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洗っているのに衣類から「雑巾臭」梅雨から夏に頻発 “スメハラ”防ぐ洗濯術とは

藤原千秋ライター、住生活ジャーナリスト
洗濯物の臭いを嗅いでいる(写真:アフロ)

 衣類から臭い立つ「酸っぱい」「雑巾のような」悪臭が、何回洗っても取れない…。そんな経験をしたことはありませんか。この悪臭は身に着けている本人には気づきにくいのですが、周囲を不快にさせやすく、「スメル・ハラスメント(スメハラ)」と呼ばれてしまうこともあります。

 なぜ普通に洗濯しているのに悪臭がするのでしょう?実は普段の洗濯の仕方に間違いがあると衣類に悪臭が発生してしまうことがあります。また良かれと使用した洗剤や柔軟剤の香料が、かえって悪い臭いを目立たせてしまうことも起こります。特に湿度の高い、梅雨から真夏にかけてはとりわけ衣類の悪臭が頻発する時季。今回の記事では衣類から発する悪臭の原因、その対処法についてご説明します。

まずは「正しい洗濯」ができるようになること

acworksさんによる写真ACからの写真
acworksさんによる写真ACからの写真

  衣類の悪臭対策、その現実的な第一歩は、各々が「正しい洗濯」を行えるようになることです。私たちは皆、特段汗をかいた、などの自覚がなくても皮膚から湿気を発し、皮脂や粘液などを分泌し、垢なども発生させています。さらにその皮膚上には常在菌が存在し、それらいろいろが相まったものを、肌着などの衣類に付着させています。

 洗濯機での洗濯を当然としている多くの方は、洗濯機にこの汚れた衣類等を投入し、洗剤などセットし、スイッチを押しさえすればそれで「洗濯したことになる」と考えているかも知れません。でもこれは、実は誤りです。

 洗濯機の容量を無視した洗濯、洗剤を規定量以上かそれ以下しか入れていない洗濯、一緒に投入すると互いの効果を打ち消しあう洗剤と柔軟剤を一気に入れてしまう洗濯…など、適切に汚れを落とせていない洗濯は、汚れた布をただ濡らしているのと同じだからです。

 この、ちゃんと洗えていない、汚れ成分を残し、洗濯の水分に体温並みの夏の気温下に置かれた(干された)衣類やタオル上では、皮膚常在菌を中心とした微生物(細菌やカビ)が活発に繁殖、代謝を行ってしまいます。その代謝の際に産生されるのが、あの独特な「酸っぱい」や「雑巾のような」などと形容される悪臭なのです。

「正しい洗濯」=「汚れを落とせる洗濯」

ヤナギムシさんによる写真ACからの写真
ヤナギムシさんによる写真ACからの写真

 では具体的にはどうすれば正しい洗濯ができるのでしょう。第一のポイントは、洗濯機のサイズと1回に洗濯している衣類やタオル等の量が見合っているか?にあります。確認してみてください。

 家事には往々にして自己流の習慣が生じてしまいがちです。もしも今「いつも限界まで洗濯物を詰め込んで洗っているけど、ギリギリ回っているので洗えている気がするから大丈夫」というような洗濯感覚でいる場合、おそらくそれはキャパシティオーバーで、ちゃんと洗えていない状態が常態化しているものと考えられます。

 洗濯機のサイズ(容量)10キロというのはレアな機種になりますが、基本的に洗濯できるのは容量の7割(7キロ)量といわれています。大人一人が出す洗濯物は1日1.5キロ目安なので、たとえ大容量10キロの洗濯機であっても、ほんらい一度には4人分+αの量しか洗えません。

 もし「詰め込み」が習慣化しているなら、勇気を出していつもの半量で我慢し、洗濯機を回してみましょう。その際は必ず「規定量の」衣類用弱アルカリ性洗剤ないしは中性洗剤(おしゃれ着用)をセット、あえて「柔軟剤は使わず」洗濯機を稼働させましょう。そして脱水を終えた洗濯物は速やかに干し、わずかな細菌でも繁殖しないように、できるだけ短時間で乾燥させるようにしてください。

 干し上がった衣類の臭いはどうでしょう。いつもの洗濯とぜひ比べてみてください。

柔軟剤は洗濯に必要不可欠ではない

 先ほど「柔軟剤は使わず」と書きました。それは、基本的に柔軟剤は洗濯に必要不可欠なものではないためです。汚れを落としきれていない洗濯物に余計な成分や香りをプラスすると、かえって複雑怪奇な芳香をもたらしかねず、それこそスメハラになりがちなので注意しなければなりません。まずはしっかり汚れを落とす、正しい洗濯ができるようになることが先決です。

 「洗濯」は衣類に良い香りやすべすべ効果をプラスする営みではなく、あくまでも「汚れをマイナスする作業」です。ただ、いくら正しく洗濯して干していても、着て汗をかいたら臭いが出たり、何度洗ってもその臭いが取れないということも、だんだんに生じてくることがあります。そういうときについ目先の良い香りでマスキングしたくなるのも分からないではないのですが、それでは問題の解決にはなりません。

 では逆に積極的に柔軟剤を使うべきシーンはどういうケースなのかというと、衣類に静電気が発生しやすく、その不快感を強く感じる場合です。柔軟剤は、ほんらい洗濯済みの衣類の電荷を洗剤のみ利用時の逆向きに整えることで、静電気の発生やホコリの付着を抑える効用をもつ、いわば洗髪後のリンスのようなものだからです。

 一方、衣類やタオルなどの繊維の内部に着用ごと、使用するごと、じわじわと汚れが蓄積され細菌やカビが生息してしまうことは、ある意味衣類やタオルの「劣化」状態ともいえ、そこが「買い替え」「交換」の目安、タイミングだとする専門家もいます。

 しかし経済的事由などにより容易に買い替えをしにくい場合などには、汚れへのさらなるアプローチ、分解、細菌やカビの消毒を試みるという道もあります。ただ、これは衣類の繊維自体を傷めることとバーターになりがちである点を理解しておく必要があります。

漂白剤、消毒剤、除菌消臭スプレーの使い方

クラサカさんによる写真ACからの写真
クラサカさんによる写真ACからの写真

 衣類やタオルの買い替えが難しい場合の、汚れへのさらなるアプローチには以下のようなものがあります。

 【漂白剤】襟、袖口、脇の下、鼠蹊部、臀部、膝裏といった、汗など体液の染み込みやすい箇所の局地的なシミ、臭いには「液体酸素系漂白剤(主成分は過酸化水素水、液性は酸性)」を使うのが便利です。洗濯前の衣類に塗り込むと、タンパク汚れや皮脂汚れが付着した部分で化学変化を生じ白く発泡するので分かりやすいのです。

 「液体酸素系漂白剤」は汚れの激しいものなどに、このように塗布してから洗濯をする方法、また通常使いの洗濯洗剤にプラスして全体的な消臭目的で使用する方法があります。「酸素系漂白剤」には液体のほか粉末(主成分は過炭酸ナトリウム、液性はアルカリ性)もあり、こちらのほうがアルカリの分だけ効果がやや強く感じられますが、ウールや絹などには使用できませんので注意してください。

 【消毒剤】全体的に雑巾臭くなってしまったけど捨てがたいバスタオルのようなものには、「塩化ベンザルコニウム水溶液(ベルザルコニウム塩化物液)」に漬け込んで消毒する方法を試してみてもいいでしょう。

 他の汚れが残っているとそちらに反応してしまうので、一度洗濯をして汚れを落としたバスタオルなどを、1000倍程度に希釈した塩化ベンザルコニウム水溶液に漬け込み、臭いの原因菌を殺します。2、30分ほど漬け置いた後に、再び洗濯して干しましょう。塩化ベンザルコニウム水溶液は薬局やドラッグストアで購入できます。

 【除菌消臭スプレー】ともすると万能グッズのように思われがちな除菌消臭スプレーですが、汚れが残り細菌が繁殖している臭い布に噴霧して、細菌類は殺すことができても汚れはそのままです。これだけで悪臭の原因が雲散霧消するわけではありません。

 除菌消臭スプレーが強い効果をあらわすシーンは洗濯直後の衣類に対してです。スポーツ用など速乾性の高い衣類で背中、脇の下、鼠蹊部などの臭い残りが気になる場合、まだ濡れているそれらの衣類に除菌消臭スプレーをふんだんに噴霧し、そのまま乾かすようにします。乾くまでの時間に除菌が進み、臭い戻りが少なくなります。

嫌な臭いを発生させないためにできること

 なにはともあれ、一度肌に触れさせた衣類は、ためず寝かせず、すみやかに洗濯をして干すようにしましょう。また衣類の悪臭は、部屋干し臭として発生することも多々あるので、梅雨から夏に限らず、年間通して部屋干し対策を継続することも大切です。

 悪臭の対処法についていくつか述べてきましたが、やはり何より大事なことは、洗濯機での普通の洗濯を正しく行うようにすることです。

 最後に。洗濯物の臭いの原因の一つにはなりますが皮膚常在菌自体は私たちの健康を守る側面をもつ存在です。外出後の手指洗浄(コロナウイルス対策)や医療上必要な場合以外は、むやみに消毒しないようにしてください。また漂白、消毒、除菌消臭は衣類の繊維を傷める可能性もあるので、あくまで「最後の手段」だということも心得ておいてください。

ライター、住生活ジャーナリスト

「家のなか」の事をテーマにウェブ、雑誌、新聞等で執筆。大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。主な著・監修書に『人生が整う 家事の習慣』(西東社)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー!!』(オレンジページ)、『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)等。2020年1月より東京中日新聞にてコラム『住箱のスミ』連載中。

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