お金がなくても保険証がなくても受診できる病院の欠陥と課題ー無料低額診療施設を広げるためにー

診察する医師(写真:アフロ)

お金がなくても保険証がなくても受診できる病院とは

昨日はインフルエンザや風邪が大流行ーお金や保険証がなくても病院にかかる方法(無料低額診療施設の紹介)ーという記事を配信した。

インフルエンザに罹っていても、医療費を気にして受診できない市民が多いためだ。

結核も含めて感染症が蔓延しないためにも、様々な事情があれ、早期に受診をしてほしいと思う。

さいわいにも多くの方にSNS等で拡散いただき、情報を伝えることが出来た。

SNS上の感想として「こんな制度は知らなかった。素晴らしい制度だ。」「いざというときに安心できる情報だ。」「多くの人に知ってもらうべきだ。」などと、制度を称賛する意見が多数寄せられている。

苦しさを我慢することは辛いことなので、この情報によって、そこから解放される人々が増えることを願っている。

引き続き、生活困窮状態にある方や無保険状態にある方、感染症の疑いがある方、外国籍の方など様々な事情がある方に気軽に無料低額診療施設を利用してもらいたいと思う。

社会福祉法に規定された無料低額診療施設は、篤志家(とくしか)の病院関係者が届出をして事業運営をおこなってきた歴史がある。

主には済生会病院だが、近年は貧困や格差の拡大もあり、以前から熱心に地域医療に取り組む全日本民医連日本医療福祉生協加盟の病院なども届出をしながら取り組みを進めてくれている。

各病院には医療相談室がある。

そこにはわたしと同じ社会福祉士など福祉専門職が配置されていて、医師や看護師と連携しながら、相談対応や事業運営に携わっている。

診療に限らず、生活や福祉に関連する悩みを聞き、生活安定のためにサポートをおこなってくれることも、無料低額診療施設の特徴だ

例えば、ホームレスの方が受診に来た場合、診療をするだけでなくアパート探しや生活保護申請に同行してくれる事例もある。

あるいは、10代の妊婦の場合、家族関係を調整したり、各種福祉制度を申請したり、出産後の見守りをしてくれる事例もある。

要するに、「診療+生活支援」の病院だと思っていただけたらいいと思う。気軽に医療ソーシャルワーカーに相談してほしい。

無料低額診療施設の届出病院は地域によって偏在している

しかし、これらの無料低額診療施設はいくつか課題も抱えている。

ひとつめは地域の偏在である。

各都道府県の無料低額診療施設の一覧を見ていただけたらお分かりだと思うが、お住まいの地域に届出病院がない場合も珍しくない。

東京都内で見ても無料低額診療施設がない自治体もあるし、地方では各県に1、2か所という場合もある。

利用したくても無料低額診療施設が遠すぎて行けないということもよく聞く話である。

無料低額診療施設はあくまで篤志家(とくしか)による慈善事業として民間がおこなうものという意味合いが強かった。

地域に篤志家(とくしか)がいれば開設するし、いなければ資源が不足するという実態である。

そもそも事業の性格上、利潤が上がるものではないため、多くの病院は届け出たくても難しい実情もある。

要するに、強く行政による関与が取られてこなかった領域であり、各病院、各地域の独自性に委ねる方針が取られている。

今後、無料低額診療施設の意義が社会的に認知され、その必要性が知れ渡るようになれば、市民の要望、医療関係者の尽力などで無料低額診療施設の開設はますますおこなわれていくだろう。

無料低額診療施設が不足する地域住民や政治家、医療関係者の方はぜひ新規開設も含めて検討いただきたい。

無料低額診療施設で診察後の院外処方の薬代は補助対象!?

ふたつめの課題は、院外処方の薬代、治療材料などが補助対象になっていない場合がある。

無料低額診療施設は民間事業であるため、病院ごとに、その対象や範囲を独自で決定している。

無料や低額の範囲を独自で設定しているし、場合によっては病院が立て替えている事例もある。

これらの補助範囲を決めるにあたって、各自治体の補助や支援も欠かせない。

しかし、各自治体も財源が潤沢にあるわけではないので、常に議論し続けなければならないし、市民の合意を得ながらの運営になる。

例えば、北海道では旭川市や苫小牧市など4市町が薬代、治療材料の助成までしている。

これらの無料低額診療施設を運営している北海道民医連では、さらに薬代助成を札幌市に要望しているし、これ以外の自治体では補助をしているか否かはバラバラである。

補助がない場合は、事実上、各病院が持ち出しで支援している場合もあり、制度上の欠陥だと言わざるを得ない。

診療をして薬剤を処方しないわけにはいかないだろう。この部分は制度上、想定されていないのである。

無料低額診療施設に関連する院外薬局に対しての制度創設や通達について、厚生労働省も方針を決めておくべきだし、補助や助成も前向きに検討してほしい。

そもそも、本来的には無料低額診療事業の対象者はおおむね生活困窮者であり、その支援をする責任は日本国憲法25条にも規定されている通り、国家にある。

最前線の自治体に予算がなければ、国家が支出を検討する必要もあるだろう。

引き続き、無料低額診療施設の需要は高まり続けている。今後も本事業によって救われる市民は後を絶たないだろう。

誰もが困ったときに利用できるよう、無料低額診療施設をこれからも整備・拡充していきたいものである。