松戸市で男性が「10万くれ。今すぐ金をもらえないならここで死ぬ」 行政は生活困窮者を犯罪に追い込むな

生活に困り果ててしまっている男性(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

「今すぐ10万円くれ。今すぐ金をもらえないならここで死ぬ」

起こらないか心配していた事件が松戸市で発生した。

生活困窮に苦しむ市民が特別定額給付金の早期の支給を求めて、現行犯逮捕されたという。

千葉県松戸市役所で包丁をちらつかせたとして、県警松戸署は13日、銃刀法違反(刃物携帯)の疑いで千葉県松戸市根本の自称無職、大谷剛容疑者(39)を現行犯逮捕した。大谷容疑者は容疑を認めている。

同市によると、大谷容疑者は国民に一律10万円を配る特別定額給付金の担当室を訪れ、「3、4日何も食べていない。今すぐ10万くれ」と要求。

担当職員が「順番に対応しているので今すぐには渡せない」と回答したところ、「今すぐ金をもらえないならここで死ぬ」と言い、持っていた手提げかばんから包丁を出したという。

騒ぎを見ていた別の職員が110番通報。駆け付けた松戸署員に現行犯逮捕された。

逮捕容疑は同日午前9時20分ごろ、正当な理由なく、市役所で刃渡り約16センチの包丁1本と刃渡り約8・4センチのカッターナイフ1本を携帯したとしている。

出典:「今すぐ10万くれ」 市役所で包丁出した男逮捕 千葉・松戸 5月13日 産経新聞

3、4日何も食べていないという。どれほど苦しかったことか。

新型コロナウイルスの感染拡大、自粛要請も続くなか、仕事や収入を失う方が多い。

私たちの生存のためのコロナ対策ネットワークにも、所持金がほとんどないという相談が相次いでいる。

なかには所持金が300円、6000円というような内容もある。非常に生活が切迫していて、まさに生存の危機だ。

生活困窮者を犯罪に追い込む行政

これらの声が行政担当者には、どれほど届いているのだろうか。

もう5月中旬である。いつまで待たせるのか。

未だに大多数の人のもとには現金が届いていない。まさに「今すぐ10万くれ」というのは切実な声なのである。

事件化したから多くの人が知る機会になるが、どれほどの人が爪に火を灯しながら暮らしていることか

窓口に困窮を訴えて支給してほしいというのならば、よほどの事情があるということだ。

なぜ丁寧に事情を聴き、柔軟にその場で支給することができないのか。

10万円を給付することは決まっているのだから「順番に対応しているので今すぐには渡せない」という突き放した対応をするべきではない。

これを契機に各役所では窓口に来た人を犯罪に追い込むことがない対応を早急に検討してほしい。

「お役所仕事」として順番に公平に、という悪き習慣があるようだが、いまは緊急事態なのである。

場合によっては、10万円によって生活が救われる人もいるはずだし、遅れれば生活破綻する人もいる。

そのような切実感を行政担当者には共有してほしい。

とにかく日常は市政を支えている市民、労働者を犯罪に追い込むようなことが絶対にあってはならない。

過去には生活困窮を訴えた人に適切な支援が行われず、刑務所の方がマシだと下関駅に放火した事件があった。

犯罪は許されることではないが、そのような状況に追い込むものは何か考えてほしい。

下関駅の事件は、男性が05年12月30日に福岡刑務所を出所した8日後に発生。

男性は事件までの間に、警察に保護されたり、福祉事務所に連れて行かれたりと、八つの公的機関に接触。

生活保護を求めるなどしたが、公的支援は受けられなかった。

出典:84歳 もう刑務所には… 下関駅放火事件から10年 累犯障害者男性 人生の半分服役 司法と福祉連携 出所後フォロー 2016年9月18日 西日本新聞

柔軟で簡便で使いやすい行政サービスへの転換を

また切迫している人は、特別定額給付金を待ちつつ、生活保護申請も検討してほしい。

すでに生活福祉資金貸付制度も活用し、住居確保給付金も利用している方もいるだろう。

それでも生活が苦しい場合は、生活保護も申請が可能だ。ぜひ気軽に受けてほしい。

新型コロナウイルスの影響による失業や休業などで経済的に困窮する人が急増する中、東京23区では先月の生活保護の申請件数が2000件余りに上り、去年の同じ時期より30%以上増えたことがNHKの調べで分かりました。

出典:生活保護申請件数が急増 新型コロナで経済的困窮 東京23区 5月13日 NHK

5月13日には東京都23区で生活保護申請が急増していると報じられている。

生活保護受給は恥ずかしくも悪いことでもない。

多くの人が受けるということは、それだけ命や暮らしが救えているということである。

生活保護が機能しなければ、前述のように、止むに止まれず、犯罪や自殺に追い込まれていく人が増えかねないのである。

社会全体で気軽に助けを求めていい、と伝え、実務をおこなう行政は柔軟で使いやすいサービス提供をするように、システムを変えていくべきだろう。