家賃を払えないときは無理して払わないでください。諦めて住居を出ることもしないでください。

住居を失った労働者が多数相談に来られた2008年末の状況。(写真:Fujifotos/アフロ)

安倍首相の記者会見

3月28日に安倍首相が新型コロナウイルスの現状説明、外出自粛要請、今後の経済対策について、記者会見をおこなった。

踏み込んだ支援内容、経済対策になると期待していたわけだが、残念ながら、市民の困窮状態とはかけ離れた中味だった。

政府が新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、様々な自粛要請をおこない、その経済損失も計り知れない状況だ。

このままでは市民は新型コロナウイルスによる感染で亡くなる危険よりも、経済損失で自死や路上生活に追い込まれていくのではないか、という危機感を有している。

市民は月末までに様々な支払いや口座引き落としがある。

住居が県営住宅や市営住宅でなければ、大きな支出項目は家賃や住宅ローンなどの住宅費である。

特に都市部は大きな負担となっている。

安倍首相の記者会見では、市民が大きな負担だと感じている住居費に対する支援に言及されていない。

欧米で広がるレントストライキ

実は欧米諸国では、失業者を中心に家賃や住宅ローンの支払いを猶予したり、不払いをしながら政府への補償を求める運動が活性化している。

通称、レントストライキ、家賃ストライキと言われる社会運動である。

それを受けて、政治も貸主と借主の間に入って、政策の調整に入っている。

つまり、主体的な市民運動がなければ、政治や政策は動かないということだ。

「家賃不払いスト」が勃発

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、世界的に経済活動が低迷。大幅な収入減や緊急解雇という思ってもみなかったトラブルに直面する人が増えるなか、欧米では、自宅の家賃や店舗として借りている物件の家賃の支払いに困窮し、家主に対して、支払い期限の延長や“コロナパニック”が収束するまでの一定期間、支払い免除を求める動きが勃発している。

市民に対して厳しい外出自粛・自主隔離を要請しているアメリカやカナダの多くの地域では、大半の場合、家賃の支払いは毎月、月頭の1日。

4月分の家賃の支払い日となる4月1日を目前に、ツイッターやインスタグラムでは「#RentStrike(家賃ストライキ)」、「#CancelRent(家賃請求を中止せよ)」といったハッシュタグを使用し、家賃の支払いを放棄すると宣言したり、支払期限の延長を求めるユーザーが続出

さらに、チャットツールのテレグラムでも北米のユーザーたちが「US Rent Strike(アメリカ家賃ストライキ)」といったパブリックグループをオンライン上で結成し、このムーブメントを拡散し、市や州といった地方自治体や国に効果的な特令の実施を訴えようと呼びかけている。

米Foxニュースの報道によると、新型コロナウイルスの感染拡大により職を失い、3月第3週に失業給付金に申し込んだ米国民の数は328万人を超えるという。

賃貸世帯が多く、世界で最も平均家賃が高い都市の1つとして知られるニューヨーク州では、市民の約40%が、「収入を失った場合、翌月の家賃が支払えない」と不動産関連サイト、プロパティ(Property Nest)による世論調査に回答

とくに不払い運動への参加が顕著となっている。

同州のアンドリュー・クオモ知事は、20日に住宅ローンの支払いや差し押さえに関して90日間の猶予を与えると発表したが、それだけでは、最も生活の質が低下し、今後の生活に不安を抱える賃貸世帯の人々は救えないと、賃借人保護団体や州議員たちが家賃の支払い猶予を求めている。

軒先に「白シーツ」

そんな“家賃スト”の象徴となっているのが、降参を意味する「白旗」…ではなく、「白シーツ」。

カナダ・モントリオールの住民たちが、玄関先や窓辺に白いシーツを掲げ、家賃ストを行なうと宣言したことが発端となったこのシグナルは、いまやニューヨークやロサンゼルス、シカゴ、アトランタ、フィラデルフィアといったアメリカの都市にも拡大している。

このほかにも、欧米の街には、「家賃は泥棒だ」、「給与がもらえないなら、家賃など払えない。家賃スト」といったメッセージが出没。

ネット上では、アメリカ各都市の自治体に、家賃凍結か、さもなくば、家賃を支払わないと訴える署名へのサインを促す「rentstrike2020.org」と名づけられたキャンペーンサイトも立ち上がり賛同者を募っている。

出典:“コロナショック”直撃の欧米家庭の軒先に「白シーツ」、この意味とは?フロントロウ

日本での社会運動の波及に期待

市民には住む権利があるのだから、その居住権を保障するべきだという主張は、欧米に広がっている。

日本でも家賃を苦しい時期だけでも、猶予してくれるならば、新型コロナ感染の収束後に生活再建も早まるはずだ。

また、明日の生活に備えて苦しい食生活や節約生活をしている場合では、家賃分を当面、食費や生活費に充てることもできるだろう。

ぜひ欧米の社会運動を見習って、日本でもレントストライキ、家賃ストライキを始めていきたい。

これらの社会運動が広がれば、欧米同様、弁護士や国会議員も取り組みに関心を寄せて擁護してくれる大きな力となる。

まずは勇気を持って、事情があって支払えない旨を伝え、仲間と一緒に猶予や補償を求めて活動を始める必要があるだろう。

ネットの署名活動でもいい。SNSで賛意を示す行動でもいい。まずはできることから当事者が動かなければ始まらない

そして、弁護士やNPO、労働組合などに相談もしてほしい。

今回は支払いたくても支払えない、という緊急事態であることが重要であり、誰にも罪がない天災と言ってもいい事態だ。

当時者を責めても、決して意味があるものではない。

だからこそ、不動産業者や大家業をしている方たちは、従来通り、借主や債務者への支払いを求めるのではなく、政府に補償を求めてほしい

「支払え」と言われても、支払う金銭が不足しているのだから、不可能を強いることはできない

社会全体が現状を理解し、家賃滞納やローンの不払いに寛容な社会になるようにしたい。