最前衛の才能を誇る鬼才ボーカロイドクリエイター、トーマによる2013年要注目のアルバム作品!

『アザレアの心臓』ジャケット写真

アザレア地図
アザレア地図

最前衛の才能を誇るボーカロイドクリエイター、トーマ。WEBに作られた退廃的な都市の世界観と、緻密な計算によって仕掛けられた中毒性の高いデジタライズにシンクロしたロックサウンドによって、独自の世界観が構築された傑作アルバム作品の誕生だ。ポストハードコア・サウンドを好むトーマが生み出すサウンドは、展開が縦横無尽に飛び交う、まるで迷路のような構成によって毒っ気の強いポップなメロディを、絵が見える物語性によって届けてくれる。ここ数日の黄砂に悩む東京の都市生活者を見ていると、予言者トーマの創造した世界『アザレアの心臓』が、現実と虚構の境界線が限りなく曖昧になってきているなと痛感する。今回、初めてだというインタビュー取材に応じてくれた奇才トーマの言葉の真意を受け取ってほしい。

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●シーンのトレンドとは真逆なアプローチで、アルバムにすべてを集約した世界観

初の流通アルバムとして話題の『アザレアの心臓』は、先行公開された架空の都市を描いたWEBや、特典でのDVD、MV、フォト、小説、設定資料等で構築された設定の深みが印象的だった。音楽世界の裏にある緻密な物語、そしてヴィジュアル世界。さらにはタイトルさえもリプロダクションされ生まれ変わった「envycat blackout」、「九龍イドラ」、「リベラバビロン」などの人気楽曲たち。動画共有サイトでも超絶な人気を誇る「ヤンキーボーイ・ヤンキーガール」、「アザレアの亡霊」の存在。シーンでは、多面展開が当たり前となったマルチメディア的な拡散アプローチが王道ななか、あえてアルバム作品にすべてを集約したのはどうしてか?

「去年の春に同人で『Eureka』を作ってから構想を練り始めました。僕のなかでは、作るまでが全てで、その後に思い返すとかは何もないんですよ……。まぁ前作は、世界観というより空気感みたいな作品だったんですね。今回から専属絵師のtoiさんにイラストをお願いして共同制作するようになって、視覚的にも世界観がわかりやすくなったと思います。そう、街のイメージが最初にあったんです。すべてはそこから広がっていきました。」

●バンドではギターでハードコア・バンドをやっていた

トーマの音楽性はボーカロイドというジャンルでは珍しく、ポストハードコア・サウンドからの影響を感じる。快楽ポイントの高い決め所を聴けば、わかる人には伝わる要素だと思う。さらに、ネーミング的には漫画家の巨匠、萩尾望都による傑作『トーマの心臓』との関連性が気になるところだ。

「萩尾望都『トーマの心臓』とは直接的には関係はないです。でも、ファンなのは確かですね(苦笑)。インスピレーションな感じで影響は受けているかもしれないです。本は好きでずっと読んでいます。数をたくさん読むわけではないんですけど、わりといつでも読んでいて。あとは映画ですね。気になった作品は何でも観るようにしています。もともと音楽は、高校の軽音楽部に入ってからなんですよ。最初の頃は、メンバーの勧めでアジカンとかカバーしてました。大学でも一応バンドをやっていたんですけど、なあなあになって終わっちゃいました。バンドではギターでハードコア・バンドをやっていました。ライズ・レコードとか好きでしたね。」

●曲は時間で聴かなきゃいけないが、絵は一秒で伝わる

アルバム『アザレアの心臓』は、架空の都市というテーマ性が前面にあることもあってか、メタ的に311以降の時代の行く末を、おとぎ話的に示唆しているような歌詞世界に注目したい。

「架空の都市という設定があると何でもやれるんですよ。最初に世界観を大きく提示しておけば、何を言っても大丈夫だろうというか。今まではちゃんとした絵が描けなかったんで、歌詞で世界観を詳細に提示していたんですが、toiさんのイラストのおかげで一発で世界観を提示できるようになったので、けっこう歌詞で言いたいことを書けるなと思いました(苦笑)。曲は時間で聴かなきゃいけないけど、絵は一秒でわかりますからね。」

●一部トラックを生音に差し替え、鮮度の高いサウンドへと進化

これまで自宅ですべての音世界を制作されていた音楽制作が、本作ではレコーディング・スタジオに入り、生音が増え鮮度が上がっている。

「ギターは家で録ったものをそのまま使ったので、リズムだけスタジオで録りなおした感じです。なのでわりと気楽でしたね。プレイヤーさんも思う通りにやってくれたのですごい気が楽でした。空気感も変わらず、でもアップデートされたイメージですね。」

●ディストピア感に溢れた、幻想的な世界観

トーマらしさといえる、映画『ブレードランナー』やゲーム『ファイナルファンタジー』の影響を伺える、ディストピア感に溢れた、幻想的な世界観はいつから確立されたのだろうか?

「そのへんは完全にアイデンティティとして根幹になってますね。もう学生時代から、そんな世界観が好きで惹かれてました。結局、自分で作品を作るとか、やりたいことを考えたらそこにいきつくんですよね。」

●トーマ自身がボーカルを担当した2曲の完成度の高さ

今回のアルバムで、7曲目『廃景に鉄塔、「千鶴」は田園にて待つ。』と、ラストの『心臓』では、トーマ自身がボーカルを担当されている。ボーカロイドクリエイターの進化の過程? しかも、これが世界観の表現の在り方として正しくも美しい。はっきりいおう、数多く存在するロックフェスを軸として活躍するロックバンドとも闘える、せつなくも力強い音世界が完成されているのだ。

「これって言っちゃって良いのかわからないですけど、製作中になんでボカロに歌わせるんだろうと疑問になった瞬間があって(苦笑)。実は、この2曲って最後に録音した楽曲なんです。派手に広げた風呂敷というか、このアルバムの落とし前をどうつけるかと思っていた時に、自分で歌うしかないなと気がついたんです。なんていうか、これまで自分で歌うという概念がなかったんですね。でも、ボカロシーンって自分で歌わずともクリエイターに目が向く状況があるので、すごいなとは思ってたんです。それで、さらなるその先の世界を完結できるなら自分で歌ってみようと思ったんです。もちろん、ボーカロイドも好きなんですよ。そもそもメロディってシンセサイザーで流すのが一番良いと思っているんです。それに近くてかつ歌詞を喋ってくれるということで、結構ボーカロイドというのは理想的なストーリーテーラーなんですね。」

アザレアの心臓
アザレアの心臓

●楽しく生きるより、“正しく生きなきゃいけない”って責任感

アルバム『アザレアの心臓』、歌詞世界から伝わってくる終末感の謎。もともとトーマ自身の幼少期からアイデンティファイされた世界観だとは思うのだが、震災、311の影響はあったりするのだろうか?

「そこはノーコメントですね……。でも、震災とはまったく関係なく、もともと僕って救われない感じとか光がないような生き方へと進んでしまう困った考え方があるんです。でも、何処で生きるにも向き合わなきゃいけない問題ってあるじゃないですか? そんな時に思うのは、楽しく生きるより、“正しく生きなきゃいけないって責任感”なんですね。そう考えると、自然と向き合わなきゃいけない課題は山積みだったりするんです。」

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