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楽曲最低価格をアーティストが決め 購入価格はリスナーが自由に決定する、音楽配信ベンチャーの狙いとは?

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
SOUND ON LIVE

音楽作品や映像作品の流通経路に革命が起きている

人類が誕生して以来、音楽やエンタメにこれほど数多くふれられる時代はかつてなかった。iTunesストア、SNSでのシェアはもちろん、YouTubeやニコニコ動画など動画共有サービス、SpotifyやAWA、LINE MUSIC、Google Play Musicなどサブスクリプション型サービスの登場といった、音楽作品や映像作品の流通経路に革命が起きた21世紀の音楽シーンだ。

これら新しいツールやインフラの登場は、まだブレイクしていない表現者にとって、ブランディングを高めたりプロモーションをするのに最適だ。結果、たくさんの新しい才能がネット上から発見されている。ライブハウスや、路上でおこなわれていたストリート・ライブの現場が、第3の現場としてネット空間にあらわれたのだ。

しかし、音楽や映像はデジタル変換しやすいがゆえにネットとの親和性が高く、扱いやすいことがメリットだったが、便利になりすぎた結果、一般的な音楽配信サービスの楽曲単価が約200円など、価格価値としてはかつてと比べ下がりつつある。YouTubeにいたっては、楽曲をフルで映像付きで無料で楽しむことができるのは言うまでもないだろう。サブスクリプション型サービスも、現状は決してアーティストへの売り上げ分配率が満足いくものではない。90年代にCDが100万枚売れまくっていた奇跡の時代からすると、音楽業界において楽曲をマネタイズする仕組みの再構築は、大きな課題といえるかもしれない。

そんななか、筆者がキュレーターとして参加した10月25日、東京お台場の日本科学未来館で開催された“エンターテインメントに特化したグローバルなITサービス”のコンペティション『START ME UP AWARDS』のファイナリストに残った楽曲シェア販売サービス『SOUND ON LIVE』に注目したい。

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https://www.soundonlive.com/

楽曲の最低価格をアーティストが決めて、購入価格はリスナーが自由に決定出来る

かつて世界的にヒットした音楽サービス、Myspaceが撤退して以降、日本には使いやすいアマチュアやインディーズ向けの楽曲配信コミュニティがなかった。もちろん、海外ではSoundCloud、Bandcampなど成功しているサービスが存在し、日本でも活用している表現者はダンスミュージック界隈を中心に大勢いる。しかし、楽曲シェア販売サービスSOUND ON LIVEは、誰でも簡単に曲をアップロードできること、ストリーミング再生・楽曲販売ができる使い勝手の良さにこだわっている。さらに注目したいのが、“Name your Price”、いわゆる“投げ銭販売”のシステムを取り入れていることだ。ポイントとしてはひと工夫を加えられていて、楽曲の最低価格をアーティストが決めて、購入価格はリスナーが自由に決定出来ることにある。この仕組みは発明といえるだろう。

いわゆる楽曲の価値を、リスナーにゆだねているのだ。さらに購入時にアーティストへコメントも送れる仕様となっている。ライブハウスや路上で、CD-Rをアーティストの目の前で購入するようなコミュニケーションのデジタル上での再構築だ。

興味深い現象も起きていた。地方在住のリスナーが、都内のアーティストを地元に呼びたいと思ったとき。SOUND ON LIVEでアーティストが定めた価格1600円のアルバムを購入しようとした際、新幹線のグリーン車往復の価格3万円で購入され、遠征費にして欲しいとメッセージされていたのだ。リスナーの想いをアーティストにダイレクトにつなげる仕組み。3万円とまでいかずとも、200円で販売されている楽曲を「わたしなら1000円は払うのに!」なんて、アーティストを応援したい気持ちになったことはないだろうか? たとえば、そんな気持ちをクラウドファンディングのような仕組みだったら企画から実施、結果が出るまでに数ヶ月は必要とすることだろう。しかし、楽曲シェア販売サービスSOUND ON LIVEを活用することで、楽曲を通じてアーティストとダイレクトにコミュニケーションすることで、よりスムーズなイノベーションが起きつつあるように感じたのだ。

もしかしたらお金持ちの音楽好きが、インディーズ・アーティストの200円の楽曲に感動し、百万円で購入してくれるなんて夢のある話も起きてくるかもしれない。

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好きな曲を生み出してくれたアーティストへ感謝の気持ちをこめて

現在SOUND ON LIVEは、1980年生まれの宮西洋充氏ひとりで運営されていることもあり、スマホでは楽曲購入が出来ず試聴のみなど、まだまだ足りない要素はいっぱいあるのだが、アーティスト目線、リスナー目線に寄り添ったあらたな音楽配信サービスとして期待したい。なお、宮西氏は株式会社KDDIウェブコミュニケーションズで、ホームページ作成サービスJimdoの日本での立ち上げを経験した後に独立した経歴を持つ逸材だ。SOUND ON LIVEを立ち上げた理由も、自身がバンドミュージシャンだからというのも納得なポイントだ。

そんな、楽曲シェア販売サービスSOUND ON LIVEで、素晴らしい楽曲を奏でるニューカマーと出会えた。記号的なユニット名で、No.528(ナンバーゴーニーハチ)という。レコード会社も事務所も未契約な新しい才能だ。2015年秋に結成されたばかりで、都内ライブハウスで活動しているボーカルMID、ドラムHIGHからなるポップスユニットだ。ソルフェジオ周波数528Hzがもつ力“奇跡、理想への変換”をユニット名の由来とされている。YUKIなどを彷彿とさせるポップな音使いながら、EDM時代を経由した楽曲構成が新鮮で、アイソトニック・ピュア・ポップなサウンドがみずみずしくも中毒性が高い。ぜひ、SOUND ON LIVEで試聴してみて欲しい。とりあえず筆者も、200円の楽曲を1000円で購入してみようと思う。好きな曲を生み出してくれたアーティストへ感謝の気持ちをこめて。

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https://www.soundonlive.com/@no528

No.528
No.528

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https://no528hz.amebaownd.com/

楽曲シェア販売サービスSOUND ON LIVE

https://www.soundonlive.com/

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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