お金配りおじさん前澤友作社長は本当に困っている人にお金を配れるのだろうか

お金配りを続けている前澤友作社長(写真:西村尚己/アフロ)

「本当に困ってる人にピンポイントでお金を渡すにはどうしたらいいのか」

前澤友作社長が22日Twitterを更新した。

今回のテーマも複雑で興味深い。

「本当に困ってる人にピンポイントでお金を渡すにはどうしたらいいのか」という論題だ。

皆さんも考えてみていただきたいし、困っている人を見捨てるのではなく、どのようにアプローチするのか、というのは大事な人間社会全体のテーマである。

困っている人に何らかの支援アプローチが必要であることは言うまでもない正義だからだ。

前澤氏は「国でいえば、生活保護受給とか。個人でやるには?」と続ける。

結論から言えば、家族や親密な人間関係なら別であるが、個人で生活保護制度のように誰かのニーズを満たし続けるようなことは出来てもしない方がいい。

困っている人のニーズは何なのか

しかしながら私なりにも改めて少し考えてみたい。

社会福祉学の領域では昔からニード論、ニーズ論、という議論がある。

困っている人は何が原因で何に困っているのか、その困りごとはどのような財やサービスで満たすことが適しているのか、という議論である。

貨幣を渡して満たされるニーズか、貨幣以外のサービス給付で満たすべきニーズなのか、も検討されてきた。

その結果は現代の各種社会福祉制度に反映されている。

例えば、話し相手がいなくて寂しいという困りごとはどうだろうか。

話し相手をどのように確保するのか、寂しさの原因は何か、お金を渡せば解決するのか、など様々な論点が湧いてくる。

お金がなくて困っているというのも何が原因だろうか。

賃金が低くて生活ができないのか、賃金はある程度あっても家賃が高いことや一等地に住んでいるからか、病気で働けないのか、障害年金が少なすぎて生活できないのか、浪費癖があるのだろうか、などお金がなくて困っている原因も多様だ。

なかには本人がお金が欲しいと言っても、お金をあげてしまえば、病気や症状が悪化してしまうこともある。

例えば、ギャンブル依存症者やアルコール依存症者はお金を渡したら、その財を酒という商品やギャンブルというサービスに転化して生活や健康を壊していく。

困っている人に寄り添わなければニーズは確定しない

結局のところ、ニーズは貨幣的なもので満たされるものもあれば、貨幣的には満たされないものもある。

困っている人の状況をよくよく聞いてみなければ、お金を配っても問題解決に寄与しない場合もあるし、本当に困っているか否か、何に困っているのか、は判断できない。

また仮に判断できたとしても、それは判断する側の価値観であり、本当に困っているのか否か、支給によって問題解決したのかはわからない。

福祉専門職はこのようなことを日常的に考えて、困っている本人への制度的介入などによって、お金を渡したり、サービス支給の決定に関与する。

それでも本当に生活しやすくなったのか、ニーズは満たされたのか、常にモニタリングをしながら支援を継続している。

さらに、一時的な金銭支給によって貨幣的なニーズが満たされたとしても、一度きりの支給ではニーズは満たされ続けない。

そのため、日本の生活保護制度は最低生活費を根拠にして、その基準以下の収入にある状態であれば、永続的に金銭やサービスを支給し続ける。

この生存のためのニーズを満たす責任は国家責任として、国にしかない。

前澤氏には個人の生存を保障する権利も義務も何らないし、可能だとしても個人では持続可能性がない。

そのため、例えニーズを満たそう(貨幣を配ろう)と思っても、その介入は国家や自治体に委ねるべきだろう。

なぜならば、貨幣は大きな権力を有している。

貨幣を配る側と配られる側は、支配ー被支配の関係性にも陥りやすい。

すでに貨幣が欲しいあまりに、多くの「仮の支持者」に囲まれている状態も発生しているだろう。

Twitterのフォロワーも貨幣によって容易に購入できることが明らかなように、相手を従わせることもできれば、言いなりにすることもできる。

お金がもらえるなら何でもする、という心理状態も働くことは当然だ。

つまり、お金を配る側と配られる側が対等で健全な支援関係を築くことは極めて難しい

だから、永続的にニーズを満たし続ける必要がある場合、権力が集中したり恣意的な判断が強くならないように、国家や自治体、公共性の高い団体が介入してきた。

その介入の最前線にいるのが主に福祉専門職である。

福祉専門職の目から見ても、現在の生活困窮者支援システムは欠陥だらけである。

要保護状態にある人への生活保護支給さえ、まともに機能しているとは言い難い。

前澤氏の疑問と同様に「困ってる人にピンポイントでお金を渡すにはどうしたらいいのか」を考え続け、国家を介して、提言していく役割は福祉専門職にある。

私の立場としては、諦めずに「公助」の拡充をしながら、支援枠組みを拡大するしかない。

前澤氏の問い、正義部分は大切にしながら、福祉業界全体で制度改善を要求し続けていく必要があるだろう。