実は生活保護制度では自動車保有を認めたり、親族への連絡をしない事例が増加 生活保護申請も検討を

生活保護制度の柔軟運用を促す厚生労働省(写真:西村尚己/アフロ)

増える生活困窮者と相変わらず受けにくい生活保護制度

新型コロナウイルス感染が影響するなか、生活困窮者が増え続けている。

そのようななかで、生活保護制度を利用できない、福祉課で申請を断られた、という相談も相次いでいる。

生活保護制度は日本において「最後のセーフティネット」と呼ばれており、本制度が機能しなければ、人々の生命や暮らしに危機を及ぼすこととなる。

今後、住居確保給付金、休業手当、失業保険などが支給期限を迎えて、収入が途絶えてしまったり、収入減少が起こっていく人たちが出てくる。

生活保護制度の改善、柔軟運用はまさに急務の課題である。

そのため、改めて厚生労働省は9月11日に各福祉事務所へ以下の事務連絡をおこなっている。

生活保護制度は市民に馴染みが薄く、福祉事務所の担当者でも誤解の多い制度である。

改めて、厚生労働省の事務連絡を例に生活保護制度を見てみることにしたい。

親族への扶養照会は場合によって不要

生活保護法では、法第4条2項において「保護に優先して行われる」ものと定めており、扶養義務者に扶養照会を行い、扶養を受けることができる範囲において、保護より優先することとしている。

一方、相談段階における扶養義務者の状況の確認について、扶養義務者と相談してからでないと申請を受け付けないなど、扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行うといった対応は不適切であるので、改めてご留意願いたい。

下記に該当すると認められれば、当該扶養義務者が生活保持義務関係にある場合は、本人に対する直接照会は不要

・被保護者、社会福祉施設入所者、要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養ができない者並びに夫の暴力から逃れてきた母子等当該扶養義務者に対し扶養を求めることにより明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる者であって、明らかに扶養の履行が期待できない場合

・長期入院患者、主たる生計維持者ではない非稼働者、未成年者、概ね70歳以上の高齢者

・20年間音信不通である等、明らかに交流が断絶している場合

「生活保護を受ける際には必ず親族、親戚に連絡がいくもの」と誤解されている方が多い。

しかし、上記の通り、要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養ができない者などには、扶養照会をする必要がない旨が明記されている。

明らかに交流が断絶している場合にも扶養照会は不要である。

長年、親族と連絡をとっていないのに、役所から連絡を取られたら恥ずかしい。

生活保護を受けていることを親族に知られたくない。

このような場合には、上記に該当しないか確認の上、福祉課に厚生労働省の事務連絡を印刷して持参してもいいし、生活保護申請の際に、担当者へ説明をしてほしい。

大事なことなので繰り返すが、生活保護による親族への扶養照会は不要のケースが多い

持ち家に住んでいても生活保護は受けられる

法第4条第1項に定める補足性の原理により、生活保護は利用できる資産、能力その他あらゆるものを活用することを要件としており、保有を容認するに適さない資産は、原則として処分の上、最低限度の生活維持のために活用させることとなる。

居住用不動産の活用については…当該世帯の居住の用に供される家屋及び当該家屋に付属した土地については保有を認めることとしている。

一方で、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められる場合にはこの限りではないこととされ、通常、処分の上、最低生活の維持のために活用されることとなる。

つまり、生活保護制度を利用する際に持ち家があっても処分することなく生活が可能である。

長年住み慣れた住宅を手放したり、転居しなければならないから生活保護を受けない、というのは誤解である。

売却するよりも居住のために使用した方が価値が高いのであれば、保有が認められている。

その際も福祉課に事情を説明して、生活保護申請をおこなってほしい。

家がない場合も施設入所以外の方法で保護する

現に住居のない生活困窮者が来所した際に、例えば、単独で居宅生活が可能であるかの判断を行わずに、無料低額宿泊所への入所に同意しなければ保護を申請することが出来ない旨の説明をするといった対応は、申請権の侵害または侵害していると疑われるような行為にあたるので、厳に慎むこと。

都市部の福祉課ではホームレス状態で相談に行った場合、無料低額宿泊所などの施設入所を半ば強制的に勧められることがある。

しかし、本来の制度運用は個別に意思を確認して、保護する場所を決めていくこととなる。

場合によっては、ビジネスホテルや簡易宿所など一時的な滞在施設で保護し、敷金・礼金を支給してアパート転居も可能である。

実は生活保護制度では礼金・敷金・手数料など転居費用を給付 アパートを追い出される前に生活保護申請を

ホームレス状態になっている場合も、福祉課と適切な保護環境をめぐって相談することが大事だ。

急いで生活保護費の支給をする

生活に困窮する方が、所持金がなく、日々の食費や求職のための交通費等も欠く場合には、申請後も日々の食費等に事欠く状態が放置されることのないようにする必要があり、こうした場合の速やかな保護決定について、5月 26 日付事務連絡等において依頼しているところである。

現下の状況においては、こうした対応が引き続き重要であるので、法第 24 条第5項に定める法定処理期間の範囲内で、可及的速やかに保護決定までの事務処理を進められるよう、改めてお願いする。

つまり、緊急の場合には生活保護決定までの審査を早急にするように求めている。

いくつかの福祉課では保護決定の前に、暫定で緊急払いとして保護費を支給したり、生活福祉資金貸付の利用を促す場合もある。

通勤用自動車は期間限定で保有できる

通勤用自動車の保有については、「新型コロナウイルス感染防止等のための生活保護業務等における対応について」(令和2年4月7日付厚生労働省社会・援護局保護課事務連 絡(5月 26 日付事務連絡の別添1)の2の(2)で留意点をお示ししているところであるが、保護開始時において保有を認めた通勤用自動車については、10 月以降、順次、課長通知第3の問9-2に定める6箇月が経過することになる。 しかしながら、現下の状況を鑑みると、引き続き就労が途絶えている場合も多いと思料されることから、こうした被保護者に対しては、同課長通知に準じ、保護開始時から概ね1年を目途に引き続き同様の対応を実施されたい。

つまり、生活保護申請から当面の間、自動車の保有を認めている

公共交通機関がない場所は言うまでもなく、都市部でも仕事探しや就労、子育てのために自動車が欠かせない場合もある

自動車を手放した場合、再度取得することは難しいこともあり、限定的に保有やその活用を認めている。

だから、生活保護を受けると車も手放さなければならない、と言うのは誤解である。

生活保護申請の際に、福祉課には就労のために必要だと説明をしてほしい。

生活保護受給に至らなかった場合でも相談支援機関を紹介すること

5月 26 日付事務連絡等において、自立相談支援機関と福祉事務所の連携について依頼しているとおり、

・自立相談支援機関による支援の結果、要保護性またはそのおそれが確認された場合等、自立相談支援機関が当該者に福祉事務所への相談や申請を促した場合に、福祉事務所において円滑に対応すること

・福祉事務所に相談したものの結果的に保護申請に至らなかった場合や、保護が却下となった場合に、自立相談支援機関を紹介すること

等の対応は、緊密な連携を図る上で特に重要であるので、改めてお願いする。

上記のように、生活保護制度を説明したが、まだ預貯金や資産が一定程度あり、生活保護受給の要件を満たさない場合もある。

その際も生活困窮者自立支援法に基づく自立相談支援機関とつながっておくことが大事である。

自立相談支援機関は各自治体に窓口が設置されている。

つまり、生活保護制度以外にも使える制度やフードバンクなど食糧支援をしてくれる団体紹介など、生活支援策がある。

うまく福祉課だけでなく、自立相談支援機関も活用したい。

生活保護制度は誤解が多い制度で、福祉事務所の担当者も間違った制度運用をすることがある。

多忙ななか、上記の厚生労働省による事務連絡を確認していない場合もあるだろう。

その際は全国各地に弁護士、司法書士などが生活保護法に関する相談を受ける窓口もある。

生活保護制度に関して、不明な点があれば、以下へ気軽に問い合わせいただきたい。

東北 

東北生活保護利用支援ネットワーク

 Tel. 022-721-7011 (月・水・金 13時〜16時、祝日休業)

関東・甲信越・北海道 

首都圏生活保護支援法律家ネットワーク 

 Tel. 048-866-5040 (月〜金10時〜17時、祝日休業)

東京   

認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

 Tel. 03-6265-0137 (火 12時〜18時、金11時〜17時のみ)

面談相談:毎週火 11時~18時 もやい事務所にて

ホームレス総合相談ネットワーク

 フリーダイヤル0120-843-530

 (電話でのお問い合わせは、月水金午前11時〜午後5時にお願いします)

北陸 

北陸生活保護支援ネットワーク福井(福井・富山) 

 Tel. 0776-25-5339 (火 18時〜20時、年末年始、祝日休業)

北陸生活保護支援ネットワーク石川

 Tel. 076-231-2110(火 18時~20時、年末年始、祝日休業)

静岡 

生活保護支援ネットワーク静岡

 Tel. 054-636-8611(平日 9時~17時)

東海 

東海生活保護利用支援ネットワーク (愛知、岐阜、三重)

 Tel. 052-911-9290 (火・木 13時〜16時、祝日休業)

近畿 

近畿生活保護支援法律家ネットワーク 

 Tel. 078-371-5118 (月・木13時〜16時、祝日休業) 

中国 

生活保護支援中国ネットワーク

 Tel. 0120-968-905 (月〜金 9時半〜17時半、祝日休業)

四国 

四国生活保護支援法律家ネットワーク

 Tel. 050-3473-7973 (月〜金 10時〜17時、祝日休業)

九州 ・沖縄 

生活保護支援九州ネットワーク

 Tel. 097-534-7260 (月〜金13時〜16時30分、祝日休業)