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2015年初夏、関西のロックバンド・シーンが熱い理由。〜フレデリック、感覚ピエロ、みるきーうぇい〜

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
みるきーうぇい『死にたくなるほど好きだった。』

いま関西のロックバンド・シーンがおもしろい。かつてはEGO-WRAPPIN'など関西発のオルタナティヴなシーンが注目を集めていたが、ここ数年はシーンにおいて全国規模で影響を与えるような動きはなかった。

大きなターニングポイントは、2013年のKANA-BOONのブレイクだ。その後、関西ロックシーンにおけるKANA-BOONと同世代、もしくは下の世代が刺激を受けたことでシーンが活性化していることに注目したい。

キュウソネコカミ、THE ORAL CIGARETTES、HAPPY、Brian the sun、The fin,、コンテンポラリーな生活、ジラフポット、ユナイテッドモンモンサン、Homecomings、フィッシュライフなど、KANA-BOONに関係あるなしに関わらず新しいアーティストの活躍に枚挙にいとまがない。関西独自のトリッキーなアレンジセンス、ライブでの盛り上がりの快楽ポイントの高さが持ち味となっているバンドが続出しているのだ。全体的にオーディエンスの年齢が若いことも特徴といえるだろう。

ニューカマーが同時多発的に育った大きなきっかけは、関西ならではの育成コミュニティの在り方があるかもしれない。大阪・福島にあるインディーズCDショップHOOK UP RECORDSによる献身的なサポート、良きメンターとなるブッキング・スタッフがいるライブハウスの存在はもちろん、『ONION NIGHT』など良質な邦楽ロックDJ&ライブ・イベント。そして、インディペンデントな都市型サーキット型ロックフェス『見放題』の存在が大きそうだ。『見放題』とは大阪市内で開催されている、複数のライブハウス、カフェ、クラブなどで行われる音楽好きが集まる出入り自由のイベントだ。基本的にマスなバンドは出演しないので、音楽ファンにとって新しいバンドと出会いやすい場となっている。

今年の3月に東京・新宿LOFTを中心に出張開催された東京スピンアウト版『mihoudai.tokyo’15』では、フレデリック、夜の本気ダンス、ドラマチックアラスカ、感覚ピエロ、フィッシュライフ、みるきーうぇいなど、関西のバンドを中心に観れるなど、大きなうねりを体感することができた。なお、大阪アメ村ライブハウス17会場で行われる本家『見放題2015』は、7月4日に開催されるので注目だ。

http://www.mihoudai.jp

関西次世代ロック・シーンを牽引する存在として、セールスや動員が拮抗している神戸のフレデリック、ドラマチックアラスカ、京都の“夜の本気ダンス”、そして大阪の“感覚ピエロ”は、今からチェックしておくべき存在だ。

なかでも、気になるのが20代前半の4人組バンド“感覚ピエロ”だ。メンバー自ら事務所やレーベルJIJI RECORDSを手掛けているインディペンデントなアーティストである。しかし、サウンドは確信犯的なメジャー感を打ち出しつつ、ミュージックビデオのクオリティも高い。それでいて現在のJ-POPシーンに対して、批評的な視点を感じさせる歌詞のセンスを持つ興味深い逸材だ。6月9日には、初の全国流通CD『Break』をリリースする。すでに、タワーレコードの全国レコメンド『タワレコメン』に選出され、47都道府県ツアー『KKP47 全国のあなたたちと会いたかった Yes!』も開催されるので期待をしたい。……ん、なんだこのツアー・タイトルは。。

http://kankakupiero.jp

そして、大穴的存在として注目したいバンドは“みるきーうぇい”だ。これまで全国流通の音源をリリースしていないので、まだ知る人ぞ知る存在だ。しかし“大人になることをやめてしまったバンド”と、自らを定義する20代前半の彼女らは、日々生活していることで生まれる悩み、葛藤へと立ち向かう物語性の高い作品構築力が素晴らしい。今の時代、若さあふれる自由な発言は“メンヘラ”と呼ばれがちだが、“みるきーうぇい”が持つヒリヒリとした青い魅力は、10代のハートを持つリスナーに突き刺さる言葉とメロディーの強さを持っている。人気曲のタイトルが「カセットテープとカッターナイフ」、「ほんとは生きるのとても辛い」、「SNSに殺されそう」など、歌詞におけるキャッチーな言葉のセンスの良さにも着目したい。

そんな、“みるきーうぇい”は、5月21日(水)に4作目となる自主制作のシングル『死にたくなるほど好きだった。』をリリースする。心を鷲掴みするメロディアスなロックサウンドと、誰もが思い当たるであろう“人間関係における傷跡”を、赤裸々に歌い上げる共感力の高いポップミュージックだ。

みるきーうぇい『死にたくなるほど好きだった。』
みるきーうぇい『死にたくなるほど好きだった。』

http://milkyway-music.com/jp/

5月21日(木)発売、“みるきーうぇい”最新作CD『死にたくなるほど好きだった。』は、iTunesなどネット配信やAmazon販売などをせず、オフィシャル・ホームページでの通販、“みるきーうぇい”を応援しつづけている大阪・福島にあるインディーズCDショップHOOK UP RECORDSでの販売、都内では下北沢ヴィレッジヴァンガードでのみ取り扱いが決定している。もちろんライブ会場でも手売り販売はされるので、ぜひ完成したての作品をゲットして欲しい。

みるきーうぇい ヴィレッジヴァンガード下北沢店にて
みるきーうぇい ヴィレッジヴァンガード下北沢店にて

なお、レコ発イベントは5月21日(木)南堀江knave にて、“みるきーうぇい”放課後高校一周年記念CD発売イベントとして『死にたくなるほど好きだった。』が開催される。アートワークを手掛けたコジマ憂唯によるライブ・ペインティング、そして、“みるきーうぇい”のミュージックビデオを手掛けているヴィレッジヴァンガードで話題のキャラクター“寿司くん”を手掛ける大阪芸大出身のクリエイターによるショップも展開されるという。

http://milkyway-music.com/jp/?p=769

初夏より爆裂的にスタートすると言われている、インターネットにおける定額制聴き放題サービスの到来など、新しい音楽の楽しみ方がデジタルの進化によって始まろうとしている2015年の過渡期な音楽シーン。そんななか、盛り上がりつつある関西ネクスト・ウェーブ。気になる方はライブの現場に足を運んでみて、気に入ったらCD作品をチェックしてみて欲しい。ここから次世代を象徴するであろうロックバンドが誕生するはずだ。

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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