「子どもの貧困」は親の問題であるー特に母子世帯はさらに顕著であるー

日本では大半の母子家庭が困ってしまう(ペイレスイメージズ/アフロ)

やっぱり子どもの貧困は親の問題である

今野晴貴さんが記事にした「子供の貧困」は親の問題であるが話題になっている。

「子どもの貧困は親の問題である」というと、怠けている親や不適切な親の養育問題への批判につながりかねないし、自己責任の論調が吹き荒れかねない。とんでもない親がいるのだから、親が悪いと一方的な非難をしてしまうこともあるだろう。

しかし、表題がセンセーショナルなだけで、内容はいたって事実を基礎にワーキングプアの広がる実態を明らかにしている。

もちろん彼の論旨は親のダメさを告発しているのではなく、どれだけ頑張っても賃金が低い労働問題、働き方の問題が改善されない限り、子どもの貧困は改善しないとまとめている。

これは社会福祉、社会保障分野から見ていても全く同感である。

僕はこれまでにも各企業の非正社員比率の高さを明らかにしながら、ワーキングプアの温床、子どもの貧困拡大の一因になっていることを繰り返し指摘してきた。

過去には働かない怠惰な者たちが貧困になるのだから自己責任だろうという意見もあったが、いまでは働いても貧困に陥ってしまい、そこから抜け出せない構造への理解が注目を集めている。

今野記事もそのような視点から書かれており、秀逸な現状分析である。

子どもの貧困は働いているのに貧困なお母さんの問題でもある

さて、これを受けてさらに親の貧困がどこに集中して現れているのか補足しておきたい。

まず日本の貧困を語るうえで、ひとり親世帯、なかでも母子世帯の貧困は看過できるレベルをはるかに超えているからだ。

ひとり親世帯数は約142万世帯であり、母子世帯数は約123万世帯、ひとり親世帯のうち約86%が母子世帯である(厚生労働省2016)。

日本のひとり親世帯はおおむね女性ひとりでの子育て世帯と言ってもいいだろう。

まず日本のお母さんたちは世界で類例がないほどよく働いている

ひとり親世帯の就労率
ひとり親世帯の就労率

上記のOECD調査に限らず、どの統計資料でも、怠けているから貧困になるのではなく、働いても貧困だという女性の貧困の事実が浮かび上がる。

○母子家庭の81.8%、父子家庭の85.4%が就労

(海外のひとり親家庭の就業率) アメリカ(66.4%)、イギリス(52.7%)、フランス(68.8%)、イタリア(71.6%)、 オランダ(74.2%)、ドイツ(64.9%)、日本(85.9%)OECD平均(66.5%) (出典)OECD Family databaseより(2011年の数値。日本の数値は2007年)

○就労母子家庭のうち、「正規の職員・従業員」は44.2%、「パート・アルバイト等」は43.8%

就労父子家庭のうち、「正規の職員・従業員」は68.2%、「パート・アルバイト等」は6.4%

【収入の状況】(平成28年度全国ひとり親世帯等調査)

○母子家庭の母自身の平均年収は243万円(うち就労収入は200万円)

父子家庭の父自身の平均年収は420万円(うち就労収入は398万円)

○生活保護を受給している母子世帯及び父子世帯はともに約1割

出典:ひとり親家庭等の支援について 厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課 平成30年4月

少しまとめてみよう。

OECD調査によれば、日本はひとり親世帯の就業率が最も高い

そのうち、母子世帯の就労率は81.8%と極めて高い数値を示している。

もちろん、国際比較してみても、子育てをしながらこれほど働いているお母さんがいる国はない

そして、男女の正社員比率も大きな違いがある。

男女平等が叫ばれていても、雇用形態をみれば明らかに家計を補助するための「非正規雇用」が多いのだ。

男性は家計自立型の正社員、女性は家計補助型の非正規社員という働き方が厳然として残っている。

要するに男女差別である。ジェンダーギャップ指数が110位という日本の深刻なまでの女性差別の実態がここでも垣間見える。

現在は男性ですら、家計自立型の正社員の仕事が非正規雇用や低賃金労働に移り変わっている中、女性の雇用形態や職業上の地位は未だに確立していない。

だから、就労収入も著しく低い

就労収入は約200万円となっているが、あくまで平均値なので、多くの母子世帯はこれよりも少ない実態がある。

さらに、働かなければ生活費や教育費に困ってしまうという社会保障給付の弱さもある。

厚生労働省も母子家庭の現状を知りつつ、生活保護を受けている世帯は要保護世帯のうち、1割程度だと指摘している。

これもあり得ない捕捉率の低さである。これでは母子家庭には生活保護が存在していないといってもいい。

生活保護が彼女らにとっては形式的な制度であり、身近で利用しやすい制度になっていない。

母子世帯への生活保護は、本来、制度利用できるのに大半が利用していないのだから、逆に利用すること自体が甘えのような構図に見えてしまう。

みんな我慢して生活しているのだから、あなたも頑張って我慢して働きなさい、という突き放す構図だ。

しかし、繰り返すが、働いても貧困から抜け出せない。構造がそうなっていないからだ。

ひとり親世帯等相対的貧困率(OECD)
ひとり親世帯等相対的貧困率(OECD)

母子家庭を含むひとり親世帯の相対的貧困率は世界最悪の水準である。

厚生労働省発表でも、母子家庭など大人1人で子どもを育てている世帯の人の貧困率は50・8%である。

これほど酷い数値の国はない

だからこそ、僕もあえて子どもの貧困は親の問題であると断言しておきたい。

特に女性が働いても賃金が低すぎるうえに、それを補う社会保障が壊滅的な状態だ。

これは子どもにとっても悲劇でしかない。

子どもの貧困をなくすためにも、普通に働いたらまともな賃金を支給する、普通の国にある社会保障を整備する、という当たり前のことから始めなければならない。

そのためには、必要な生活保護制度の申請、制度の改善、社会保障給付を求める取り組み、労働運動による賃上げや未払い賃金の要求などが必要だろう。

これは今野晴貴さんも指摘している通り、いわゆる権利要求、権利行使の行動に他ならない。