高齢者施設化する刑務所ー平成27年度犯罪白書からー

高齢者の貧困問題が深刻であることはこれまでに何度も報告をしてきた。

下流老人」や「老後破産」という言葉でも指摘してきたとおりである。

今回はまた衝撃的な統計資料が法務省から発表されたので、ここから高齢者の貧困問題を考えてみたい。

その統計資料は、「平成27年度犯罪白書」である。

日本で発生した犯罪がどのようなもので、背景に何があるのか、ある程度の分析が行われている。

そこに掲載された高齢者の姿は、生活困窮がゆえに窃盗を犯し、刑務所がセーフティネットや居場所としての役割を果たしているという状況だった。

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この表は、高齢者の入所受刑者人員の推移(最近20年間)を入所度数別に見たものだそうだ。

その人員は、総数及び女子共に最近20年間、ほぼ一貫して増加し、平成26年は7年と比べて、総数で約4.6倍に、女子では約16倍に激増している。

入所受刑者総数に占める高齢者の比率(高齢者率)も、ほぼ一貫して上昇しており、特に女子はその傾向が顕著である。

また、高齢者は、入所受刑者全体と比べて、再入者の割合(再入者率)が高いことも明らかになっている。

刑務所入所者罪名
刑務所入所者罪名

また、全高齢者及び男子高齢者では、窃盗の割合が最も高い。

女子高齢者では、窃盗の割合が約8割と際立って高い。

高齢者の犯罪の大半が窃盗によるものであり、裏側に生活困窮が垣間見える。

わたしも罪を犯してしまった多くの高齢者と出会ってきた。

例えば、過去に弁護士から相談を受けた76歳の男性は、自営業を長年続けてきて、国民年金は月額5万5千円。

貯金は800万程度あったが、自身の病気や妻の看取り、事業の廃業、家賃の支払いなどですぐに底をついた。

友人や親せきも初めのうちだけ支援してくれたが、だんだんと疎遠になった。

助けてくれる人たちが徐々に減り、生活がひっ迫して、家賃の遅れも始まった。

最後は年金の受給前に3日間食事が摂れないため、スーパーマーケットで弁当を3個盗んでしまったところを店員に見つかり、通報・逮捕される。

その後、弁護士らと協力して釈放をしてもらい、生活保護申請に同行するなど生活再建をお手伝いしてきた。

現在は再犯することなく、犯行前のアパートで普通に生活を送ることが出来ている。

このような高齢者の多くが家族や身寄りが無かったり、低年金であるだけでなく、生活保護や支援に結びついていない状況があった。

そして、多くの高齢者が生活保護制度を受けられる状態であるにもかかわらず、その情報を知らない。

あるいは知っていても「恥ずかしさ」などハードルがあり、福祉課へ相談に行けていない。

しかし、生活保護申請や介護保険など福祉的支援が入れば、前の76歳の男性同様、再犯率は極めて少なく抑えられるということだ。

これらの高齢者の実像から、凶悪な高齢者がいたり、貧困な人々が犯罪をするのではないことが理解できる。

社会福祉の手が及んでいないことに起因する問題が大きいということだ。

誰が犯罪を起こさせていて、どうして刑務所へ出入りしなければならないのか、「犯罪白書」の報告から、一度社会を見つめなおす必要があるだろう。

当たり前だが、犯罪者を叱責するだけでは意味がない場合が多い。

刑務所への送還前に、生活保護や介護保険、養護老人ホームへの入所などの支援を要する人々への支援が薄いのである。

そのためにも生活保護制度の周知徹底や支援に早めに結びつけることが重要であることは言うまでもない。

犯罪防止や再犯抑止のために、社会福祉が果たす役割は今もなお大きいことが理解できる。