竹中平蔵パソナ会長「このままだと日本を良くするのは益々難しくなる」足元の派遣労働者に目を向けてほしい

大手人材派遣業者・竹中平蔵パソナグループ会長(写真:つのだよしお/アフロ)

竹中平蔵パソナ会長「このままだと、日本を良くするのは益々難しくなる。」

大手人材派遣業・竹中平蔵パソナグループ会長が8月29日にTwitterを更新した。

安倍首相の辞意表明を受けて「ねぎらいの言葉」を述べながら、メディア報道のあり方を批判しつつ、「このままだと、日本を良くするのは益々難しくなる」と書き連ねている。

「このままだと、日本を良くするのは益々難しくなる」という言葉に今回も驚かされた。

日本を良くすることを考える前に、これ以上、日本を壊さないでほしいという感想を持つ。

竹中氏は言うまでもなく、大手人材派遣業の会長という立場であり、派遣労働者が存在することで利益を上げるグループの経営者である。

現在、日本を良くするか否か以前に、足元の派遣労働者の生活が新型コロナ禍でどうなっているのか、確認してほしい。

新型コロナで苦しんでいる派遣労働者や非正規労働者

今年3月以降、新型コロナウイルスの影響から生活相談を多数受けてきた。

店舗や事業所が休業するなか、解雇や雇い止めによる相談対応や支援に奔走している。

以下の記事でも「コロナ解雇、8月末で5万人超に 非正規中心、増加止まらず」と見出しをつけている通り、失業者の大多数は派遣労働を含む元非正規労働者である。

厚生労働省は1日、新型コロナウイルス感染拡大に関連する解雇や雇い止めが、8月31日時点で見込みも含めて5万326人になったと明らかにした。

この1カ月余りで1万人が職を失い、失業者の増加に歯止めがかかっていない。

政府は雇用助成の日額引き上げなど特例期限を12月末まで延長して対応するが、感染収束の兆しは見えず、非正規労働者を中心に厳しい雇用状況が続く。

厚労省は2月から新型コロナによる解雇と雇い止めを集計。

5月21日に1万人、6月4日に2万人を超え、その後はおおむね1カ月に1万人のペースで増えている。

事業所の報告に基づいており、実数はさらに多いとみられる。

出典:コロナ解雇、8月末で5万人超に 非正規中心、増加止まらず 9月1日 共同通信

各人材派遣会社は役割を果たせという批判に応答するべき

相談を受けるなかで、人材派遣会社が派遣先を確保することもなく、雇い止めをする事例がずっと続いている。

以前から派遣労働者は「雇用の調整弁」と言われ、景気後退の場面では常に犠牲を強いられてきた。

今回も休業手当は支給せず、新規派遣先も紹介せず、「中間搾取」するだけで役割を果たさない派遣会社の事例が多く見られる。

いわゆる「派遣切り」である

実態については、ともに相談支援活動に取り組む今野晴貴氏の以下の記事も参照いただきたい。

派遣労働者にたいしても、本来であれば、休業中の補償や雇用の維持が求められているにも関わらず、「コロナだから」と、十分な説明・措置も取られないまま、生活に困窮する派遣労働者が後を絶たない。

この点、派遣元・先ともに役割を全うしておらず、その責任は大きい。

派遣会社は、仕事がなくなっても派遣先を新たに見つけたり、労働者を訓練することで就労先を確保する機能が求められている。

当然、派遣先がなくなっても簡単に解雇しないことが前提だ。

そうでなければ、労働者は「間接雇用」によってただ「中間搾取」された上に、不安定な身分におかれるだけである。

出典:無責任な派遣会社は「社会悪」 国の呼びかけも法律も無視して「派遣切り」が横行 今野晴貴

「このままだと、日本を良くするのは益々難しくなる」という言葉は私から竹中氏にも返しておきたいものである。

人材派遣業界が最低限の役割も果たさずに「中間搾取」の機能だけを発揮するならば、日本は絶対に良くならない

竹中氏は人材派遣業界に影響を与える立場にいる。

派遣労働者の生活や将来を奪い、その犠牲によって利益を上げるのではなく、最低限の責任を果たしてほしい。

竹中氏は「みなさんには貧しくなる自由がある」と過去に若者へ酷い言葉を送っているが、当然、働く若者に罪はなく、貧しくなる自由などない。

竹中氏自身がリスクをとってでも、雇用維持に奔走してからメッセージを発するべきではないか。

私が、若い人に1つだけ言いたいのは、「みなさんには貧しくなる自由がある」ということだ。

「何もしたくないなら、何もしなくて大いに結構。その代わりに貧しくなるので、貧しさをエンジョイしたらいい。ただ1つだけ、そのときに頑張って成功した人の足を引っ張るな」と。

以前、BS朝日のテレビ番組に出演して、堺屋太一さんや鳥越俊太郎さんと一緒に、「もっと若い人たちにリスクを取ってほしい」という話をしたら、若者から文句が出てきたので、そのときにも「君たちには貧しくなる自由がある」という話をした。

出典:竹中平蔵(下)「リーダーは若者から生まれる」 2012年11月30日 東洋経済オンライン

派遣労働者は努力しても雇い止めにあい、将来に悲観している。

何もしたくないのではなく、普通に働いても貧しくなる働き方が存在していることが問題である。

竹中氏が若年派遣労働者の犠牲の上にいて、「このままだと、日本を良くするのは益々難しくなる」などと言える社会はおかしくないだろうか。

「ポスト安倍」が注目を集めているが、次の内閣では竹中氏を要職から外してほしいし、人材派遣業界が政策に口出しするなら、最低限の責任を全うしてから発言をさせてほしいものだ。