拝啓 麻生太郎財務大臣様 「みんな銀行にお金が余っている」いえいえ。みんな銀行にお金がありません

現金給付ではなく商品券配布にこだわる麻生太郎財務大臣(写真:つのだよしお/アフロ)

麻生太郎財務大臣「みんな銀行にお金が余っているじゃん」

3月24日の朝日新聞の報道によれば、麻生太郎財務大臣が記者会見で以下のように応えているそうだ。

麻生太郎財務相(発言録)

(新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策で、現金給付や商品券配布などの選択肢が検討されていることについて)

一律(給付)でやった場合、現金でやった場合は、それが貯金に回らず投資に回る保証は? 

例えば、まあ色々な形で何か買ったら(一定割合や金額を)引きますとか、商品券とかいうものは貯金には(お金が)あまりいかないんだよね。

意味、分かります?

リーマン(・ショック)の時と違うんだよ。リーマンの時、マーケットにキャッシュがなくなったんだから。

今回はどこにそういう状態があるの? 

みんな銀行にお金が余っているじゃん。だから、お金があるんですよ。要はそのお金が動かない、回らないのが問題なんだから。(24日、記者会見で)

出典:麻生財務相「商品券は貯金にはいかない」 経済対策 朝日新聞3月24日

「みんな銀行にお金が余っているじゃん。だから、お金があるんですよ。要はそのお金が動かない、回らないのが問題…」という部分だが、このような認識で現金給付や商品券配布を検討されているのであれば、相当に危険な認識である。

無貯蓄世帯の急増

麻生太郎財務大臣は言わずと知れた政治歴も長いベテラン代議士である。数々の要職に就き、リーマンショック時(2008年)の首相でもあった。

しかし、彼は日本社会を適切に分析できていないようである。

以前の一億総中流社会、分厚い中間層が存在する時代と今を錯誤しているのではないかとすら思っている。

まず、客観的な事実として「銀行にお金が余っている人は減ってきている」ということだ。

例えば、厚生労働省の「国民生活基礎調査」は3年に一度、約4万世帯を対象に貯蓄状況を調査している。

それによれば、無貯蓄世帯は2010年に10.4%、2013年に16.8%、2016年に15.7%となっている。

近年は無貯蓄世帯が増加し、高止まりがみられる状況だ。約6分の1の世帯は貯金がない

また別の金融広報中央委員会のアンケート調査によれば、2人世帯以上の金融資産非保有率は、2009年の22.2%が2017年には31.2%に増加している。特に、単身世帯では、29.9%(2009年)から46.4%(2017年)に急増している。

特筆すべきは20歳代の単身世帯で、61%が金融資産を保有していない

「国民生活基礎調査」と比較して、このアンケートは金融資産を運用または将来に備えて蓄えている部分に限定しているが、20歳代では顕著に将来の蓄えなどとして、銀行にお金を持っていない。

お金を持っている人と持っていない人の二極化

では、収入が安定していそうな家族がいる50歳代ではどうか。

同じく、金融広報中央委員会による「家計の金融行動に関する世論調査(2018)」では、50歳代の2人以上世帯の金融資産保有世帯の平均値は1,828万円(1,481万円)であり、中央値は1,186万円(900万円)である。カッコ内は「金融資産を保有していない世帯」を含んだ数字である。

平均は多くの資産を保有する世帯が上に引き上げる傾向があるため、層の分厚いところを中心に見た中央値が実態に近い。

さらに、50歳代で11.6%が2,000~3,000万円未満、12.2%が3,000万円以上の金融資産を保有している。

この数字を見てみると、若いうちは仕方がないが、50歳代になれば、やはり「みんな銀行にお金が余っているじゃん。だから、お金があるんですよ。」という麻生財務大臣の話はその通りかもしれない。

しかし、同調査では金融資産を保有していない世帯が17.4%存在することも指摘している。

つまり、日本社会では貯蓄の二極化が起きているのである。

もちろん、貯蓄ができなかった背景には低賃金、非正規雇用の拡大など近年の雇用構造の変化、政策的なバックアップの少なさに起因すると言われている。

首相経験まである麻生太郎財務大臣の政策では、貯蓄が形成できない人々と貯蓄が形成できる人々の二極化を招いてきた。

消費を喚起して経済を立て直すことも大事であるが、まずはこれらの貯蓄がない人々にすぐに現金を配布したり、借金返済を猶予したり、税や保険料の支払免除、現物給付の拡充(家賃や光熱水費、スマホ、ガソリンの無料化という方法もあるー政府は現金給付だけでなく現物給付の検討をー)などの支援を行うことを真剣に検討するべきではないだろうか。

少なくとも、この現状において、現金配布ではなく、消費を喚起するために商品券を配布するということは良い政策とは思えない。

お金があって消費しないのではなく、日々の生活費が恒常的に不足しているのだから。

低所得世帯、無貯蓄世帯は文字通り、仕事が減れば収入がなくなり、路頭に迷う状態と直結してくる。

まずは麻生太郎財務大臣に「みんな銀行にお金が余っているじゃん。」という認識を改めてもらい、適正な政策が実施されることを願うばかりだ。