新型コロナウイルスによる生活困窮相談の現場インタビュー市役所職員から挙がる柔軟な制度運用を求める声ー

新型コロナウイルスの影響による生活相談対応に忙しい市役所の現場(写真:アフロ)

役所にも増える新型コロナウイルス関連の生活相談

新型コロナウイルスの影響から、失業、休業してしまい、生活困窮する市民が増えている。

市役所で働く生活困窮者支援窓口の職員たちは現在、急ピッチで支援体制を構築しており、市民が困らないように対応策を打ち出し始めた。

生活困窮者支援窓口で相談担当をしている市役所職員へインタビューをしたので、現場で起こっている内容をまとめて報告したい。

ーー今回は多忙ななか、インタビューに応えていただきありがとうございます。匿名で市役所で働く方(男性)の声を紹介したいと思います。簡単にどんな仕事をされているのか、どんな相談が寄せられているか、教えてください。

 

私は関東地方の市役所で生活困窮者自立支援制度の担当をしています。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響は相談窓口でも感じられるようになってきました。

会社の休業のためシフトの調整を頼まれている非正規雇用のAさんからは「このままでは減収が見込まれ、生活できない」といった相談がありました。

同じく非正規雇用のBさんからは「咳が続いているが、病院に行くほうが感染リスクが高まると言われているので、様子を見て出勤を自粛している。長く続くと家賃の支払いが滞ってしまうかもしれない、元の収入に戻るまでの支援策はないか」、といった相談が出てきています。

厚生労働省からの事務連絡

ーー追い詰められた相談がすでにあるわけですね。ただ離職や失業ではなく、休職、休業というところに支援の難しさがあるように感じます。

厚生労働省からは市役所や福祉の現場にどのような通知、対応をするように指示が来ていますか。

厚労省からは通知が来ています。

さる3月3日に厚生労働省社会・援護局生活困窮者自立支援室から、「新型コロナウイルスに関連した生活困窮者自立支援制度の活用について」という事務連絡が出されました。

「新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う全国的な学校等の一斉休校や、事業所の休業等により生活に困窮する方については、生活困窮者自立支援法(平成 25 年法律 第 105 号)に基づく自立相談支援機関において、家計や仕事、生活上の困りごとなど幅広く相談を受け止めていただく」といった内容で、「庁内の連携体制を強化し、生活に困窮する方に対する包括的な支援を進めること。」を促すものです。

この通知に基づいて、私たちの自治体では市役所職員全員が閲覧する掲示板システムにこの通知を掲載し、市役所の各部署で生活困窮者を把握した際には自立相談支援事業の窓口に相談者をつないでもらうよう依頼しました。

なかなか庁内連携が進まないところもあったのですが、一つのきっかけになりました。

ーー税金や保険料、水道代を滞納せざるを得ない方もいますから、庁内で連携して生活相談につながるといいですね。

通知は他にどのような内容ですか。支障がない範囲でお願いします。

この通知の中には「特に住まいに関する不安を抱える方については、住居確保給付金の利用とともに、一時生活支援事業の活用の検討等を積極的に進めること。」ということも書かれています。

ーーなるほど。住居確保給付金や一時生活支援は生活困窮者自立支援法に位置づく事業ですよね。ただ、今回の新型コロナウイルスによる相談者に対応できますか。今の制度の枠組みだと支援対象者が限られてしまい、支給対象や支援対象から漏れる人が大勢出てくることを心配しています。具体的には「休職」や「休業」している労働者も対象にしなければいけないんじゃないですか?

はい。そうなんです。「一時生活支援事業」はホームレス等の一定の住居を持たない方やネットカフェに寝泊まりし住居形態が不安定な方等に一定期間、宿泊場所や食事等を提供して自立を支援する事業です。

そして、「住居確保給付金」は、離職者かつ就労能力及び就労意欲があり、住宅を喪失している方又は喪失するおそれのある方を対象として住宅費を支給する制度なのです。

厚生労働省や自治体は一歩踏み込んだ柔軟な制度運用を促すべき

ーーということは、やはり先ほどの2名の方は支援できないということですよね?

はい。先ほど例にあげたAさんやBさんのような相談の場合、どちらの制度も該当しないので困っています。

感染拡大が収まっても、減収により食事や光熱費で精一杯の生活の中で、暮らしの基盤である住まいを失ってしまっては、仕事を再開することは難しくなります。

ーー以前から住居確保給付金は使いにくいという声が挙がっていました。どのような制度改変が必要ですか。

例えば、「住居確保給付金」の「離職」や「求職」の要件が緩和されれば、AさんやBさんのような状況の方にも早期に支援することができるのではないかと考えるのですが…

ーーなるほど。やはり雇用は継続しているけれど、自宅待機、休業になっている労働者ですね。休業補償だけでなくて、住居確保給付金として家賃を柔軟に補助してあげられたら、かなり助かる世帯はありますよね。他には厚生労働省の通知で気になる点はありませんでしたか?

うーん。今回の厚労省の通知には生活保護制度との連携についての記載がなかったのです。

生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の連携について、つまり、生活困窮者自立支援制度だけでなく、生活保護制度も積極的に利用して支援するように通知してほしいと思いました。その再確認の通知があってもよかったと思います。

ーー生活保護制度はこういうタイミングですから、遠慮せずに利用してほしいし、厚生労働省も制度利用を推奨していいですよね。

厚生労働省に支援現場から言いたいことはありますか?

国ですか。早急にお願いしたいのは、住居確保給付金について要件緩和をすることですね。前に話したものです。これが使いやすくなると休職中、休業中の市民が家賃も払えて、住宅を失う事がなくなります。

このタイミングで厚労省が各自治体に向けて、行政内で各部署が連携することを求める通知を出したことについて、仕事が早いなーと評価しています。

引き続き、具体的な対策、柔軟な制度運用への変更を検討してほしいとお願いしたいです。

ーー本当にそうですよね。困っている市民を助けられない住居確保給付金ではダメだと思います。厚生労働省の動向に私も注視していこうと思います。ありがとうございます。ちなみに市議会では何か対策が議論されていますか。

先ほど話したように、庁内連携については、各自治体に向けて通知が出されたので、現場は動き始めています。

これから、市議会の議員さんが委員会質疑とかで、質問されるかもしれないですね。関心を持ってくださる市議会議員さんが増えるとありがたいです。

折しも来年度の予算審査を行う時期でもあるので、地方議員の方々には、それぞれの自治体でこの通知に基づいた取り組みがなされているか機会をとらえてチェックして欲しいと思います。

ーーなるほど。厚労省から通知が出ていることも知らない議員さんがいそうですが…。

庁内連携はすぐできるので、やっていない自治体がやらざるを得なくなるように市議会議員さんには行政のチェックをお願いしたいですね。新型コロナウイルスの影響で餓死や孤独死などないように対策を進めてほしいです。

ーー本日はお忙しいなか、時間を割いていただきありがとうございました。

厚労省の求める庁内連携を進めること、住居確保給付金の柔軟な運用の必要性など、現場ならではのお話を聞く事ができました。