不要不急の外出自粛要請でも「外出」するしかない人たちーホームレスを感染クラスター化させてはならないー

住居を失った人々の受け皿と化すインターネットカフェ(写真:アフロ)

増加するインターネットカフェからの生活相談

新型コロナウイルスの影響から仕事や収入が減り、生活困窮する市民が後を絶たない。

今月末からアパートの家賃が支払えないため、すでに荷物をまとめて退去したという相談者もいる。

今後も家賃滞納状況は容易に発生してくることだろう。家賃滞納をしている人々への対応が必要になってくる。

またそれらの人々が最初に身を寄せる場所として多いのは、友人宅やインターネットカフェ、ビデオボックス、温浴施設、簡易宿所(通称・ドヤ)などである。

友人宅は一時的に滞在させてもらえることもあるが、長期間は一緒に暮らすことが難しい場合が多い。

結局、インターネットカフェなど非居住スペースへ移動し、そこで宿泊パックを利用したり、12時間利用などを繰り返しながら、生活する拠点になっていく。

いわゆる潜在的ホームレス状態にある人々の発生である。

新型コロナウイルス感染拡大以前から、このような場所からのSOSは日常的にある。

今回もこれ以上の相談が寄せられることにならないように、様々な居住支援対策が必要である。

支援団体から不動産業界との共同行動への要望

そこで、日常的に生活困窮者への支援活動などを展開している団体が以下の通り、要望書を出している。

不動産業界の人々は家賃滞納が見られた場合に、借主を追い出すことがないようにしなければならない。

不動産業者はこの要請に従い、ネットカフェで暮らす人やホームレスに至る人を増やさないように、細心の配慮をお願いしたい。

すべての家主、不動産業者、家賃保証会社への緊急アピール~家賃滞納者への立ち退き要求を止め、共に公的支援を求めましょう~ 

新型コロナウィルスの感染拡大を発端とする経済危機により、雇い止めや解雇、内定取消しが広がり、雇用は継続しているものの収入が減少した非正規労働者、仕事が減って窮地に立つフリーランスや自営業者も増えています。

コロナ危機とも言える社会状況のもと、今後、減収によって家賃の支払いが困難になる人が急増することが懸念されます。2016年の「国民生活基礎調査」では全体の14.9%にあたる世帯が「貯蓄がない」と回答しており、こうした世帯を中心に3月末に支払うべき家賃から滞納する人が続出すると見られます。賃貸住宅を経営する立場の皆さまにおかれましても不安を募らせておられることと思います。

私たち「住まいの貧困に取り組むネットワーク」は、2009年の結成以来、賃貸住宅の借家人(借主)の権利向上をめざしてきました。その中で特に力を入れてきたのが民間賃貸住宅での「追い出し屋」問題です。

家賃滞納者に対して、家主や不動産業者、家賃保証会社等が法的手続きを踏まずに立ち退かせる「自力救済」行為は違法行為で、民事上の責任だけでなく刑事上の責任も生じ得る行為です。家賃滞納者が続出しかねない社会状況において、改めてそのことに留意を促したいと思います。

また、家主と借主は「賃貸住宅契約書」を締結していますが、この契約書は「借主の居住の安定及び貸主の経営の合理化を目的」(国土交通省の説明)としているものです。この賃貸契約書の趣旨もぜひ受け止めていただきたいと考えます。

そして、貧困拡大を食い止めるための政府の緊急対策が具体化していない現状において、家賃滞納者を立ち退かせるための裁判手続きである明渡請求を提起することも控えていただくよう、お願いいたします。

家主の中には家賃収入が減少することにより、生活が脅かされる方もいることは承知しておりますが、家賃滞納問題を解決するためには、滞納者を立ち退かせて空き家にするよりも、借主が公的支援を得て再び家賃を払える状態に復帰できる方がはるかに近道です。

政府が思い切った現金給付を早急に実施し、低所得者の生活を支える制度(生活保護や生活困窮者自立支援法に基づく住居確保給付金など)の要件を大幅に緩和すれば、家賃滞納問題のほとんどは解決します。また、今回の新型コロナウイルスの感染拡大という特別な事情で家賃滞納したことによる家賃収入の損失を政府に補償させる方策も考えられます。

 

家賃滞納により住居を喪失した人は、ネットカフェ等の終夜営業の店舗に移ることが予測されますが、そういった施設は閉鎖的な空間であり、経済的困窮により体力が落ちた人々の間で感染症リスクが高まる可能性もあります。

コロナ危機の混迷をさらに深めないために、すべての家主、不動産業者、家賃保証会社の皆さまに心から訴えます。家賃滞納者への立ち退き要求を行わず、公的支援の拡充を通した問題解決を共に求めていきましょう

出典:すべての家主、不動産業者、家賃保証会社への緊急アピール ~家賃滞納者への立ち退き要求を止め、共に公的支援を求めましょう~

熊本の24時間型温浴施設で新型コロナウイルス感染拡大

実はすでに熊本県ではホームレス状態にあった方が温浴施設に滞在している最中、新型コロナウイルスに感染していたことも報じられている。

25日夜に県内8例目の新型コロナウイルス感染者となった70代無職男性には住む家がなく、熊本市の温浴施設を生活拠点としていた。どこで感染したかは不明で、市は「市中感染の可能性が高い」とみる。施設は不特定多数が利用しており、感染者集団「クラスター」の発生も危惧される。市は「最大の危機」と警戒を強め、封じ込めに全力を挙げる。

市によると、男性は施設に寝泊まりしながら生活保護を受け、新たな住居を探していた。朝晩の食事は施設の食堂で、昼は外食していた。午前9時半に自家用車で施設を出て、午後2時ごろに施設に戻る毎日。風呂やトイレを使い、休憩室や仮眠室で寝ていた。

出典:熊本市、コロナ封じ込め全力 8例目男性が施設利用 クラスター危惧 西日本新聞3月28日

これは恐ろしいことであり、今後、潜在的ホームレスが大勢いる日本では、どこで起こっても不思議ではない事態だ。

安定した住居がない人々が増大すれば、市中感染、パンデミックを引き起こすことは容易に想像できるだろう。

ホームレス状態にある人々を感染クラスター化させることが絶対にあってはならない

そのため、英国・ロンドンでは早速、感染拡大防止の観点から、ホームレスの人々にホテルに宿泊するように対策を講じている。

英ロンドン市長、ホームレスを国際チェーンのホテルに収容へ 新型コロナ対策

ホームレスの人々のためだけではない。社会を防衛するためにも支援を強化するというのである。

感染防止の視点からも、ホームレスを含む市民への経済対策、居住支援は極めて重要だと理解できるだろう。

ドイツでは家賃滞納でも契約解除してはならない対応

しかし、欧米と比較し、日本では未だに市民への生活保障を打ち出す対策が弱い。

それだけでなく、政府が不動産業界への要請や配慮を求めることも不足し、当然ながら貸主への支援も十分でない。

そのため、すでにネットカフェで生活することを考えている若者が潜在的に大勢いることは知られてほしい実態だ。

このままでは、4月以降に外出自粛要請が続いても、住居を失って、外出し続けなければならない人々を生み出すことになりかねない。

橋本一径 早稲田大学教授がツイッターで指摘するように、ドイツでは4月~9月までの半年間、家賃滞納による追い出しを禁止している。

日本でも政府と不動産業界が協議をし、借主を守る対応、家賃支払いの猶予や減免措置、その際の補償を早急に整備していく時期に来ている。