Yahoo!ニュース

インスタで1000フォロワー増やすには 大学生が調査

藤田結子東京大学准教授
(写真:アフロ)

総務省の調査報告書によれば、10代および20代は、ソーシャルメディアの平均利用時間が他の年代と比べて、平日および休日ともに大幅に長い。

大学生はツイッターやインスタグラムの利用が多いが、フォロワーを増やすことを意識しているという声は少ない。友人と繋がったり、その友人ネットワークの中で「自分らしさ」を表現したりするために利用しているという意見が多いようだ。

そこで私の研究室の学生たちが、「なぜ人はフォローやシェアをするのか」を理解しようと、インスタグラムのフォロワーを増やす「実験」を試みた。その結果を報告しよう。

フォロワー増の投稿にみられた4つの傾向

まず17人がアカウントを作り、3ヶ月間、インスタグラムに投稿し続けた。その結果、1000フォロワーを超えたアカウントが2つ出た。投稿や反応を日誌に記録し、そのデータからフォロワーが増える投稿の法則を分析した。

シェアするときのモチベーションを駆動する最も強い要因は「映え」であると指摘されている。実際その通りであったが、結果として、次の点もポイントであることがわかった。

フォロワー数が増える投稿にみられた4つのポイント

(1)ハッシュタグが多い(上限までつけるほうがよい)

(2)注目を集めているイベントに関するハッシュタグがついている

(3)高価で少数しか購入・体験できない物事よりも、安価で多数が購入・体験できる物事をテーマにする

(4)「みんな」「~しましょう!」といった相手に語りかける言葉づかいをしている

それはどういうことなのか以下に詳しく説明しよう。

「統一感」「差別化」がポイント

はじめに17名がアカウントを作り、1つのジャンルに絞って投稿を続けた。それぞれが選んだジャンルは、「グルメ」「風景」「ダイエット」「ディズニー」「本」「文房具」など(図表1)。

図表1 アカウントのテーマとフォロワー数(筆者研究室で作成)
図表1 アカウントのテーマとフォロワー数(筆者研究室で作成)

数名は、投稿を重ねても50人程しかフォロワーが増えなかった。たとえばAさんの風景写真のアカウントのフォロワーは56人のみ。

「きれいな公園の写真と一緒に自分の詩も投稿してた。振り返ってみると内輪向けの日記っぽくて広くアピールする内容じゃなかったかも」とAさん。

56フォロワーの公園写真アカウント
56フォロワーの公園写真アカウント

若い女性をターゲットに「ドリンク」や「スイーツ」をテーマにしたアカウントは、フォロワー数はさほど伸びなかった。既視感があり差別化が難しかったようだ。

1000以上のフォロワー数になったのは、「厚揚げレシピ」をテーマに投稿したBさんのアカウント。最初の投稿では少なかった「いいね」が、しだいに400~500ほど「いいね」がつくようになった。今まであまり見たことのない「厚揚げ」に特化したアカウントが関心を引いた、とBさんは分析する。

1000フォロワーを超えた「厚揚げレシピ」アカウント
1000フォロワーを超えた「厚揚げレシピ」アカウント

「あえて厚揚げというニッチな分野に特化したことがよかった。もともと厚揚げが好きだったので。でもさすがに毎日丸々食べるのはきつかった」

もう1つ、1000フォロワーを超えたのは「コスパ至上の介」と題したアカウント。Cさんはコスパがよいコンビニ商品を解説付きで投稿した。Cさんによれば、「コンビニ商品を紹介するアカウントなんてたくさんあるから、何かしらの差別化をしてみた」。

1000フォロワーを超えた「コスパ食品」アカウント
1000フォロワーを超えた「コスパ食品」アカウント

1000フォロワーを超えたアカウントと他のアカウントの違いは、写真の「統一感」と「差別化」であった。共通して、投稿する写真の構図を毎回同じにし、さらに文字を多めに入れた。独自性のあるアカウントとなり、その結果、フォロワーが増えたようである。

フォロワーとのやりとりが大切

さらに重要なポイントは、ユーザーとのやりとりがフォロワー数や「いいね」を増やすということである。参加した学生は次のように指摘した。

「コメント欄を通じたフォロワーの人とのコミュニケーションが増えた。コメントをきちんと返すと、フォローを継続してもらうことができる」

実際、1000人以上のフォロワーを集めたアカウントは、同じジャンルのアカウントをフォローし、フォロワーとのコミュニケーションを積極的に取っていた。アカウントの持ち主は有名人ではないため、自ら他のユーザーとやりとりしないと、多くのフォロワーを得られなかった。

学生たちは最初、フォロワーを増やそうと視覚的な「映え」を頑張った。しかし、アカウントの「ファン」になってくれる人たちと、まめにコミュニケーションを取ることがすごく大切だと実感したという。

コロナ下でテレワークやオンライン授業が続き、ソーシャルメディアの利用も以前より増えているという。不安や孤独を抱きやすい現在、ソーシャルメディアにいっそう人との感情的なつながりを求めてしまうのかもしれない。

東京大学准教授

東京都生まれ。専門は文化・メディア研究。東京大学大学院情報学環教員。米国コロンビア大学で修士号(社会学)、英国ロンドン大学で博士号(メディア・コミュニケーション)を取得。参与観察やインタビューを行う「エスノグラフィー」という手法で、日本や海外の文化、メディア、若者、ジェンダー分野のフィールド調査をしている。著書に『文化移民ー越境する日本の若者とメディア』(新曜社、2008)、『ワンオペ育児』(毎日新聞、2017)他。

藤田結子の最近の記事