夏フェスサマソニで注目したい、ポップミュージックを革新する魔法めいた音楽集団LILI LIMIT

LILI LIMIT(カメラマン:永峰拓也)

都市型夏フェスの代表格『SUMMER SONIC 2016』が、今週末8月20日(土)、21日(日)に開催される。国内外合わせてカッティング・エッジなアーティストが多数出演する夏フェスにおいて、注目したいのが20日(土)の朝いち10時20分にSONIC STAGEに出演するLILI LIMIT(リリ・リミット)だ。

魔法めいたアレンジのちから、言葉によって彩られる映像が浮かぶ音楽の可能性。規定外のサウンドを奏でる、右脳(感覚)をつかさどる牧野純平(Vo.)と、左脳(構築)を担当する土器大洋(Gt.)を中心に活動する平均年齢20代前半の男女5人組バンド。

7月13日(水)にリリースしたメジャーデビューEP『LIVING ROOM EP』では、作品テーマを“日常”に設定。「Living Room」、「Kitchen」、「Unit Bath」、「Bed Room」といったタイトル通り、“家から一歩も出ず”に、日本語詞で独特なる物語性を解き放つ。洗練されたアートワークのセンスからも、現代アート的な気づきポイントのユニークさを感じさせてくれる。海外の第一線で活躍するポップミュージック・バンドともシンクロニシティを感じる自由さも魅力的だ。

そんな、ロックバンドとしての佇まいを超えた、芸術性とポピュラリティーを合わせ持つ、ポップミュージックを次世代にアップデートする5人に話を聞いてみた。

●コンセプト=リビングルームは家の中心

――コンセプチュアルなテーマ性を感じる作品となりましたが、デビューEP『LIVING ROOM EP』はどうやって生み出されたのですか?

牧野純平(Vo.):オケだけ最初に全曲ありました。色んなシチュエーションでそのオケを聴きながら、歌詞を思い浮かべてたのですがしっくりくるものが出てこなくて。そこからある時、家のリビングルームにいるときに、 “部屋っぽい音”が聞こえ出して。そこからリビングルームというテーマが浮かびました。リビングルームは家の中心部分だから、そこから広がるEPになればって、全部部屋へとつながるテーマの曲タイトルにしてみました。

土器大洋(G.):今回、前半3曲は、僕がきっかけを作りました。どれも最初はサビのリズムのネタから始まって、“踊れる”という楽曲構成のテーマを形にしています。

牧野:今回メジャー・ファーストEPだったんで、挑戦したい気持ちが強かったんです。今まではインディーズという自分たちのフィールド、自分たちの世界観重視って感じだったんですけど、より枠を外して、もうちょっと広くいろんな人に届けるためにはどうすべきかを考えました。歌詞の書き方も変えました。歌メロも、これまでは自分で作っていたんですけど、土器が作るようになりました。

土器:以前は、きっかけやメロディーもすべて牧野から発信してました。僕はそれに後から手を加えていく手法が多かったんです。でも、今回から歌メロなど、積極的に自分からネタを発信するようになりました。

●バンド結成の経緯は?

――なるほど。もともとバンドは牧野さんを中心に山口県で結成されたんでしたっけ?

牧野:はい。僕と黒瀬、あとギターとドラムが別にいて4人組のロックバンドでした。当時20歳だったかな。

黒瀬莉世(B.):私が入ったのが18歳ぐらいでした。

牧野:僕がプロ志向だったので、ずっとオリジナルを大事にでやってました。そこから先輩だった2人が就職タイミングで脱退して、“どうしよう?”って時に、福岡で活動していた土器と“一緒にやろう!”って話になり、福岡に移住しました。そこからドラムの丸谷とキーボードの志水が参加して、今のメンバーとなりました。

――LILI LIMITというバンドの名前の由来は?

牧野:岩井俊二監督の映画『リリイ・シュシュのすべて』が好きで。もし、子供が生まれたらリリって名前をつけたいなと思ってたんです。だったらバンド名に付けようと思ったのがきっかけでした。僕らがフジロックに出たときに、たとえばですけど、子供に絵日記でバンドのこと、名前の由来を書いて欲しいなって。

――なるほど。LILI LIMIT自体に映像を感じる音というか、岩井俊二的世界観を感じていました。でも作品では繊細なイメージが強いですけどライブを観ていると、実はかなり骨太なライブバンドだったりしますよね? かなり場数を踏まれてきたような気がします。

土器:福岡で活動しつつも、割と車で県外ばっかり移動してライブをやり続けていました。ある意味タフだったと思います。

牧野:たしかに男は黙ってライブみたいな活動をやってました(苦笑)。

――いまのプロダクション、ラストラムに所属することになったきっかけは?

土器:福岡で活動していて、2014年12月にSack a Stew Dryという先輩バンドがツアーで来た時に、マネージャーだった大手さんが来ていて。そのときいろいろお話をいただきました。それが、メジャー展開に通じるきっかけですね。

●1曲目「Living Room」

――デビューEP『LIVING ROOM EP』について、1曲ずつお話を聞かせてください。

牧野:まず「Living Room」から作りはじめました。最初は僕が歌メロを作る予定だったんです。で、そこから歌詞を考え出しはじめて。でも、ふと土器くんに頼んで、浮かんできた歌詞のイメージが伝わりやすいようなメロディーをつけて欲しいなって投げたんです。もともと、部屋からベランダに出たときに空が見えて、そのイメージがサビとなり曲になっています。で、AメロBメロは部屋の中な雰囲気なんですよね。

――アレンジの骨格は土器さんが?

土器:そうですね。まずリズムを組み、リズムで大体曲をどう見せるかとかを考えます。最初は大体ドラムとベースだけあって。この曲に関しては、すっごい歪んだ音がやりたかったんですよ。なんていうか僕ら多分、イメージ的にフェミニンな雰囲気だって言われることが多いんですけど、その逆行きたくなって。ある意味、暴力的なベースと、歪ませたギターで16分で刻むっていう。そんな持っていき方でサビにまで流れを作ろうとしました。バンド結成時からなんですけど、“こんな感じなんでしょ?”って思われると、次はその逆を行きたくなることが多くて(苦笑)。パンク精神みたいな(苦笑)。そんなところから音のイメージが生まれていきました。最終的には、激しいけど優しさがある曲にまとまりましたね。

――LILI LIMITって、みんなで歌えるというか、心に残る歌メロを大事にされてる感が強いですよね?

黒瀬:もともと、自分たちのルーツとしても歌えるバンドが好きなんです。演奏とは別で、メロディーが頭に残るっていうのは、大事なポイントですね。

――歌メロがしっかりしているからこそ、アレンジでも遊べますよね。

土器:それに加えて、牧野の声質や歌い方が誰にも真似できないっていうか、全体的な個性として強いんです。その上でサウンドが深く遊べるというか。

――特徴として、男女のコーラスワークも大きな武器になってますよね。

土器:そうですね。みんな違う声質を持っているので、最大の武器だと思っています。

●2曲目「Kitchen」

――2曲目「Kitchen」はキャッチーなイントロのフレーズや、歌詞も新機軸というかユニーク。世界観の作り込み方が絶妙ですね。

牧野:歌詞は、リビングルームの次はどこの部屋かなって考えて。タイトルだけはすぐに決まりました。で、このオケはキッチンっぽいなって思って。“キッチンの歌だったらどんな歌詞にしようかな?”と最初のメロディーが“トントントントン”って生まれて。包丁を握る手に力が入っているイメージというか。男からすると、女性の包丁の音が強いって怖いものだと思ったんです。機嫌が悪いときはすぐにわかるというか。で、僕が今までお付き合いした女性が、たぶん僕に思ってきたことを、歌詞にしてみました(苦笑)。

黒瀬:キュートで毒がある歌詞ですよね(笑)。

牧野:たぶん女性が求めている男性像って“ごめんね”とか“つらい”とか言ってほしくないんですよね。なんか、そういうことを言いたい曲なんです。でも、ちょっとなんかめんどくさいじゃないですか? 俺が彼女に“言い訳とか本当につらいの”って言われたときに、めちゃくちゃ心に響いたんです。寝れなかったくらいで(苦笑)。なんか、女の人ってすごく強いなって思って。そんな歌詞を書きたいなって思いました。

●3曲目「Unit Bath」

――イントロからすごい魔法めいたキャッチーさがたまらないです。ダンサブルに絶妙なグルーヴ感が生まれていて。どんなきっかけで生まれてきたんですか?

牧野:この曲のきっかけは、この場所(※外苑前のスタジオ)なんです。

土器:その瞬間、僕もいたんですよ。

牧野:夜中まで居残りでずっと作業していて。後半、煮詰まっちゃって何も生まれなくて。

しばらくして、あのループのフレーズが降りてきました。朝8時くらいの話ですね。それを打ち込んで寝ました。

土器:なのでちょっと疲れている感じも出したいなって思ったんです(苦笑)。窮屈だからユニット・バスみたいな。歌メロも結構サウンド的というか、フレーズの一部みたいな感じでしたね。

牧野:サビよりAメロのほうが入ってくるからね。

黒瀬:ベースとしては、休符が気持ちいい、隙間が気持ちいい感じでした。ドラムが結構シンプルなんで、高い音へ行ったり、低い音行ったり、休んでみたり、動いてみたり。メリハリがありますね。

丸谷誠治(D.):ドラムはワイルドなイメージがあったかも。サビでちょくちょく入ってくるフィルとか。この日テックさん(※セッティングをしてくれる人)が入ってくれて作ってくれたタムの音が良くって。これはもうタムでゴリ押そうと思って。あとサビの裏打ちの音色にもこだわりました。ガサガサさせたくて。普通の裏打ちじゃ面白くないなと思って重ねシンバルを使ってみました。

●4曲目「Bed Room」

――メロウなビート感をツインボーカルで優しく表現したナンバー。無重力感、陽だまり感というポップセンスを持つ楽曲ですね。

牧野:なんか、ここまでの曲は、福岡時代に作ったアルバム『AE』からの派生なんです。当時、大人っぽいというか自分たちが目指す音楽があって、でもいま割とそのイメージ像に近くなってきたなって思ったんですよ。じゃあ、僕らが大人になった時にやりたい曲ってなんだろうっていう想いを突き詰めた答えです。「Living Room」っていう曲は、割と恋愛に捉えられるような歌詞だけど、でも「Bed Room」は子供時代の自分たちに向けて歌っているような感じなんです。だったら「Bed Room」を聞いた後に「Living Room」にまた戻ると違う聴こえ方になるんじゃないかって。

志水美日(Key.):4曲通して歌詞を深読みするとすぐ泣いちゃうんです……。歌っていても、すぐ子供時代を思い出して感情移入しちゃいました。涙もろいんですけど、思いを込めてというよりは、敢えてさらっとした感じで歌いました。

牧野:今回、歌詞作りは丁寧にやりましたね。何回も書いては消して書いては消してを繰り返しました。最近、日本語のバンドほどかっこいいものはないなって思っていて。やっぱり伝わりやすいですし。だから日本語を大事にしないバンドはあまり好きではないですね。

●LILI LIMITの目標は?

――今年、『サマーソニック2016』へも出演が決まってますが、バンドLILI LIMITとして、ミッションというか目標、野望ってありますか?

牧野:良い曲を作り続けていきたいです。前のアルバムを越すっていう作業を永遠とやり続けていきたいですね。で、早死にしない、それぐらいかな。

土器:J-POPで聞くことが出来ないようなサウンドを楽曲に刷り込んでいきたいですね。世界で鳴っている音を同時進行でバンドとして鳴らしたいんです。

丸谷:目の前のこと一個一個、着実にって意識を大事にしていきたいですね。

黒瀬:ベーシストとしてリズムを突き詰めていきたいです。みんなの歩幅に合わせて着実に一歩ずつ、目の前のことをこなしていきたいなと思っています。

志水:私は、2人(※牧野、土器)が曲をいっぱい作ってるのが悔しいんで(苦笑)。曲を作って、もっと自分でも歌いたいですね。いっぱいいろんなことに挑戦していきたいです。メンバーの誰にも負けたくないって気持ちで音楽を極めたいと思っています。

――おお、ビートルズでいうところの、ジョージ・ハリスン的な存在アピールだ。

全員:ははは(笑)。

――この5人。LILI LIMITでしか鳴らせない音、曲作りやライブでの躍動感あるインパクトってあると思います。すでに、革新的なバンドとしての輪郭が見えている存在だと思うので、デビューEP『LIVING ROOM EP』のリリースをきっかけに、今後の活躍をさらに楽しみにしています。

全員:ありがとうございます。

LIVING ROOM EP
LIVING ROOM EP

LILI LIMITオフィシャルサイト

http://lililimit.com/