「100日後に死ぬワニ」から考えたい「電通案件」と2015年過労自殺事件

過労自殺を起こした(株)電通本社ビル(写真:西村尚己/アフロ)

100日後に死ぬワニの大ヒット

きくちゆうきさんがTwitterに100日間、毎日上げ続けたワニを主人公にしたマンガ「100日後に死ぬワニ」は大きな話題になっている。

「100日後に死ぬワニ」は3月20日のワニの死の配信を最後にして、100日間続いたマンガも幕を閉じた。

マンガは100日後に死んでしまうことを知らないワニの何気なく進む日常を描いている。

そこからは多くの方が命の大切さや周囲との関係性の大切さ、日々の生活の貴重さを感じ取っていたように思う。

だからこそ、Twitter上にとどまらず、書籍化や映画化に発展するくらいの大ヒットとなったのだろう。

漫画家でイラストレーターのきくちゆうきさんが手がけ、インターネット上で話題となっていた日めくり4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」が書籍化、映画化されることが分かった。新設された「100日後に死ぬワニ」公式ツイッターで発表された。書籍は4月8日に発売される。

出典:「100日後に死ぬワニ」書籍化&映画化決定!!21日から追悼ショップも

その一方で、ワニの死からすぐに映画化や書籍化、グッズ販売の企画が始まっており、そこに(株)電通が関わっていることも同時に話題となっている。

多くのマンガファンはこの事実を知り、落胆したり、悲嘆することとなる。 

それも当然であろう。社会は電通が引き起こした過労自殺事件を忘れていないからだ。

(株)電通の過労自殺事件

(株)電通過労自殺事件とは何なのか。

もう一度、2015年に起こった電通社員の高橋まつりさんの過労自殺を思い出したい。

高橋まつりさんは2015年12月25日のクリスマスに命を絶った。

高橋さんの残業時間は認定されただけで、月に100時間を超え、過労死ラインを超える働き方が常態化していた。

当時、高橋さんの過労自殺を受けて、2017年1月に石井直社長は引責辞任をし、電通も労働基準法違反の罪で起訴される。

同年10月には電通に罰金刑も言い渡されたが、わずか50万円という判決に多くの人々が憤りを持ってニュースを受け止めた。

電通に入社後、月100時間を超える残業をしながら、懸命に働いていた高橋さんの日常は過去の本人Twitterからも理解できる。

当時のTwitterからは長時間労働に苦しみ、上司らからのパワハラやセクハラも常態化している様相が伝わってくる。

高橋さんのTwitterアカウントは現在も残されており、私たち社会に多くの示唆に富む教訓を与えてくれている。

二度とこのような若者の命を奪う企業を野放しにしてはいけないのだ、と。

実は1991年にも電通は新人男性社員を過労とパワハラによって、自殺に追い込んでいる。一度だけではないのである。

当時もこのようなことは二度と起こしてはならないと言われていたが、再度、繰り返させてしまった痛恨の事件だ。

しかし、その教訓は現在でもほぼ活かされていない。

当事者である電通自体もこの事件を契機に反省し、労働環境を改善すると思われたのだが、2019年9月、残業時間の上限を定める労使協定を違法に延長させていたことなどを理由として、労働基準監督署から是正勧告を受けている。

相変わらずの労働者の軽視ぶりは目に余るところである。もう一度、同様の事件が起こりかねないのではないか、と危機感を覚えている。

政府も働き方改革を進め、残業時間規制に取り組む最中、何も考えていないと言える所業である。

高橋まつりさんのご遺族である高橋幸美さんは娘の死を受けて、全ての労働者が同じ思いをしないように懸命に活動を続けられている。

その活動報告を私自身、何度も聞いているが、気丈なご遺族であり、尊敬する方でもある。ぜひ幸美さんのTwitterにも注目いただきたい。

「100日後に死ぬワニ」という作品に罪はない。日常を振り返る良い作品である。

しかし、その日常を無惨に奪っていき、さらに反省が全く足りない企業に対して、私たちは厳しい批判をし続ける必要があるだろう。

ぜひこの作品を見る際には、電通過労自殺事件を思い出して欲しいし、ご遺族の主張に耳を傾けてほしい。

日本で全ての労働者の命が大事にされる環境を早く作れるように。