店舗に押し寄せるパチンコ客「コロナウイルス?関係ない」背景にある事情やギャンブル依存症対策の不十分さ

街中にあふれているギャンブル施設、依存症を誘発する遊興施設の数々(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

営業継続のパチンコ店にお客が殺到

大阪府が営業自粛要請に従わないパチンコ店の公表をおこなった結果、いつもと変わらず来店客が押し寄せたそうだ。

予想通りの展開であり、パチンコ業界や依存症対策について、全く見識がないこともよく分かる結果だ。

公表するということは開いている店舗を明らかにするという行為であり、パチンコ愛好家たちの行動に火をつけてしまうだろう。

大阪府が新型コロナウイルス特別措置法に基づき店名を公表したパチンコ店には、一夜明けた25日も午前中から大勢の客が集まった。府は感染拡大を防ぐため利用を控えるよう求めたが、店の駐車場には車が並び、常連客からは「いつもと変わらない」との声が上がった。

堺市堺区の「P.E.KING OF KINGS大和川店」では開店前から、約300人がずらり。入り口には手指消毒を呼び掛ける紙も張られ、整理券を受け取った客らはスタッフの誘導で1~2メートルの間隔を空けて列を作った。

近くに住む常連客は「名前が出たから、他の店を探さずにここに来る人も増えるんじゃないか」と話した。

出典:大阪のパチンコ店「変わらない」 店名公表も大勢の客集まる 共同通信 4月25日

ギャンブル依存症患者は死んでもパチンコ屋に行く

私は社会福祉領域で相談を受けて支援に関わってきたソーシャルワーカーである。

数々の軽度から重度に至る依存症患者を見てきた。なかには依存症から抜け出すことが叶わず、自他への自責の念から自死された方もいる。

ギャンブル依存症は人を死に至らしめる恐ろしい病気である。

ギャンブル依存症患者で重度になると、当然、社会生活に破綻をきたす。

ギャンブルの他にもアルコール、薬物、セックス、ゲーム、買い物など依存対象は様々だが、どれも過度に依存すれば同様の辛苦を味わう。

家庭内暴力、人間関係の破綻、家計破綻、多重債務、失業や解雇、窃盗や詐欺など刑事事件に発展する事例も珍しくない。

一日中、ギャンブルのことしか考えられず、ギャンブルが人生のすべてと言ってもよい。

つまり、ギャンブルに心身を支配され、人生の中心に居座られてしまう状態だ。

WHOも指摘する通り、そうなればすでに病気であり、患者に対する加療やケアが必要となる。

さすがに重度の依存症患者として自覚をし、精神科病院に入院して治療を受け始めたとしても、ギャンブルでの快楽体験がよみがえり、無断で病院から脱走する患者もいる。もちろん、脱走した行き先は常連のギャンブル施設である。

一度、ギャンブル依存症に罹患すると完治はしない。

毎日襲いかかる誘惑と闘わなければならず、その誘惑に負けてしまうことも繰り返す。

それを受け入れ、治療やケアとして、周囲の人々が支えたり、突き放したりしながら、関わっていくことが必要となる。

このとてつもない悪魔のような病気との闘いは、精神科医だけでは不十分で、我々のようなソーシャルワーカーも共闘するし、ギャンブラーズ・アノニマス(GA)などのギャンブル依存症者の当事者団体にも援助を求める。

依存症者は当事者団体に参加して、仲間たちと交流しながら支援機関とつながる必要がある。

原則として、一人でギャンブル依存症から脱却することは極めて困難だからだ。

行政はパチンコ店公表ではなく依存症の自覚を促しケアの周知へ

ギャンブル依存症者はウイルスが蔓延していようが、空襲があろうが、ギャンブル施設に通うだろう。

そこが彼らの居場所であり、人生の中心に置かれた場所なのだから。

この志向や価値観を知らず、パチンコ店を公表して「このお店は開いています。行ってください。」と言わんばかりの対策はずさんと言わざるを得ない。

そもそもこれほどパチンコ施設など街中にギャンブル場が蔓延している国も珍しい。

街中でほぼ無規制にギャンブル施設を乱立させて、ギャンブルの危険性も伝えないまま、カジノまで誘致しようという日本だから、ギャンブル依存症に対する視点も弱いのは当たり前ともいえる。

パチンコ店に行かないでください、パチンコ店を開かないでください、ではなく、この状況下でもパチンコ店に通わされて、ギャンブル業界に支配されている人々にできることは何か、真摯に行政は検討してみる必要があるだろう。

ギャンブル依存症者は行きたくて行っているのではない。行きたくなるようにさせられ、行かされている存在である。

緊急事態下において急に要請しても、日常から染み付いた行動は変えられない。

依存症ケアへの予算配分、当事者団体への助成や補助など、依存症対策が不十分な日常がこれらの感染拡大リスクを生んでいると自覚し、新型コロナウイルス収束後の社会をどう作り直していくのか、考える機会にもしてほしい。

いずれにしても、パチンコ店に行かないように呼びかけ、行った人々を非難し排除する社会は感染拡大リスクを広げるという事実が大事だ。

どうしたら行かなくて済むのか、依存症対策の専門家も交えて議論を進めていきたい。

最後にギャンブル依存症者たちの当事者の声明を載せておく。

これを契機に、ギャンブル依存症という病気の患者だと自覚し、主体的に治療やケアにつながってくれれば幸いである。

私たちのほとんどは、自分が本物の強迫的なギャンブラーだとは認めたがらなかった。自分がまわりにいる人たちと違うなどということを、よろこんで認める人間がいるわけはない。だから私たちが、ふつうの人のようにギャンブルができるかもしれないと、役にも立たない実験をしてきたからといって、驚くことはない。どうにかすれば、いつかはギャンブルを楽しむことができるようになるという大きな妄想が、強迫的ギャンブラーに取りついている。この妄想のしつこさには驚くばかりである。この恐ろしい妄想を、たくさんの強迫的ギャンブラーは懲役、狂気、あるいは死の門口にたつまで手放せないでいる。

私たちは自分が強迫的ギャンブラーであることを心の底から認めなければならないことを知った。これこそが回復の第一歩である。ギャンブルに関しては、自分がふつうのギャンブラーと同じだという、あるいは今にそうなるかもしれないという妄想を、まず徹底的に打ち砕かなければならないのだ。

私たち強迫的ギャンブラーは、ギャンブルをコントロールする力をなくした。本物の強迫的ギャンブラーは、決してギャンブルに対するコントロールを取り戻すことはない。私たちも、自分はコントロールを取り戻したと思ったことがあった。けれど、そのちょっとした、あまり長くない中休みの後には、もっとひどい状態がやってきて、せつない、なぜだかわからない落ち込みに苦しまなければならなかった。私たちのような強迫的なギャンブラーは、進行性の病気にかかっているのだということを、私たち全員が一人残らず信じている。少し長い目で見れば、私たちは悪くなることはあっても、決して良くなることはなかったのである。

出典:ギャンブラーズ ・アノニマス日本 HPより