インスタ動画投稿したくらいで人生詰むわけがねぇだろーバイトテロ問題への厳罰化に弁護士が反論ー

コンビニや飲食店で起こるいわゆるバイトテロ問題(写真:アフロ)

相次ぐバイトテロ問題をどう防いでいくのか

先週から毎日のように、いわゆるバイトテロ問題が各メディアで報じられ、議論も続いている。

僕もこのところ、テレビ出演3回、取材は数えきれないほどお受けしている。

最初はバイトテロ問題がくら寿司、セブンイレブンで発覚したことを契機にSNS上で話題になった。

それを受けて、他の各企業のアルバイトが動画投稿したものも拡散されている。

過去のものも含めて一度動画が流出すると、各企業は謝罪や対応に追われる状況になってしまう。

当然、企業ブランドの価値が毀損される事態になるので企業は頭を悩ませていることだろう。

各企業には引き続き真剣にこの問題と向き合ってほしい。

僕たち消費者の口に入る食品や商品を扱う従業員や店舗の管理体制はどうあるべきなのか、継続して対策をしてほしい。

当初から僕はアルバイト個人を非難して、法的措置も含めて厳罰化しても、抑止力には限界があると指摘してきた。

なぜならば、アルバイト個人を槍玉にあげても、企業や組織の体制を整備しなければ繰り返される問題だからだ。

なぜバイトテロとネットスラングで書かれるかと言えば、原則として相対的に低賃金のアルバイトが起こすからだ。

それも正社員や管理監督者が不在の時間帯である。

アルバイトは正社員や管理監督者が不在のなかで、店舗の業務全般を担う事例が多くなっている。

アルバイトが担う責任と賃金、処遇も実態に見合ったものになっていない事例も多い。

コンビニに行ってもらえれば分かるが、宅配便、商品の陳列・発注、レジ、調理など業務は多岐にわたる。

郵便局から銀行、飲食店、喫茶店のような機能まで持たされて、実務を担うのは主にアルバイトだ。

もちろん責任をもって業務遂行するアルバイトが大多数だろうが、一部アルバイトのなかにはこのような行動に出てしまう者もいることだろう。間違いなく今後もそのような従業員は一定数存在する

だからこそ、アルバイトに依存している産業は、特に正社員比率を高めて、管理をしっかりしてほしいと再三指摘してきている。

コンビニに限らず、特に飲食産業、小売産業は人件費を削減するために正社員や管理監督者を著しく削減してきた。

その歪みがバイトテロを生んでいるとみる方が自然ではないだろうか。

管理監督者を置けない、正社員比率を高められないのであれば、食品衛生上も危険なので、長時間営業、24時間営業も見直すべきではないか。

過去には牛丼チェーン店すき家で、いわゆる「ワンオペ」が話題になった。

深夜の店舗をアルバイトがひとりで営業している状態が問題視されたし、その隙を狙って強盗事件もいくつか起こってしまった。

アルバイトの身が危険だし、そのアルバイトに大きな責任を負わせることは無理であろう、見直すべきだろう、と議論も起こったが、現実は大して変化がなかった。

黒葛原歩弁護士によるバイトへの厳罰化反対意見

バイトテロはあたかも企業が被害者のように映っているが、アルバイトに職責を任せすぎることについて再度検討が必要だろう。

例えば、黒葛原歩弁護士もアルバイトを多用する企業側の責任を問いながら、問題が起きるとアルバイトに厳罰を科すというのは理解できない旨の主張をしてくれている。

黒葛原弁護士の渾身の主張をお読みいただけたら幸いである。

そして彼の主張するくら寿司にセブン、バイトテロ「見せしめの法的措置」はむしろ逆効果ということに賛同しているし、企業の体制整備こそ改めるべきだという僕の主張とも合致するところだ。

少しだけ上記の黒葛原弁護士の見解を紹介しておきたい。

従業員による加害行為が故意によるものである場合には、こうした減額がなされないケースもあるが、最高裁判例の文面上は、加害行為が故意によるか、過失によるかという点は、あくまで「加害行為の態様」の一つとして考慮されているにすぎない。

いわゆる不適切動画の投稿についても、こういった減額がなされる余地はある。アルバイトであって賃金水準が低いことや、正社員である監督者の不在などは、減額要素として考慮される可能性があるだろう。

また、企業側が不適切動画の投稿に伴い発生した会社の売り上げ減少とか、信用回復のために要した費用について賠償請求できるのかというのも、実はかなり微妙な問題である。筆者としては、動画投稿者がこういう損害の賠償義務を負うことは、普通は考えられず、仮にあるとしても、かなりまれなことであろうと考えている。

要するに、企業側がアルバイトに低賃金で過度な責任を負わせ、管理監督も十分されていないなかで起こった。それについてはアルバイトに賠償責任のすべてを負わせることは無理だろう。

本来的には限られた範囲にしか閲覧者がいない、インスタグラムのようなSNSの投稿動画について 、被害に遭った企業の売り上げの減少や、信用回復のための広告費のようなものまで、動画投稿行為と因果関係のある損害と認定されるものだろうか。筆者としては、裁判所において、普通はそういう判断はなされないのではないかと考えている。

過去の判例からも裁判所の決定は、企業が求めるレベルの厳罰まで判断しないのではないか、という見解も挙げられている。

またアルバイトに多額の賠償請求をしても支払い能力は低く、それも分かっていて雇用しているのだから「見せしめ」的な厳罰は印象を悪くする。

この種の事件で賠償請求に打って出ることによるデメリットは、決して軽視できないものがある。こういう裁判は誰から見ても「見せしめ」と映るから、現場の労働者、そして求職者を萎縮させる。アルバイトはお金が欲しくて働きにくるのに、逆に会社から訴えられて巨額の賠償請求をされるかもしれないというのでは、面接に向かう足も遠のくというものだろう。

冷厳に懲戒処分を実行し、必要な範囲で社会に向けて謝罪し、他の従業員に対しては規律の引き締めを通達する、それで十分ではないだろうか。

黒葛原弁護士の見解にはいちいち頷ける。

このような厳罰を示唆する企業で働きたいだろうか。僕なら働きたくないし、人手不足なのだから、他のアルバイト先を探したいと思う。

今回の黒葛原弁護士の主張はあくまで一法律家の見解だ。異論もあるだろう。

しかし、企業や消費者にはこれらの観点からアルバイトに依存するビジネスモデル、再発防止策をより謙虚に再考してほしいのである。