「子ども家庭福祉士」の国家資格創設よりも福祉専門職の労働条件向上をー子ども支援の資格創設議論を憂うー

幸せに過ごす子どもや親(写真:アフロ)

社会福祉領域にまた国家資格!?もういらないでしょう

2月6日付けで福祉新聞に虐待から子ども守る新たな国家資格を 超党派の国会議員が議論という記事が配信された。またこのどうしようもない議論が始まったか、と思った。

以下にその記事を引用しておきたい。

超党派の国会議員で構成する「児童虐待から子どもを守る議員の会」が1月29日、開かれた。自民党の「児童の養護と未来を考える議員連盟」との共同開催で、テーマは子ども分野の新たな国家資格。西澤哲・山梨県立大教授が「子ども家庭福祉士」(仮称)創設の必要性を訴えた。

西澤教授は、1990年代から虐待対応が増加して児童相談所に求められる専門性が、施設に入所させる制度運用から、家族支援も含めたソーシャルワークへと変化していると指摘。高度な知識と技能が必要なのに、数年で異動する任用資格では専門性が育たず、問題が深刻化すると説明した。

出典:虐待から子ども守る新たな国家資格を 超党派の国会議員が議論(福祉新聞)

近年、子ども虐待の認知件数は増加しており、その対応に児童相談所や子ども家庭支援員、児童福祉司などが奮闘している。

その支援の質を上げるためにも新しい国家資格が必要だという主張だ。

まず皆さんは子どもや家族に関わる福祉・心理など専門職のなかにどれだけの資格がすでにあるかご存じだろうか。

国家資格、民間資格関係なく一部を列挙してみたい。これらはごく一部だ。

児童福祉司、社会福祉主事、保育士、子育て支援員、放課後児童支援員、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士、子育て支援カウンセラー、育児セラピスト、伴奏型支援士・・・。

ここに「子ども家庭福祉士」という名称の資格をさらに創設したいという。

僕は正直なところ、まったくその意義が分からない。

もう既存の資格で十分である。

今も各専門職は研修や経験を重ねながら尽力を続けているし、前述した資格保有者も増えてきている。

なかには複数の資格を取得し、専門職能団体にいくつも所属して、会費も複数支払いながら活動する者もいる。

僕は社会福祉士という資格しか保有していないが、友人には精神保健福祉士、保育士、弁護士などの資格も併せて有している者も多い。

資格を保有している福祉専門職は手前みそになるが、向上心が高い人も多く、勉強熱心な人も多い。研修にも繰り返し参加しながら研鑽する姿はよく見られる光景だ。

それでも支援の質に問題があるとすれば何が要因だろうか。

そして、支援の質は新しい国家資格創設で本当に向上するのだろうか、という疑問も湧いてくる。

結論から言えば、それよりも職員の増員、労働条件の向上こそ必要なのではないか。

国家資格創設より福祉専門職の労働条件向上を

ご存じの通り、現在の児童相談所を含む職員の人員、予算は先進諸国でも極めて少ない。児童相談所に限らず、社会的養護が必要な子どもたちにもほとんど予算が計上されていない。

公務員バッシングもずいぶんと効果があったようである。各行政機関の人員はギリギリのなかで奮闘している。

子ども虐待の認知件数の伸びと比べても、圧倒的に福祉専門職は足りていない。

さらに「官製ワーキングプア」とよばれるとおり、公務員である福祉専門職であっても近年は非正規雇用も多い。

他人の世話をしている場合ではないような賃金で働きながら、問題に向き合わざるを得ない職員がどれほど多いことか。

このように、どこの支援現場でも長時間労働、低賃金があり、福祉専門職が疲弊している。

なかには「燃え尽き症候群」やうつ病に罹患して職場を離れていく者もいる。

子ども支援の現場に身を置いているものなら、いま必要な対策が何かわかるはずではないだろうか。

国家資格の創設よりも人員の補充や予算確保による福祉専門職の質の向上だろう。

最近はどこでも予算の制約があるからこそ、本質的な課題解決をあきらめ、「やっている感」を出すような施策が増えてきた。

このような環境、背景のなか、新たな資格が出来ても支援の質の向上は限定的だろう。

しかし、新資格が出来たことを成果だとしたい、あるいはその運用で成果を強調したい人々にとっては必要なのかもしれない。

いま本当に必要な議論は何だろうか。

いま政府や自治体がおこなうことは新しい国家資格を創設することではない。

現場の福祉専門職が働きやすく、経験やキャリアを積み重ねていくことが出来るような処遇、給与、人員配置をしていくことではないだろうか。