僕がZOZOTOWNの非正規労働者の賃上げにこだわる理由ー日比谷公園年越し派遣村の教訓と派遣労働者ー

新習志野駅でZOZO派遣労働者に語りかける著者(エキタス提供)

ZOZOTOWNとのこれまでのやり取り

僕は(株)ZOZOの前澤友作社長が1,000億円近くかけて月に行く予定という記事を昨年見てしまった。

その後、Twitterで「月に行く金があるなら非正規雇用などの労働者へ還元すべき」「資本家が利潤をあげられるのは労働者がいるため」など、資本家や企業の言動に対する反対姿勢を貫いてきた。

様々な論点はあるが、一番追及してきたのは、得られた利潤を労働者に還元し、足元の労働者の処遇改善を先にしろ、ということである。

そういうと決まって「ZOZOは待遇がよい」「社員の満足度も高い」「外野が勝手に騒ぐな」「前澤社長の資産と会社資産を一緒にするな」などの意見が飛んでくる。

まずZOZO「給料一律同額」に驚き。平均年収と社員のホンネは?など多くの記事でも指摘されているが、(株)ZOZOは基本給が一律でボーナス支給も一律だそうだ。悪口や競争原理をなくすためだというが、そもそも意味が分からない。

正社員でも一律の賃金に不満があれば賃上げ要求をすべきである。

さらに、彼らのいう社員のなかには、派遣労働者や非正規労働者は含まれていない。派遣労働者の時給は1,000円程度であり、社員と一律ではない。

ZOZOをめぐる報道や記事は、前澤社長を含む「光」の部分が多く、「影」として存在し、裏方で支えている派遣労働者には一切焦点が当てられていない。このところ、ZOZOの派遣労働者に焦点化された記事は一本もない。

社長らの自己愛や承認欲求を満たすために派遣労働者が利用され、その存在を軽視するならば企業の社会的責任を負っているといっても形式的と言わざるを得ないだろう。

僕はここを一番問題視してきている。

ZOZOの幹部社員含めて、聞いていないことは自ら情報公開するにもかかわらず、派遣労働者数やその人々の処遇は全く公開していない。

隠したい意図があるにしてもあまりにも露骨すぎる。

実情を語る20歳代男性の派遣労働者と労働組合メンバー(著者撮影)
実情を語る20歳代男性の派遣労働者と労働組合メンバー(著者撮影)

僕は直接、ZOZO派遣労働者と話したり、交流させてもらってきている。

例えば、新習志野の倉庫作業をしている20歳代男性の時給も1,000円であり、時給を上げてほしいという声が現場からも聞こえてくる。

現代日本の雇用構造を象徴する正社員と非正規社員の待遇差別、処遇差別が足元にある。

もちろん、日本に広がっているワーキングプアや子どもの貧困、若者の貧困がここから派生することは言うまでもない。

ZOZOBASEと描かれた輸送バス(エキタス提供)
ZOZOBASEと描かれた輸送バス(エキタス提供)

正社員は一律で給与保障されているが、現場の配送を担う倉庫で働く労働者は派遣労働者、非正規の外国人労働者だ。

ZOZOBASEと描かれたバスにそのような労働者が乗せられ、毎日毎日倉庫に行き来させられていた。

僕は大みそかの12月31日に労働組合メンバーと派遣労働者に語りかける街宣活動をおこなったが、労働者は年末年始も昼夜を問わず働いていた。

ZOZO派遣労働者に配布した街宣チラシ(エキタス提供)
ZOZO派遣労働者に配布した街宣チラシ(エキタス提供)

社長や社員がどれだけパフォーマンスをおこなおうが、企業活動を支えているのは間違いなく低処遇の派遣労働者や非正規の外国人労働者である。

これが日本のリーディングカンパニーを支える構造上の欠陥である。誰かを犠牲にして利潤をあげるシステムが出来上がっている。

他にも僕の主張は拝啓、ZOZO前澤友作様「1億円バラマキ、本当に下品です」の記事にもまとめているので参照いただきたい。

ZOZOに関連して「光」の部分にマスメディアも偏りすぎであり、ZOZOの工場や倉庫への潜入取材など含め、もう少しまともなジャーナリズムを発揮すべきだろう。

なぜ僕はここまでZOZOTOWNにこだわって是正を求めているのか、と言えば、日比谷公園年越し派遣村の教訓があるからだ。

 

日比谷公園年越し派遣村とは何だったのか

日比谷公園年越し派遣村の年末年始から10年が経過した。

日比谷公園年越し派遣村は、リーマンショックに起因する製造業派遣などの派遣労働者、非正規労働者が大量に職を失い、住まいや食事を求めて、厚生労働省前の日比谷公園に集まった現象だった。当時26歳だった僕の目には衝撃的な光景だった。

当時の派遣労働者たちも企業利益のために毎日懸命に働いていたが、少し業績に陰りが見えるとゴミのように捨てられた。

さらに、それらの派遣労働者を支援するはずの福祉事務所すら、働ける年齢の人には生活保護支給を拒絶していた。

よりどころを失った労働者が「我々は人間だ。ゴミではない。」と語る言葉は、当時の派遣村の現場で何度か聞いた当事者の発言だった。

日比谷公園年越し派遣村では、製造業を中心として、一部上場企業であるリーディングカンパニーの多くが派遣労働者を大量に使って利益を上げている構図が「見える化」された。

景気が良いとされて目立つ企業も多かったにも関わらず、一瞬の変化で派遣労働者は路頭に迷った。

そのときも、派遣労働者や非正規労働者は企業において「雇用の調整弁」といわれてきた。

いつでも簡単に捨てられる存在として語られ、必要悪な存在だと説得させられてきた。

正社員は人件費、派遣労働者は物品費、委託費として計上する企業もあるくらい、人間として尊重された存在には未だになっていない。

日本は極めて正社員と派遣社員との分断が著しい社会になっている。

日比谷公園年越し派遣村での「見える化」から10年経っても、日本の派遣労働者は大きく減ることがなかった。

不安定な働き方である非正規雇用はむしろ増え続けている。

わたしたちの社会は、日比谷公園年越し派遣村の教訓から何を学んできたのだろう。

派遣労働者の差別的待遇に慣らされてきていないだろうか。

派遣労働者はこれほどの数で必要だろうか。

派遣労働者を自社で直接雇用することはできないだろうか。

そもそも労働者派遣法は廃止すべきではないだろうか。

差別的処遇を拡大する人材派遣会社が多い国として恥ずかしくないか。

ぜひ多くの人に(株)ZOZOを下から支える労働者がどんな状況にあるか注目し、派遣労働を含む労働者の実態に関心を持っていただきたい。

幸いにもヤマトHD、営業益2倍に 18年4~12月期 ネット通販拡大、人手不足対応も進む(日本経済新聞2019年1月16日)という記事が配信された。

派遣労働者や非正規労働者を直接雇用し、賃上げをおこなった場合に営業益が拡大し、人手不足への解消策にもなっているというものだ。

もちろん、汎用性が高いものかは検証が必要だが、(株)ZOZOのように派遣労働者や非正規労働者を大量に使用している場合、その処遇改善は企業の業績などにも長期的に作用してくるだろう。

僕は(株)ZOZOが憎いのではない。企業活動を懸命に下支えしている労働者に報いるべきだと述べている。

(株)ZOZOによるリーダーシップに引き続き期待しているし、労働問題を共に改善していきたいものである。

昨年から問題提起を繰り返してきた。そろそろリーディングカンパニーとして、明確に答えを出す時期は来ているはずである。