松本人志氏「1人100万円で10億円貸付」が話題 文化・芸能業界からの悲鳴と生活保障の弱さ

お笑い芸能文化の象徴でもある「なんばグランド花月」(写真:アフロ)

松本人志氏「1人に100万円貸付」の報道

お笑い文化の象徴でもあるなんばグランド花月を含めて、各種劇場も軒並み閉鎖中であり、収入の道が断たれている芸能人が数多くいる。

この間もお笑い芸人の方とテレビ番組などでご一緒する機会があると「収入が激減して大変」「若手芸人で廃業する者も出てきている」という声しか上がっていなかった。

知名度がある芸能人の方も、仕事の機会が皆無になり、突如として生活困窮しているという話を色々な機会で耳にしてきた。

それらの現状を受けて、松本人志氏の個人融資は話題を集めている。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で生活苦となっている芸人の救済に立ち上がったダウンタウン松本人志(56)のプランがお笑い界で「太っ腹すぎる」と話題を呼んでいる。

1人上限100万円を無利子で貸し付けるもの

面識のある後輩は1000人にも上るとみられ、お願い次第では最大10億円の“持ち出し”覚悟の大盤振る舞いとなる。

驚きの松ちゃんファイナンスだ。

テレビ局関係者によると、後輩芸人らにポケットマネーで1人上限100万円を無利子無担保で貸し付けるプランで、返済期間は5年間という。

所属の吉本興業では3月から全劇場を休館。

当初は無観客ライブ配信も行っていたが、政府の緊急事態宣言により、それもままならなくなった。

テレビの収録も劇場もない。給料もないのないない尽くし」(中堅芸人)との悲鳴が上がる中、“漢(おとこ)”松本がひと肌脱いだ形だ。

公にはしていないが、4月中旬にスタッフを通じて、親交のある後輩芸人に緊急メールで呼び掛けた。

「コロナで収入が減った芸人に松本人志が金貸します。条件。おもろいやつ」との内容で、貸し付けの“条件”でハードルは上がっているが、これは将来性のある後輩への投資との意味を込めてだろう。

これまでも自然災害が起こった際、水面下で寄付を行うなど人が困っていると動かずにはいられない性格。

周囲によると「後輩の将来が閉ざされるのは悲しいので貸し付けを決めた。返済を催促することもないでしょう。何かできることはないかとすぐに動いたようです」という。

吉本には6000人が所属しており、松本と面識のある後輩を考えると、貸し付けが1000人ほどまで広がる可能性もある。

総額10億円に上るが「松本さんは数億円単位になることも覚悟している。それこそ10億円ということも考えているのでは」(放送作家)と大盤振る舞いの救済策となる。

昨年、所属芸人が特殊詐欺グループとの間で行った闇営業問題で吉本が分裂危機に陥った際はツイッターに「後輩芸人は不安よな。松本、動きます」と投稿して事態の収拾に奔走。

闇営業で謹慎中の芸人が生活に困っていると、タイガーマスクに扮し、スタッフを通じて計数百万円を援助したこともあった。

後輩からは「恐れ多くて借りてもいいのか迷う。“おもろいやつ”という条件で5万円くらいしか借りられなかったらどうしよう」と悩む声がある一方、「お願いするつもり。生活が干上がりそうです」と借りる気満々の猛者まで、それぞれだ。

生活困窮組には願ったりかなったりの夢プラン。タイガーマスクの主人公ではないが、お笑い界の伊達直人から素敵なプレゼントだ。

出典:松本人志 10億円覚悟!生活苦の後輩芸人救済、1人上限100万円無利子貸し付け 5月4日 スポニチアネックス

文化・芸能の危機的状態と生活困窮の相談の数々

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、日常の大切さを多くの方が痛感するなか、やはり娯楽も振り返るものの一つである。

言うまでもなく、大衆の娯楽として愛されてきた文化・芸能は、多くの人々に楽しみや笑い、希望を与えてくれる貴重なものである。

私もさいたま市大宮区にある大宮ラクーンよしもと劇場に足を運んだことがある。

熟練した芸を楽しませてもらうと同時に、何かあったら保障もなく大変な立場だろう、と想像することも多かった。

このような経済危機で、お笑いに限らず、多くの文化や芸術が衰退しないか、心配な状況である。

もともと日本では文化振興や芸術予算が少ないことは、劇団を主宰する平田オリザ氏らも指摘し続けてきたことだった。

それぞれの分野の文化、芸能が危機に瀕している。可能な範囲で寄付やカンパもお寄せいただきたい。

私たちは主催団体は違うが、4月17日、18日、5月2日、3日に生活・労働電話相談会を実施した。

そこに寄せられた声も多様なものであった。

なかでも文化、芸能、スポーツに関わってきた方たちの苦境も多く聞かれ、各種利用可能な制度説明などもおこなっている。

お笑い芸人に限らず、ピアニスト、音楽家、劇団員、スポーツ選手、書道家、華道家、カメラマンなど、日常的に私たちを楽しませてくれている人たちが苦境にあえいでいる。

「小さな劇場だが賃借料が払えない」

「劇場に花や物品を納入する仕事、取引先が全滅である」

「多い時には1000万円を超える収入があっても、現状はゼロだ」

「いつ再開できるか分からないので融資を受けても返せる見込みも立たない」

「教室を開けられないので月謝が入る見込みがなく生活していけない」

「テレビ出演や番組出演の機会がなくなり収入が激減している」

「これを機会に廃業する予定だが廃業する人には支援制度はあるのか」

本当に相談内容を聞いたり、まとめていて胸が苦しくなる声ばかりである。

個別相談では、弁護士や社会福祉士なども対応してきたが、同様の声は日々増えている傾向にある。

現在実施されている政府の休業補償としての貸付や家賃補助、持続化給付金などの一時的な支援では、活動が維持できない可能性が高い相談ばかりである。

個人的な支援には限界 政府による生活保障を

松本人志氏のような個人融資や個人援助も重要ではあるが、いくら有名であるといっても、個人支援には限界がある。

前ZOZO社長の前澤友作氏による個別支援、難病の子どもへの支援など、過去には話題になったが、あくまで個人が自由意志で財産を処分するものである。

これにも限界があるし、良くも悪くも、当然に出資者の意向が強く働く

だからこそ、本来は政府による生活保障を拡充することが極めて重要なのである。

そもそも、なぜ松本人志氏や前澤友作氏などが個別で助けることを求められ、その行為を実施しなければならないのか。

美談で語るだけで終わらせてはならない社会問題だと思っている。

私たちは何のために税や保険料を日常的に支払いながら、危機に備えてきたのだろうか

相談を多数受けている限りでは、その予算や機能は有効に活用できているとはいえない。

ハリーポッター作品を生み出したJ・K・ローリング氏は、イギリスで生活保護を受けながら、物語の構想や執筆をしていたことは有名な逸話である。

政府や社会が一時的に困窮状態を見過ごさずに支援したからこそ、偉大な作品は生まれることになった。

いまも未来の偉大な芸術家やアーティストが夢を諦めるか否か、苦渋の決断を迫られている

文化・芸術活動に取り組み、私たちの生活に潤いを与えてくれるような人たちを見捨ててしまっては、文化が壊れてしまうし、後継者もいなくなってしまうことだろう。

困った時にはあくまで生活保護を含めた生活保障がきちんと機能し、それらを受けながら再起や再興をはかれる環境整備が大事である。

これらの分野の人々に限らず、未だに支援金を含む給付が受けられた人は少数である。

あまりにも危機対応が遅すぎないだろうか。引き続き、政府に対して文化・芸能関係者とともに連帯して声を上げていく必要がある