西村再生相「現金給付何回もする必要あるかも」 もう一律の現金給付でないなら止めてください

現金給付を何回かおこなう可能性について言及した西村康稔経済再生担当大臣(写真:つのだよしお/アフロ)

西村康稔経済再生担当大臣「現金給付何回もする必要あるかも」の怖さ

西村康稔経済再生担当大臣が現在検討されている現金給付以外に、何度か家庭へ現金給付を追加で複数回おこなう可能性があることを示唆した。

西村康稔(やすとし)経済再生担当相は5日、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化した場合、家庭への現金給付を「何回もする必要があるかもしれない」と述べた。

複数回にわたって現金給付をすることを視野に入れているとみられる。

出典:西村再生相、現金給付「何回もする必要あるかも」4月5日 産経新聞

現在、4月7日の緊急経済対策の発表に向けて、1世帯30万円の現金給付が検討されているが、この対象世帯は極めて限定的になる案が出ているとすでに報じられている。

多くの市民が生活困窮し、期待感を膨らませている中で、全世帯に現金給付がない。

住民税非課税世帯など、限られた世帯にしか配布されない問題点は先日の記事で指摘した。

「1世帯あたり30万円の現金給付」という巧妙なウソ 現実は対象が限定された現金給付の可能性

今回の西村経済再生担当相の発言も、また現金給付がされるのではないか、今度は対象になるのか、という期待を市民に喚起させてしまうことになるだろう。

現実的に今のままの支給対象では、何度も市民は裏切られる体験を重ねることとなる。

支給対象は一律の世帯ではないのだから。

分断と差別と不公平感を広げる選別的な現金給付

そもそも、なぜ現金給付が一律である必要があるのか。以下は、同じ社会福祉士の渡辺寛人氏の指摘である。

新型コロナウイルスの緊急経済対策「30万円支給の自己申告制」が抱える問題点 新型コロナウイルスの経済対策として現在、安倍政権が行おうとしている「現金支給」は膨大な無駄と排除を生むだけである。

真に困っている人を探して現金給付を手厚くしたいので、金額も30万円に増額したことも報道されている。

しかし、一律の現金給付でない場合、配布される世帯と配布されない世帯が生まれる。明らかな分断が生じる。

今回の経済危機は多くの市民が程度の差はあれ、苦しんでいることに間違いない。

それにもかかわらず、限られた世帯にしか給付がされない場合、どのような感情が生まれるだろうか。

何度も指摘するように、支給対象者への差別や不公平感による妬みや憎悪も出てくるだろう。

生活保護バッシングと生活保護の捕捉率の低さ

実はすでに生活保護制度がこのような選別的な給付によって、多くの弊害を乗り越えられないできた。

日本の相対的貧困率は15.7%と高く、低所得世帯、低賃金労働者も増加傾向が止まらない。

本来は生活保護制度によって支援を受けるべき世帯も、貧困層や低所得層には含まれているのだが、我慢して受けていない実態がある。

生活保護基準を下回る経済状態にある世帯のうち、生活保護制度を利用している割合を「捕捉率」と呼ぶ

様々な研究調査がされているが、専門家の調査によれば、生活保護制度の捕捉率は15%から多くても30%程度だといわれている。

要するに、生活保護基準を下回る所得で生活に困っているのに、約70%~80%の世帯は、生活保護を利用できていない

だからこそ「これだけ働いているのに低収入で苦しい。あいつらはずるい。」「かけてきた年金より生活保護の方が高いのはおかしい。生活保護を下げろ。」「生活保護を受けていても遊んでいるだけだから制度を廃止しろ。」「金など配らず食糧を配布しろ。」「パチンコや酒に使われないように監視を徹底しろ。」「怠け者で働く気がない奴は生活保護を受けるな。」「生活保護の審査を厳密にして不正受給は絶対出すな。」「外国人が受給するなどとんでもない。」など、生活保護受給世帯、低所得世帯へ「憎悪の嵐」が吹き荒れることとなる。

政府が支援する者と支援しない者を選別して、支給対象を一方的に決めることを繰り返せば、生活保護制度の弊害を繰り返すこととなるだろう。

生活保護制度は差別や偏見に晒され、必要なのにもかかわらず、受けたくない制度の一つとなってしまっている。

苦しいときは相互に支え合うことが重要で、困っている人を助けたいのであれば、対象を選別しない一律給付(普遍的給付)が望ましいという理由だ。

生活保護制度と同様に、市民間で分断や不公平感を生じさせるなら、いっそのこと現金給付などしないでもらいたいというのが本音である。

支給される世帯、支給されない世帯、双方にとってよい状況を生まない。

ましてや、現金給付は自己申告制をとるといわれている。その際は窓口に行かなければならない。

生活保護同様、「恥辱感」を有する人は足を運んでくれなくなることが容易に予想される。

必要な人に制度は届かなくなる。

また、そもそも現金給付を数回おこなっただけでは今回のような未曾有(みぞう)の危機を乗り越えることは難しい。

何度、現金給付策が講じられても、支給対象にならなければ非該当世帯にとって意味がなく、分断や憎悪、不信感を募らせるだけだ。

本来は、現金給付に限らず、幅広い対象に向けて、雇用補償や解雇規制、既存の福祉制度を受けやすくしたり、家賃や生活費負担の軽減や支払い猶予などを複合的におこなっていくことが望ましい。

これら様々な政策を導入する際には、くれぐれも分断や不公平感が生じないように細心の配慮を払っていただきたい。