

https://open.spotify.com/album/0lymnM5JdGUZ5fPTaHZiqh?si=GGDVnE-7TVG_pQbYGjSmmQ

https://itunes.apple.com/jp/album/tetsuya-komuro-archives-t-selection/1458579346

https://music.line.me/album/mb0000000001878d31

https://music.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mSOkJXEj-K4rsXlt6F8Va0GS2LsbpDgac

次回予告:小室哲哉作品集『TETSUYA KOMURO ARCHIVES K SELECTION』版について語ります。

小室哲哉オフィシャルサイト

https://avex.jp/tk/