新型コロナウイルス感染者を非難して笑わないでくださいー公衆衛生・二次感染防止の現場実態ー

新型コロナウイルスはもう街中に広がっていて誰でも感染する状況(写真:アフロ)

著名人にも広がる新型コロナウイルス感染拡大

子どもの頃から笑いを運んでくれていたコメディアンの志村けんさんも新型コロナウイルスに感染されていると報道されている。

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阪神タイガースの藤浪晋太郎投手なども同様に感染しているという。

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今後も著名人を含めて、私たちの周辺でも感染拡大は続いていくことだろう。

感染拡大が続いていくと必ず患者に対して「自粛要請があるなか何をしているんだ」「行動の管理ができていないヤツだ」などの非難の声が上がる。

実際に、新型コロナウイルス感染者の行動が明らかにされ、知人や友人と会食していた様子や言動に焦点が当たる。

それらの報道によって「だらしない人間」「きちんとしていない人間」などと批判も起こる場合がある。

この非難や批判は公衆衛生、二次感染予防にとって、とても厄介なものだ。

二次感染予防には陽性反応が出た患者への聞き取りが重要

少し感染症の陽性反応者が発生した場合の保健所の取り組みなどを簡単に紹介しておきたい。

私たちの生活困窮者支援の現場で一般的な感染症は結核である。

結核は戦前に「死の病」とも呼ばれ、致死率が高かった。

しかし、現在は研究や薬剤開発の効果もあり、日本では加療ができれば命の危険が少ない病気である。

ただ、結核も相変わらず、感染者は一定数いて、毎年関係者から患者が発生することもある。

その際には感染拡大を防ぐために、受診した医療機関から保健所へ連絡が入り、患者の行動や接触者がどこにいるか保健師や社会福祉士などが聞き取りを行う。

この聞き取り調査が極めて重要な作業になる。

なぜかと言えば、患者と接触した人々も感染している恐れがあるし、すでに症状が出ている場合もある。

その場合、早期に受診・検査を促さなければ、周囲に感染拡大する可能性もある。

つまり、本人の語りを引き出し、行動して接触した人々を断定し、その人にも症状や異常がないか確認をする作業へと進んでいく。

例えば、簡易宿所に入所していた男性が体調不良で医療受診し、結核が見つかったことがある。

その際には男性に聞き取りをおこない、簡易宿所の同部屋の人や接触者を確認していく作業へと進んでいく。

実際に、同部屋の人からも結核が見つかり、簡易宿所全体に感染が広がっていないか、確認作業へと進んでいく。

他にも、車上生活をしていた男性も栄養失調から結核を発症したが、彼は同じ道の駅で寝泊りをしていた。

道の駅の関係者にも聞き取りを進めることになるし、支援に関わった私たちも病院搬送時の様子などを確認され、今後症状が出たらどうするか、助言なども受けることになる。

このように、保健所はいつも少ない人員で、感染拡大防止のために最善策を日々講じてきている。

恥辱感を受ければ本音で語れなくなる

ここで大事なのは、保健所関係者と患者との関係性だ。

この人に話しても不利益にはならないだろうと安心して話してもらわなければ、二次感染は止められない。

しかし、前述のように患者が感染経路を語る際に、周囲から非難や批判をされる場合はどうだろうか。

例えば、すでに「この時期に何をやっているのか」と患者がインターネット上では批判の対象になっている。

これを受けて、患者本人、あるいは私たちのなかにも「もし自分が感染していたら話せるだろうか」といろいろな感情が湧いてくることだろう。

外出自粛が要請されているのに飲食店に行っていた。

出張に行っていると言っていたが、実は友人と旅行をしていた。

密閉された店舗形態や風俗店などを利用していた。

これらの事実を保健所の専門職に話してもらい、保健所の判断を仰がなければならない。

それが次の患者や死者の発生を阻止する大事な作業になる。

現在も保健所は懸命に感染経路を把握して、感染拡大、パンデミックを押さえ込もうと尽力している。

患者への非難、批判を過度にすることは、この調査に協力してもらえない人々を増やしかねない

正直に語ってくれなければ、これ以上の感染拡大は止められない。

実はすでに安倍首相も強調するように、日本でも「アウトブレイク」(感染爆発)、最近で言えば「オーバーシュート」直前であり、医療崩壊するかどうかのギリギリの攻防戦が続いている。

私たちができることは、患者に社会を信頼してもらい、保健所を信頼してもらい、正直に事実を語れる環境を整備していくことである。

そのためにも、今後、周囲で新型コロナウイルス患者が発生した場合には、非難するのではなく、温かく辛い状況に寄り添ってあげてほしい。